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異世界の誓約者  作者: 七足八羽
ホルンソ戦役
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ホルンソの攻防Ⅸ(参戦)

「凄いな、おとぎの国だ、地下にこんな街を創るなんて、地上の街よりもよっぽど手間暇かかっているんじゃないか」


 開いた口が塞がらないとはこの事だ、外の街と同等以上の避難所なんて、最初から、その金を、外の防衛費に掛ければ良かったのでは?。


「いえ、王よ、この街は外の外壁をつくる際の石を切り出した空間を、グリーフやドワーフ、ノームと言った連中が、王が許すのを良い事に、想うがままに、三百年以上拡張してきた結果にございます」


「そうなのか、やっぱり凄いな、あの天上に沢山ある光は何だ?」


「あれは精霊たちの住処にございます、精霊達の気に入った場所に、グリーフ達が住処をつくって行った結果です」


「私もここに来るのは初めてですけど、凄いですね」


「え、里奈さんも初めてなんですか」


「ええ、王城の下には避難所が有って、豊富な食糧が蓄えられている、としか聞いてませんでした、いざと言う時にはそこに逃げ込めると」


 実際その通りだった訳だが、避難所、避難所なのか?避難所の方が立派だったりしてないか。


どっちにしても、リュウジには御伽の国の光景だった。


地下に広がる人と精霊の共存する国、地上の街よりもはるかに精霊や亜人が多い気がするのは気のせいではないだろう。


 彼らが仲間を増やしながらこの地下都市を造ってきたのだろうから、そしてその街に人が共存し始めた今が、この国の本当の姿なのだろう。


「すごい」


 この世界の十人でも信じられない様な光景に、カヤナが、口をあけたまま固まっている。


 その横で、ハーピアが黒曜を頭にのせて、毛繕いをし、うろこが短い後ろ脚でワシワシと、頭を掻いている。


 彼らはマイペースだ。


 地下に街が有ろうが、何が有ろうがまったく関係ない。



◇◆◇◆◇



「クジョウよ、先程銀翼船を落としたのは何か解ったか」


 王はポーシャを膝に乗せ、その身を椅子に預けると、いったい何者が、銀翼船を叩き落したのかクジョウ将軍に尋ねる。


「はい、リゼルダ様のドラゴンだそうです」


「姿が全く見えなかったが、どんなドラゴンなのだ」


「確認したものによると、とても小さく、信じられない速さで飛ぶそうです」


「それで不格好」


「マリー」


 マリーの余計な一言を、クジョウがたしなめるが、マリーは悪びれもせずクジョウの肩の上で寛いでいる。


「リゼルダ殿は太陽王の従者だったな、太陽王に助力を求めよう、一番近くにいる者は誰だ」


「しばしお待ちを」


「マリー」


「はーい、すぐ聞いてみる」


 マリーは肩に座ると、脚をプラプラさせながら仲間の位置情報を確認しているようだ。


 少しするとマリーはクジョウの肩の上に立ち上がる。


「見つけたか」


「はーい、一番近いのはタンピ、地下の街の入り口にいる」


「ラタトの処のタンピか」


「見つけたのか」


「は、警備兵のラタトと、タンピです」


「そうか、ならばその者に太陽王への伝言を頼む」



◇◆◇◆◇



「え!太陽王に、王様からの伝言を、伝えろって、僕に!」


「タンピ、それ間違えじゃないのか、それに、太陽王って、不在の王だよね、それが今この国にいるの?」


王国軍に入ってまだ半年にもならないラタトは今、パニックになっていた。


自分の契約精霊のタンピが自分に勅命が来たと言うのだ。


それも、伝説の太陽王が、直ぐ近くにいるから、王の伝言を伝え、従者と共に参戦してくれるよう助力を仰げと。


 王国軍に入ってまだ半年にもならないラタトにはとんでもないハードルの高さだった。


「タ、タンピ、それで太陽王がどの人か判るのか」


「あの人」


 タンピが、迷いなく指したその人は、胸にフェアリービーを付け、信じられないくらい美しい銀の体毛を持った大きな獣人の女性に、炎よりも赤い髪をなびかせ、見た事も無い大きな鳥の様な何かを肩にとめた女性の剣士、その後ろにはワニ顔の聖騎士ゲンブと、何故か大和のマスターそして、極めつけにダナバードを頭に乗せたハーピーを引き連れ、真直ぐ自分の方に向かって来る所だった。


 ラタトは急いであたふたと前に出ると、その男の前に跪く。


「タたたた、太陽王様、実はそのえーとその・・・・」


「王様が、非情に形勢不利なので、助けてほしいそうです、出来るなら銀翼船を落としてほしいと言っていました」


「タタタンピ!」


 タンピの前置き無く歯に衣着せない物言いに焦るラタトを尻目に、王の伝言を言い終わると、タンピは、ラタトの肩の上で、もぞもぞと髪のように生えている触手を起用に使いラタトの背中の方に消えて行く。


「やっぱり、形勢不利か、ゲンブ、此処は同盟国で、ホルンソ王は、俺の子孫なんだよな」


「はい、有事の際には互いに協力し合う協定も結んでおります」


「そうか、でもどうやって戦う、リゼルダ、まだチビに頼めるか」


「かなり痛かったからな」


 リゼルダが自分の頭を撫でながら答える。


「のたうち回ってたもんな」


「頼んではみるけど」


 リュウジ達の前に跪いたまま、返答不安そうに返答を待つラタトを見て、りゅうじは言う。


「大丈夫だ、心配するな、協力すると、王に伝えろ」


 ラタトの顔から不安が消え、リュウジの返答はタンピを通して、すぐさま王に伝えられた。



◇◆◇◆◇



 街ではまだ五機の銀翼船と、ドラゴナイト率いるガウスライダーの空中戦が続いていた。


 しかし、リュウジ達が地下都市に、カヤナと里奈さんを置いて来る僅かな間に、ガウスライダーは又一組落とされていた。


 銀翼船には、こちらの魔法も、虎の子の砲弾も効かない、しかしこちらも銀翼船の光弾は、魔法障壁で防げる。


 一見拮抗しているように思えるが、その実何とか首の皮一枚で繋がっているだけだ。


 既にボーションの補給そこを尽きかけ、ガウスライダーのローテーションも儘ならない。


 頼みのドラゴナイトも目まぐるしく飛び回り、ガウスライダーの支援で手一杯だ。


 何処か一か所綻びれば、一気に崩壊してしまうだろう。


 下から見上げるリュウジ達にも、その危うい緊張感がひしひしと伝わっていた。


「拙くないか、これは」


「ああ、チビを行かせよう」


 リゼルダが言い終わらないうちに、リゼルダの肩から飛び立とうとチビが不格好な翼を広げる。


「大丈夫なのか」


「ああ、少しは我慢してもらうさ、あと、たった五機だ」


 リゼルダの言葉で、飛び立とうとしていたチビの羽ばたきが弱まり、翼を広げたまま止まってしまう。


「リゼルダ・・・」


「ああ、チビ、取りあえず一機、一機だけでいいから落としてきてくれ、残りはそ落としてから考えよう」


 チビがゆっくりと首を傾げて、リゼルダの顔を覗き込む。


「・・・・・・・・」


「解った、解った、頼むから兎に角行ってくれ」


 チビが広げた翼をゆっくりと動かして、リゼルダの肩から、嫌そうに飛び立ってゆく。


 とび始まると、チビは直に翼をたたみ、槍のように変形すると、大きな炸裂音と爆風を残して、次の瞬間にははるか上空だった。


「リゼルダ、チビにキャノピーを真横から狙うように言ってくれ」


 いくら銀翼船が頑丈だと言っても、チビがキャノピーに直撃すればキャノピー位は破壊できるだろう。


 チビが上空から、銀翼船を狙って急降下を始める。


 チビ加速し始めると、リゼルダからキャノピーを真横から狙うイメージが伝わってくる。


 チビは銀翼船の真横に回り込むと、リゼルダから伝わってきたイメージ通り、キャノピーに狙いを定めて躊躇なく加速する。


 リゼルダから伝わってきたイメージには銀翼船のキャノピーをぶち抜く所まで確りとイメージされていたからだ。


 チビはリゼルダのイメージ通り銀翼船のキャノピーがぶち抜けるものと信じて加速する。


 容赦ない加速を行ったチビは、全速力で銀翼船のキャノピーにぶち当たる。


 チビは狙い通り銀翼船のキャノピーを直撃したが、キャノピーは亀裂が入っただけで持ち堪え、チビは斜め上方に跳弾する。


 銀翼船は斜め下方に向かって弾かれ、銀翼船は建物の屋根を吹き飛ばしながら上空に弾け、ふらふらと戦線に復帰する。


 上空に弾けたチビほ畳んだ翼を一杯に広げ奇声を上げながら上空でバタバタとのたうち回る。


 前回垂直に当たった時ほどではないが十二分に痛かったようだ。


 リゼルダも思わず顔をしかめて、両手で自分の頭を押さえる。


「キャノピーまで頑丈なのか、でも亀裂が入っているから、もう一回行けば」


「リュウジ、もう無理だ、チビが嫌がっている」


 リゼルダは両手で頭を抱えたまま、リュウジに異議を唱える。


「そ、そうか、なら、あの形態のまま石とかもって飛べないか」


「それは、・・出来るっぽい」


「出来るのか、なら真上からだ、真上から、全速で頼む」


 チビが、ギャーギャーと文句たらたらの様子で、リゼルダの頭に舞い戻り、チビノゴツイ爪が、リゼルダの額に食い込んで行く。


「いつっいつつ」


「出来るか、チビ」


 チビは角でリゼルダの額を強めに小突くと、かるく吠える。

「チビ痛い、痛い」


 どうやらオーケーの様だ。


「なら、・・・」


 リュウジが、チビに何を持たせようかと、辺りを見回していると、ゴツイ鱗の手で戦鎚が差し出される。


「これでどうでしょう」


 ゲンブの予備の武器だろう片手用の戦鎚だった。


 どうも普通の戦鎚を短くぶった切っただけのようにも見えるが、気のせいだろう。


「良いのか」


「これで銀翼(あい)()を落とせるなら、もう一発在ります」


 ゲンブはそう言って同じ戦鎚をもう一つ取り出して差し出した。


「でもチビ、これもって飛べるか?」


 ゲンブから受け取った戦鎚はずっしりと重く、ゲンブでなければ片手で扱える様な代物では無かった。


 しかし、リュウジの心配をよそに、チビはその戦鎚をリュウジの手から奪うと、直ぐに変形し、爆音を残して、上昇していった。


 流石に少し速度は落ちるも、音速超えを果たすチビの膂力は尋常ではない、ゲンブの戦鎚を、持って瞬く間に上空まで舞い上がる。


 チビはすぐさま上空から一番近い銀翼船を確認すると、その船めがけてゲンブの戦鎚と共に、急降下を始める。


 チビは銀翼船を回避できるギリギリでゲンブの戦鎚を放すと、翼を広げて減速し銀翼船を回避する。


一方、チビに放たれたゲンブの戦鎚は真上から銀翼船を捉え、銀翼船を叩き落す。


 銀翼船は派手に健物を吹き飛ばして瓦礫に埋没したが、健物が緩衝材になってしまったのか、ガウスライダー達が群がる前に、瓦礫を吹き飛ばしながら脱出していった。


 チビがリゼルダの元に戻り、再びゲンブの戦鎚をもって飛び立つと、銀翼船はチビが降下を始める前に、街の上空から引いていった。


 賢明な状況判断だろう、チビもそんな銀翼船を追う事は無く、ゲンブの戦鎚を抱えて、リゼルダの元に引き返していった。


すみません、だいぶ開いてしまいましたが懲りずにお付き合いいただければ幸いです、会社があまりにブラックで、執筆の時間が取れませんでした、また、アップしていきますのでお付き合いの程よろしくお願いいたします。


すいません急いで書いていたので少し修正させていただきました。

内容的には変わっていませんので宜しくお願いします。

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