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短編倉庫

【本能寺の変】の考察

作者: 織田 涼一

 桐生浩人と渡辺勝人は高校からの同級生だ。

28歳になり集まる機会も減ったが、一月から二月に一度は酒を飲む仲である。


 桐生は高校時代には生徒会長で、生徒の大多数からの支持があった。

眼鏡の真面目キャラと思いきや、イベントには並々ならぬ力を入れ、その時代の生徒会は一部には伝説となっていた。


 渡辺はバスケ部のキャプテンを勤めた。

こちらも明るいキャラが部活のみんなに好評で、ポジション柄か勝人という名前がカットという愛称になっていた。


 そしていつもつるむ二人は、カットにつられ桐生浩人がキットになった。

某お菓子の都合上カットキットと表現しよう。

※因みに筆者はあのお菓子は大好きです!


カット「おばちゃん、生ふたつー」

キット「俺にも注文聞けよ」

カット「じゃあ何飲むん?」

キット「もちろん生だよ」

カット「じゃあ、いいんじゃん」


 こんな感じである。


カット「とりあえず何かツマミを先にっと」

キット「サラダ一品と刺身と焼き物だな」

カット「いつものコースだね」

キット「今日はシーザーだな」

カット「刺身3点盛りと焼き鳥2本ずつだね」


 おばちゃんが生を運んできたタイミングで注文をする。

このお店は大学時代によく通ったお店である。

学生はあんまりお金ないだろうと、大将と奥さん(おばちゃん)が定年間際に始めたお店らしい。

ただ、難しい料理は出来ないよといい、煮物類は充実している。

つきだしで出てくるので頼まないけどね。


 乾杯からおつまみが出てきて本格的な飲みが始まる。

キット「なぁ・・・織田信長って知ってる?」

カット「何そのヤホーな漫才師みたいなネタ振りは、もちろん知ってるぜ」

キット「どのくらいよ」

カット「本能寺で踊った人っしょ」

キット「だいぶ違うけど間違ってはないな」

カット「随分激しいダンスだったよね」

キット「多分ダンスのジャンル違うぞ。本能寺の変は知ってるんだな」

カット「その辺は常識じゃん」

キット「軽く俺の知識を披露してやろう漫画の知識も多いけどな」


 織田信長は織田家の嫡男ではないらしい。

近場の斉藤道三マムシの娘を嫁にもらったらしい。

妹がお市の方と言い、浅井さんと結婚して茶々・初・江という子を儲けたらしい。

部下に秀吉君・家康君・明智君・森君などいたらしい。

頑張った部下には出世や褒美を与え、腐敗した寺社仏閣を焼き討ちしたらしい。

南蛮貿易の為、キリスト教を保護したらしい。

天下布武(武力で日本を統一するぜ)を掲げたらしい。

楽市楽座という経済政策を行ったらしい。

明智君に裏切られて、本能寺の変で敦盛を踊ったらしい。


カット「いっぱいあるな」

キット「そこでふと考えたわけよ」

カット「何を?」

キット「本能寺の変だよ」


 日本の歴史には何で? と言われる謎がある。

はるか昔の平城京や平安京の遷都の理由問題とか。

忠臣蔵で浅野さん短刀使うなら、振り下ろさないで突かないと問題とか。

坂本さん結局誰に殺されたの問題とか。


キット「これだけ敵が多かった信長が、なんで味方にやられるか不思議じゃね?」

カット「まぁ犯人はわかってるしね」

キット「本当に?」

カット「明智君そんなの常識だよ」

キット「じゃあそれも踏まえて、俺の説を聞いてみてよ」

ここで生をあけて次の飲み物を頼む。


キット「まずさ、この時代の武士にとって大事なものを仮に三つあげるとしたら何だと思う?」

カット「そりゃ武力・経済力・生産力だな」

キット「ある意味正しいな。それをもっと噛み砕くと、俺はこれが武士としての本分だと思う」


1.先祖伝来の土地を守る(武力)

2.土地を豊かにする(農業・産業)

3.血を繋げる


キット「俺はこう思う、だから各武士は基本的に自分の土地を守る事を重視して、統一しようとかいう考えはあまり浮かばなかったと思う」

カット「まぁ戦って勝てば戦利品は出るだろうけど、住民とか農地とか疲弊するしな」

キット「普通は嫡男が継いで、ダメならお家騒動とかじゃん」

カット「政略結婚してるじゃん、斉藤父さんの娘と」

キット「斉藤道三な、確かに義父さんだけど」

カット「思いの他その辺の話って聞かないな」

このへんでおばちゃんに、お勧めの玉子焼き(厚焼き)と肉じゃが(小鉢)を頼んだ。


キット「さて、んで信長エピソードはいっぱいあるんだが結構割愛する」

カット「じゃあ本能寺だな」

キット「まだ、はやーい」

カット「ふむ、じゃあどこから攻めるんだ」

キット「俺が注目したいのはここ、キリスト教だ」

カット「キリスト教?」

キット「日本の歴史的には珍しいよな、大抵仏教系の関わり多いのにな」

カット「確かに遣唐使や遣隋使みたいに、時代の先端はあっちで勉強ってイメージあるもんな」

キット「もし、新しい宗教来たらどうするよ」

カット「日本には信教の自由があるぜ」

キット「でも、基本的に新しい宗教ってうさんくさいだろ」

カット「確かに」

キット「じゃあ、もし新しい宗教したいんですけどって人来たらどうする?」

カット「間に合ってますって言うな」

キット「確かに(笑)」


キット「じゃあさ、話を聞かなきゃいけないとして何を聞く」

カット「まぁ話全部聞き終わってから、それまでに思いついた事を聞くわ」

キット「じゃあキリスト教を信長さんに説明してみて」

酒とツマミに舌鼓を打ちつつ、二人で打ち合わせてみる。


 プレゼン【緊急課題】:信長さんにキリスト教の良い所を説明しよう

本来産まれてくる確率が厳しいのにお母さんが凄い。

→血筋大事よね&お母さん頑張ったよね

馬小屋で生まれました。

→聖徳太子とかぶって良いだろう。

人が生きる上での正しい事とか教えた。

→宗教には必要だよね

良いことと悪いことの褒美と罰があること。

→天国と地獄の存在

最後の晩餐とユダの裏切りがあった。

→離反する人は出てくるよね

体がパンとワインで出来ている。

→○○○○マンの良さは、日本人の心を打つだろう。

磔の刑にされたけど後日生き返った

→奇跡は大事だよね


カット「完璧じゃね」

キット「全部説明するなら、創世記から最後の審判までしないとだしね」

カット「ざっくり上の内容を多少肉付けして、説明すればいいと思うな」

キット「うんうん、俺も上の内容でだいたい良いと思う。じゃあ俺が信長でお前が宣教師な。スタート」


カット「開国してくださーい」

キット「ペリーじゃねーよ」


カット「本日はこのような場を設けていただきありがとうございます(以下宣教師)」

キット「よく来た宣教師よ、ではキリスト教なるものを説明するのだ(以下信長)」

宣教師「まず創世記の7日間の説明したよ」

信 長「ふむ、日本にも似たような話がある」

宣教師「キリストは救世主として産まれる前に難関があり、母親&神様ぁずがなんとかしたよ」

信 長「選ばれた人間だったのだな」

宣教師「色々修行して、数々の奇跡を起こしたよ」

信 長「宗教家によくある話だな。誇大広告で臣民を惑わせなければ良い。良い行いには良い結果がついてくるというものも良い」

宣教師「最後の晩餐の後、ユダに裏切られて処刑されてしまうのです」

信 長「ふむ」

宣教師「最後に華麗なる復活をしたよ」


 キリストの血がワインで肉がパンという話は、米信仰がある日本には良いかもしれないが、想像と説明が難しいので割愛したらしい。○○○○マンはまだ誕生してないしね。


カット「どうよ」

キット「いいと思うよ」

カット「ところでこれって何なの?」

キット「俺が思うに、信長はキリスト教にシンパシーを感じたに違いないと思う」

カット「どのへんがよ」

キット「選ばれた血・似たような歴史・そしてこれから起こるだろう未来がね」

カット「天下布武でいけいけだったんじゃないの?」

キット「そうでもないだろう、朝廷や各武将に睨まれ、寺社仏閣にも喧嘩を売ったんだから」

カット「第六魔王だっけ?」

キット「そうそう、自らを悪く見せてまでパフォーマンスをしてたもんな。多分このまま日本統一は出来るけど、やっちゃいけないってどこかで気がついたと思う」

カット「なんでさ」

キット「魔王が行う恐怖政治が、100年も1000年も持つと思うか?」

カット「まず無理だな、どこかで勇者が現れてドラゴン倒して姫と新しい国作るな」

キット「ドラゴンがいたらな(笑)」

グラスは空になっていた。時間は気にしなくてもいいが、次の酒のチョイスは少し悩む。

お気に入りの焼酎を頼んだ。


キット「さて、キリスト教の話だが、キリストが皆に認められるには壮大な奇跡を行う必要があった」

カット「そんだけ頑張ったなら、地道にコツコツいけば良かったんじゃね」

キット「それでも良かった。だけど見方を変えれば、ユダがキリストを本当の意味での聖者に仕立てたと言っても過言じゃないという説がある」

カット「確かにな」

キット「しかも、丁度良く事件が起きる予定があった」

カット「ほう」

キット「キリストは磔の刑になり後日復活した。見事な奇跡だな。」

カット「ユダすげーじゃん。でも、裏切り者扱いだよね」

キット「そうだよ、みんなの聖者様を売ったんだから」

カット「ん? でも損な役割じゃね?」

キット「これが師弟の絶対的な繋がりだから、なくはないと思う宗教だし」

カット「ほうほうほう、これが信長とデジャブるんだね」

キット「そう、特に武士の繋がりは、夫婦以上だよという言葉もある」

カット「ほう」

キット「信長は嫡男じゃなかった。嫁も子供も勿論いたけど、魔王の嫁と魔王の子供なんて怖いだろう」

カット「そうだな」

キット「血は残したい。ただ織田家の血であって、信長の血である必要はなかったんだ」

カット「ほうほう、それで?」

キット「俺が思うに、信長は家臣の何人かにお願いをしていたと思う」

カット「何を?」

キット「【緊急指令】信長を暗殺せよ&【緊急指令】ここまで整えた日本の統一をだよ」

カット「暗殺を受けたのが明智君なんだね」

キット「そう、そしてその指令は各家臣には『お前だけにお願いするんだよ』扱いにした」

カット「盛り上がってきたね」

キット「秀吉・家康には織田家の血と統一について話したんだと思う。他の家臣にも言った可能性があるから、なんとも言えないけどね」

カット「織田家の血って?」

キット「浅井さんと妹の子だよ」

カット「なるほど」

キット「事実、徳川が天下を取り織田家の血は途絶えなかったしね」

カット「今でも氷上で頑張ってるな」


 こんな取り止めのない会話で酒が飲める今日の日に乾杯。

全部妄想だけどね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 所々笑える所があって楽しかったです。 史実を現代風の言い回しに変えてるところが秀逸ですよねw 織田は現在氷上で踊る!
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