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異世界の誓約者  作者: 七足八羽
ホルンソ戦役
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国賓

「今のなんだ、おかしくないか、カヤナ何かしたか?」


「私じゃありませんよ、今の絶対にリュウジ様ですよ」


「俺は何もしてないぞ、だいたい生まれて初めて来た処だぞ、何もある訳ないだろ、上の二人ならともかく」


「リュウそれはないぞ、我も生まれて初めて来るところなのだから」


「それなら私も同じだぞ」


「じゃ、やっぱりカヤナだな」


「違います、確かに何度か来たことありますけど、何もしていませんよ」


 思わず過去の出来事を思い浮かべるカヤナだったが、それらしい記憶はうかんで来なかった。


 それからどれ位たったのか、いい加減入国の列も進まず、リゼルダとルピタ

が、暇を持て余し又喧嘩を始めようとした頃、そいつらはやって来た。


 先頭にはスケイルホースに乗り、使い込まれた鎧を身に付け、マントを羽織った青鬼ブルーオーガその後ろには、揃いの鎧を身に付け、綺麗に隊列を組んだ十数人の部下。


そして、そいつらはリュウッジ達の前で止まるのだった。


「リュウ、何かめんどくさそうなのが来たぞ」


「カヤナ、やっぱり何かやっていたんじゃないか」


「姉様、本当に起こりますよ、でもリュウジ様どうしましょう、本当にこっちに来そうですよ」


「ああ、そうだな、もうほぼ着いているな」


 此処の敬礼なのだろう、青鬼は握った右腕を心臓近くで構えると額に生えた短い角が丁度リュウジの方を向く位まで頭を下げて、話しかけてくる。


「お初にお目に掛かります、私は此処の守備隊大隊長を仰せつかっております、ブレッズ・ド・ブレイと申します、突然では有りますが、我が王が貴方様にお会いしたいと申しておりますので、ご同行願えますでしょうか」


「カヤナ、呼ばれているぞ」


「こんな処で無理矢理ボケないでください、間違いなくリュウジ様です」


カヤナはきっぱりと言い切った。


「その王様が会いたがっているのは、本当に俺なのか」


「はい、竜人りゅうじん様」


「いや、リュウジだ」


「失礼しましたリュウジ様、間違いなく貴方様でございます」


 不思議以外何者でもなかった、初めて行く異世界の国で、会った事も無い王様が自分に会いたがっていると言う、いったい何がどの様に作用するとこのような事が起こるのか、リュウジには皆目見当がつかなかった。


 そして、断ったらどうなるのだ、と言うリュウジの疑問に、断らないほうが良い、と言う白蓮の意志が間髪入れずに飛び込んでくる、普通国王に呼ばれてそれを断るやつ等まずいない。


リュウジはそれに従い、話を進める事にする。


「でも王様は会った事も無い何故俺に会いたいんだ」


「それはこの場では申し上げられませんが、我らと一緒にお越しいただければ我が王から」


リュウジが皆を見回すと、皆かるく頷いている。


「分った、それじゃ行こうか、・・・ああ、カヤナに、リゼルダに、ルピタだ」


リュウジが紹介すると、ブレッズはリゼルダのダークレッドの瞳と、ルピタの銀の毛並みを密かに確認し直ぐに対応する。


「それでは、カヤナ様に、リゼルダ様に、ルピタ様、一緒にお越し下さい」


「ああ、それと、家の従魔はどうすればいい」


 リュウジが思い出したように、(実際今まで話の流れ的に忘れていたのだが)尋ねる。


「門で、従魔のあかしを発行しますので大丈夫です」


「ならOK」


「?」


「「「おーけー?」」」


「気にするな、俺の国の言葉で、良いって事だ」


「そうでしたか、なれば参りましょう」


 ブレッズがそう言うと、リュウジ達の馬車は兵士達に囲まれ、入国の列の脇を進んで行く。


 リュウジはその間、白蓮と二人で頭をフル回転させて考えていた。


 いったい何故、初めて来る国の国王に呼ばれるのか、異世界人を囲って国の戦力にする、もしくは、リュウジ的にはこっちの方が当たってそうだと思っているのだが、もしかすると、国王は地球人、更に日本人だったりするのではなかろうかと、思っている、なにせ、一人はこの国にいるのを確認しているのだから、もう一人くらいいたっておかしくないだろう。


 そんな事を白蓮と考えながら、馬車に揺られるリュウジだったが、ふとその馬車の上を見上げれば、相変らず馬車の上に陣取る二人と三匹は、ますます人目を集め、好奇の的だったが一向に気にするはずも無く、入国の列がこちらを見てざわつくのを楽しそうに眺めて、子供に手を振っていた。


 まったくマイペースだ。


 外壁に着くと、貴族用の門が開けられ、リュウジ達の馬車はそこからホルンソ王国へと入って行く。


 入ると直ぐに少し待たされ、従魔の証が渡された。


 それぞれ従魔の体格に合ったホルンソ王家の紋章のレリーフの入った金のタグが、金で縁取られた豪華な黒い首輪に、ぶら下がっている。


 カヤナは思わずそれを手に取ると、ブレッズに尋ねる。


「これは、国賓の従魔が付ける証では?」


 カヤナの記憶によれば、国賓の従魔の証をつけていれば、その従魔の積は従魔の主ではなく、総て国が負ってくれると言う代物のだ。


付けてもらった黒曜とハーピアは、嬉しかったらしく、どや顔でリュウジに見せていたが、うろこはどうでもいいようだった、それどころか少し邪魔くさそうにぶるぶると体を揺すったりしていた、普通に発行される従魔の証とは物が違うのだが、彼らにとってその辺はどうでも良い事らしかった。


「はい、リュウジ様ご一行は、国賓として迎えろと、我が王より仰せつかっております」


「リュウジ様、いったい何者ですか」


「いや・・・本当に俺って何者なのだろう」


 これは益々王様は日本人ではなかろうか。


 リュウジがそんな事を考えていると、白蓮から忘れ去られていたもう一匹の従魔にも従魔の証を貰ってほしいと伝わってくる。


「ブレッズさん、申し訳ないが此奴にも従魔の証貰えないだろうか」


 リュウジが手に乗せたネオスライムを差し出すと、ブレッズさんが凍を引き攣らせている。


「これも従魔ですか」


 スライムが従魔になるなどブレッズは聞いた事が無かった、知能が低くペットにすら出来ない魔獣と言う認識が一般的で、ブレッズにしてもスライムが多少なりとも人の言葉を理解するとは思えなかった。


 しかし、このネオスライムはリュウジの手を溶かす事も無くおとなしく手に乗っている。


「ああ、中々面白いぞ」


「言葉が解るのですか」


「勿論だ、丸くなれ」


 ネオスライムはリュウジの手の上で綺麗な球状に変化する。


「おお、初めて見ました」


 リュウジはネオスライムの従魔の証を受け取ると、ホルンソ王国の紋章の入ったタグだけを起用に外し「持っていろ」と言ってネオスライムの上に落としてやる。


 ネオスライムはそれを体内の取り込むと、溶かさずにそのまま体内に浮遊させる。


『白蓮、此奴にも名前考えてやらんとな』


『それなら、瑠璃はどうですか主様』


『いい名前だ、それで行こう』


 リュウジ達の馬車は再び護衛に囲まれながら、王城に向かって移動する。


 街に入ればそこは異世界の活気に満ち溢れていた、信じられない位雑多な人種に満ち溢れ、リュウジの感覚では知的生命体に見えない様な人種も闊歩して居たり、浮遊して居たり、其処に黒曜やハーピアの様に(王国の紋章等は入っていないが)従魔の証をつけた魔獣まで混じっている。


 その喧騒に紛れて、其処かしこに、ホルンンソの紋章を《エンブレム》を刻んだ揃いの鎧に身を包み、槍を携えた鈍色の兵士が見える。


 よく見れば、どちらを向いても必ずそんな兵士が視界に入る。


 かなり物々しい警備体制になっているのだが、街の人間はそんな事一向に気にしている様子もない。


 そしてリュウジには童話の世界の住人もその喧騒の中にはなにはばかるる事無く存在していた。


 白蓮の様に手のひらサイズの小さな者から、子猫位もありそうなサイズの者まで、外見も様々な妖精フェアリー達がまるで小鳥の様人の肩や、にその辺の小枝、露天の屋根などに佇んでいる。


 ガロンベルや、グランドバザールも様々な人種が居たが、此処は群を抜いていた。


 もうメインの人種と言うものが分らない。


 リュウジは興奮のあまり、御者台からキョロキョロとあたりを見回していた。


 そんなリュウジを見てカヤナが可笑しそうに話しかける。


「お上りさんですね」


「ああ、映画の中に入ったみたいだ・・・ガロンベルグもグランドバザールも凄かったが、此処は圧倒される」


「映画?」


「ああ、気にするな、俺たちの世界の、夢物語の本の様なものだ」


「こんな世界が夢物語なのですか」


「ああ、俺達の世界を知らなきゃ解らんよな、連れては行けないだろうし、あとでゆっくり説明してやるよ」


 リュウジはキョロキョロしながら、心此処にあらずで、明後日の方向を向きながらカヤナに答える。


「見える物全部一つ一つ説明してほしいくらいだが、あれは一体何だろう?」


 象くらいありそうな、灰色の岩で出来た首長トカゲ、いや羽無竜に跨った闇夜様に黒い肌の騎士が黒い鎧をまとい、後ろに反った頑強そうな二本の角に妖精をのせて、リュウジ達の正面から近づいてくる。


 その背後には二人の砂竜騎士が付き従う。


 一人は、瞳の無いダークレッドの四つ目を持ち、髪には緑の羽が生えそろい、猛禽類の鎧の様な手足に鋭い爪を持った彼は、動きを阻害しない軽そうな碧い魔獣鎧を身に付け、砂竜に跨っていた。


 もう一人は砂竜の両脇に、自分の背丈よりも長い剣を弓矢の様になん十本も筒にいれてぶら下げているもう一人は、リュウジの腰にも満たないだろう背丈に、細い手足に薄青い肌を持ち、体だけ小さな皮鎧を纏い、ドラゴナイト特有のダークレッドの瞳をギラギラさせていた。


「あれは、王国のドラゴナイトです、国王が街中の護衛によこしたのでしょう」


 そう言うと、ブレッズ達は馬から降りて片膝をつき、礼をとってドラゴナイト達を迎える。


そんなドラゴナイト達が来ても屋根の上の面々は、寝転がり、毛繕いをし、動じない面々であった。


「あの黒いドラゴナイトは出来るな、一度手合わせしてみたいものだ」


「私はそんなめんどうくさい事度面被る」


「お前じゃ直ぐにやられてしまいそうだからな」


 寝転がったままリゼルダの脚がとび、それをルピタの尻尾が撃ち落とす。

尻尾に撃ち落とされたリゼルダが立ち上がろうとしたところで、リュウジの声が二人を撃墜する。


「おい!」


「「すまん(ない)」」


二人は又屋根の上に寝転がり静かになる。



「ドラゴナイトの長仰せつかっているバレン・レノフと岩竜サイノスだ、其処の四ツ目はメガイ、小さいのはシャルドだ、そして上に飛んでいるのがバロ・ミノとピノ・グリだ、リュウジ殿、我らも王城まで案内しよう」


 その言葉にリュウジ達が上を見上げると、二頭の翼竜が空に舞っていた。


 空の保護色で、下からは見づらい青ベースの翼竜と、それより一回り大きな赤茶色の翼竜がリュウジ達の真上を滑空していた。


「隊長、毎度のことだが、もう少しましな紹介してくれ、バロとピノはともかく四ツ目とか、小さいのとか、もう少しましな言い方が有るだろ、まったく」


バレン達が先頭に着くと、人混みが割れた。


 此の街でドラゴナイトの人気はいか程か、女性の黄色い声から、野太い激励の声感謝の言葉、街は一層騒がしく、リュウジ達を迎えた。


(チビを呼んでおこう)


リゼルダはホルンソのドラゴナイト達を見てチビに連絡をつける。


 チビはクルト達の護衛に付き、迎えとも合流し、無事リゼルダーナまであと一日くらいの所まで進んでいた。


 あのドラゴンたちを見れば、万が一の時にはチビの力も必要になるだろう。

リゼルダはそんなチビを躊躇なく呼びよせる。


 リュウジ達が喧騒とした街を抜け王城に入ると、其処は何一つとっても、王城とは思えない程飾り気がなく、実用一点張りの造りだった。


 殆ど装飾の無い分厚い扉に、石造りの回廊は迷路の様に入り組んでいて兵を待機させられるような空間が幾つも作られている。


最初から戦を前提にした造りとなっている。


そんな回廊をドラゴナイト達に案内され、リュウジ達は謁見の間の分厚い扉を開く。


此処もうろこ修正させていただきました。

申し訳ありませんがこれからも宜しくお願いします。

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