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異世界の誓約者  作者: 七足八羽
リゼルダーナ
16/60

狩り

「皆の者、それでは約束通り、サラドラグラを狩りに向かうぞ、あああー・・・・クナシオ、キアナ、準備を頼む」


「は、御任せを」


「はい、お任せ下さい」


 どうして良いか解らない処を、全て二人に、前ふり無しで、いきなり丸投げにしてしまい、不安に駆られていたリゼルダだったが、間伐入れずに帰ってきた二人の返事に、ほっと胸をなでおろした。


リゼルダは、世界樹の木漏れ日の中、玉座に座って飛び回るチビを眺めていた。


『気持ちよさそうだな、チビ、其処からはどんな景色が見えるのだい』


リゼルダが、呼び掛けるとチビから即答でイメージが送られて来る。


『こんなの、こんなの』


 そう言って興奮しながら、チビの視界に切り替わる。


 ほんの豆粒位に見える自を自分の眼で見る様な体験はかなりシュールな趣だ。


 其の自分から、少し丸みが掛った地平線まで、今チビが見ている、景色がそのまま見える。


『凄いな、まるで自分で空を飛んでいるようだ』


 なるほどリアルタイムでイメージを送ればそうなる訳かと、リゼルダは冷静に思いながらも、興奮していた。


 それはチビの眼を使って物を見る事が出来ると言う事に他ならない。


 リゼルダは、此れで何時でも絶景が見られると感動していたが、実際その汎用性を考えれば、とんでもない能力なのだ。


 しかし、今の処リゼルダは、少し便利な面白スキル程度にしか思っていない。


 出発の準備は、クナシオを中心に着々と進んでいるのだが、リゼルダは何もさせてもらえず、チビの訓練以外することが無かった。


 そんな中、リゼルダの前に現れたクナシオは、真剣な面持ちで報告して来る。


「リゼルダ様申し訳ありません、荷馬車は有るのですが、馬が、四頭しか居ません、」


 把握していた事なので驚きはしないが、改めて報告されると、事態の深刻さは浮き彫りにされる。


 元々は一軒に一頭や二頭は居ただろう馬が、山犬に襲われ、村中に四頭のみとなってしまっているのだ、事態は深刻だった。


「私のハイドを入れても五頭か」


「はい、帰りの荷の重さと、未整備のカナン荒野を進むと考えるならば、少なくても二頭立て、行きと帰りの食糧や野営等の装備を考えますと、獲物を運ぶ荷馬車は一台のみとなってしまいます、折角リゼルダ様に狩って頂いても、一頭分すら持ち帰れないかもしれません」


 リゼルダはふと溜息をつくと、クナシオを見て話始まる。


「クナシオ、サラドラグラの価値は皮だ、肉も其れなりの値にはなるが諦めよう、皮だけ売る事にして、肉は持てるだけ持ってあとはおいて来るしかないよ、その代り狩れるだけ狩ってやる」


「は」


「とりあえず準備を進めてくれ」


 クナシオが戻って少しすると、今度はキアナも一緒にリゼルダの前に現れた。


「リゼルダ様、大樹街道を使ってはいかがでしょう」


 キアナが提案して来る。


 大樹街道はある程度整備され路面の凹凸も少なく、馬車を走らせるのにそれ程労力がかからない。


「サラドラグラの居る大岩まで通じているのか」


「はい直ぐ近くまで通じております、川も流れているのですが」


「魔獣か」


「はい、大樹の森の中を通るとなりますと」


「私が守ろう、サラドラグラを狩りに行くのだぞ、それ以上の魔獣が出るのか」


「いえ」


「なら心配するな、大樹の森の魔獣ぐらい、見掛けたら全部食糧にしてやる」


「であれば、荷馬車も一頭立てで、五台出せます」


「ならそれで準備を進めてくれ」


「はい」


 準備は未だ、日の高い内に整い、広場に集められていた、四台の空の荷馬車に、食料や装備品を満載した荷馬車一台、それにクナシオに力自慢の男達五人、そして何故かキアナも居る。


 りゼルダが近づくと、リゼルダの前に全員集まり跪き、クナシオが報告する。


「リゼルダ様、出発の準備整いましてございます」


「そうか其れは良いのだが、キアナも行くのか?」


「はい、私もリゼルダ様の勇姿を見とう御座います、それに私が居れば、ガロンベルグにもワールドバザールにもその場から向かう事が出来ますので、運良くサラドラグラの卵でも手に入りますれば、其のままガロンベルグに向かおうかと思います」


「でも何故キアナなのだ、その役他の者じゃ駄目なのか」


「はい、私はクナシオと家を捨てて一緒になりましたが、元は商人の娘にございますので、物の取引となれば多少なりと覚えがありますので」


「それは心強い限りなのだが、クナシオと二人で行ってしまっては、クルトはどうするのだ」


 今度はクナシオが話はじまる


「あれも、もうすぐ十三になります、お許しいただければ、今回女王様の従者として同行させようかと思います」


 リゼルダはほんの少し考えたが、直ぐに言葉を紡ぎ出す。


「そうだよな、クルトだけ置いて行けないよな、よし、今回はクルトが私の従者だ、宜しく言っといてくれ」


「はい」


「で、出発は、明朝で良いか」


「は」



◇◆◇◆◇



 次の朝、広場にはサラドラグラの狩猟部隊を見送ろうと、村中の人が集っていた。


 クナシオ、キアナ、クルトと五台の荷馬車に、屈強の男が五人、出発の樹準備を整えて待機している者達の周りに、村人達が群がっている。


 村人全員に村の外れまで見送られ、出発する狩猟部隊。


 今回の狩りには村の運命が掛っている、荷馬車が、大樹の森の中に消え、視認できなくなるまで、誰もそこから立ち去る者は無かった。


 村を出て大樹街道までは、大樹の森の中。


 村人たちが造ったと言う荷馬車一台ぎりぎりの幅しかない道を半日以上も進むこととなった。


 そして此の道が現在リゼルダ―ナ王国に通じる唯一の道だと言うのだ、カナン荒野を突っ切る以外この道しか無いのであれば、もう少しこの道を何とかしなければ、等と思いつつ隊中央の馬車に積まれた荷物の上にチビと一緒に陣取ったリゼルダは、馬車隊の前後に目を配りながらゴロゴロとしていた。


 街道に出ると、道幅はぐっと広がり、余裕で馬車がすれ違える程度になる、轍こそあれ、路面状況もある程度ましになった。


 街道に出て快適に進むようになったが警戒は怠れない、魔境程では無いにしてもここは未だ魔獣の住む森なのだ。


 昼食は進みながら取り、野営地まではノンストップだった。


 野営地が決まると、『キシャー』と、チビの甲高い金属音の様な咆哮を合図に野営の準備がはじまる、此の咆哮を聞けば野営地近寄る魔獣はまずいないだろう、おかげで森の中でも比較的安全に作業が出来ると言うものだった。



◇◆◇◆◇



 三日目、橋を渡り水を補給しもう一度大樹の森を抜けてカナン荒野に出る道も、馬車が通れるのが不思議なくらいの獣道だった。


 聞いてみるとやはり彼らの造った道だった、当時折角見つけたサラドラグラの繁殖場所だったので、サラドラグラは無理でも、何とか卵を確保できないかと、通っていたらしい。


 小さな馬車で精鋭数人、隙をついて卵を奪ったら後は一目散に大樹の森に逃げ込んで逃げ切ろうと言う計画だったらしいが、結局通っただけで終わっってしまい、その名残がこの道と言う事だ。


 サラドラグラを狩ろうと思ったら、手練れ二十人が最低限だろう、それを数人で卵だけくすねて、とんずらかまそうと言うのだから、クナシオも中々惚けた奴だ、成功していたらそれこそ前代未聞だったろう。


 森を抜けると、いきなり炎天下のカナン荒野が目に飛び込んでくる、一行はカナン荒野には出ず、斥候にチビを飛ばし、森の裾伝いに進み、目標の岩山のほど近くの少し開けた場所に、キャンプを張った。


 チビの眼を使って確認したその岩場と言うか岩山は、かなりの広範囲に亘っていた。


 そして岩山から直ぐ向こうには見渡す限り砂漠が広がっていた。


 此れが当時此処に有ったシュタインテット王国を飲み込んでしまったサラディナ砂漠だ。


 一部には負け戦で攻め滅ぼされたと言う説もあるが、そのシュタインテット王国の成れの果てがガロンベルグだと言われている、既に当時の王家の血筋も無く、四百年近い時が流れ、詳細を知る者は既に居ないが、砂漠が少しずつ広がっているのは周知の事実で、いずれは、カナン荒野も砂漠になるだろうと言われている。


 岩山はそのサラディナ砂漠を背景に、歪んだパイ皿を伏せたような格好で、地面に張り付いていた。


 上空から見るその岩山の所々にサラドラグラの影が見え隠れしている。


『チビ、もう少し低空で砂漠側から荒野に向けて飛んでくれ』


 チビは了承の意思を返すと大きく旋回を始める。


「女王様、お飲み物をお持ちしました」


 リゼルダは荷物の上に陣取って、仰向けに寝そべったまま、チビとリンクを切らずにクルトを呼んだ。


 母親譲りのダークブルーの髪に、父親と同じ緑の眼、グレーの上下に黒い革製の手甲と脚絆を付けたクルトが、盆にティーセットを載せて荷馬車の下に立っていた。


「悪いな、此処まで持って来てくれ」


 クルトは下からリゼルダの寝そべっている荷物の山を見上げる。


「其処まででございますか」


「ん、お茶を持って来てくれたのだろ」


 どうやって上った物か途方に暮れるクルトに、リゼルダから何気な答えが返ってくる。


 クルトは意を決すると、盆を咥え、ソーサーを懐に入れると、ポットとカップを右手に持って、よじ登って行った。


 クルトが上に付くと、リゼルダはリンクしたまま起き上がり胡坐をかいて座ったが、眼を開けているにもかかわらず、頭の隅には、チビの視界がしっかりとリアルタイムで意識されている。


「有難う、クルト」



 クルトは荷物の上で茶の用意をしながら、何気に尋ねた。


「チビ様はまだ戻らないのですか」


「ああ、まだ岩山の上を旋回しながら偵察中だ」


「其処まで解るのですか?」


「ああ、チビの眼から見る事が出来るからな」


 リゼルダの答えにクルトが眼を輝かせる。


「え!本当ですか?」


「ああ」


「す、すごい、チビ様は、今どの辺にいられるのですか」


「今は大岩を砂漠側から低空で見ているな、もう少しすれば、何匹ぐらいいて、番いが何処にいて、どこが狙い何処かぐらいは解るぞ」


「凄い、僕も見てみたいです」


「済まないな、私も見せてやりたいのだが、此ればかりは、どうにも手だてが思い付かん」


「いえ、済みませんそれは解っているのですが、凄いですね、僕もチビ様と話せますか」


「声は出せないから、私が通訳になれる時ならば」


「そうですか」


「今度はなさせてやるよ」


「有難うございます」


 ふとリゼルダが視線を移すと、半透明に見える程透明感のあるダークブルーの髪に、景色が映り込むような緑の瞳、キアナ譲りの白い肌に、強く引き結んだ唇、のクルトがリゼルダを、敬意をこめて見詰めている。


 あと五年もすれば・・・リゼルダが邪まな妄想に囚われそうになっていると、ストンとリゼルダの肩に、チビが帰還する。


 そして、『そいつが気に入ったのか』と言う様なイメージがリゼルダに伝わって来る。


『そうだ』と思わず返してしまい、一人ドギマギしながら平静を装うリゼルダだった。


 チビのもたらした情報により、岩山には、サラドラグラが何十匹も生息しており、サラドラグラの一大繁殖地となっている事が確認された。


 岩山の一番手前には、巣穴を構えて卵を守っているサラドラグラも確認され、其処から二百メートル位先にも、もう一組巣穴を構えている事も確認した。


 リゼルダは皆を集め狩りの段取りを説明し始める。


「まず卵運びに三人、この三人は、出来るだけ巣穴の近くで待機、上空にはチビも待機して、もしもの時は援護、私がサラドラグラのペアを倒したら、速やかに卵を運び出す、普通卵は四個から六個だから、多ければ一人二個になるが、両脇に抱えて運び出せ、その間巣穴の外は私とチビで守るから、焦って卵を割るなよ。卵を運びがしたら、其のままチビ以外全員で森を抜けてキャンプに地退却だ。キャンプ地に着いたら解体班は直ぐに私とチビの処まで戻り、私とチビの守りで、サラドラグラの皮を確保、確保出来たら、今度は全員でキャンプ地に引き上げだ。やる事はさほど難しくない、卵の運び出しと、皮の剥ぎ取りだ、あとはこの繰り返しだ、出来るな」


「「「「は、」」」」


「それとクルト、もうすぐ十三なのだろ、卵運びの方に入れ、クナシオ良いか」


「無論です」


「有難うございます、女王様」


 まだまだ幼さの残るクルトが、嬉しそうに答える姿を見ているだけで、顔が綻んでくるリゼルダだった。


「よし、では明日早朝決行だ、今日はここにキャンプを設営して休息だ、良く休んで明日に備えろ」


「「「「は、」」」」


「クルト、後でまたお茶を入れて来てくれ、」


「はい、女王様」


 今、リゼルダはクルト達と共に、サラドラグラの巣穴の近くに身を隠し、チビの眼を通して、上空から、巣穴近くの状況を観察していた。


 白地に、茶色と黒のヒョウ柄に縁どられた細かなデジタル明細様な美しい柄、太くて短い尻尾に、バランスの悪い大きな頭に大きな目、太く短い強靭な脚、その巨体を支え、岩山を闊歩させる鉤爪、そして人間位一飲みにしてしまいそうな鋭い牙の並んだ大きな口、およそこの近辺で彼らを脅かすものは居ないだろう。


 幾らリゼルダでも、乗用車以上もある此奴らを、巣穴の中まで入って相手はしたくないし、中で暴れて目的の卵を割ってしまっては、目も当てられない。


 巣の外まで出て来てくれるのを待つしかなかった。


 只、そんな時に限って、昼寝でもしているのか、一向に出て来る気配はない、昨日あれほど出歩いていたのが嘘の様に静まり返っているのだ。


 早朝、彼らが其処に身を潜めてから、既に二時間近く経過していた。


 ついにリゼルダがしびれを切らし、近くに有った手ごろな石を拾うと、クルトの制止を振り切って巣穴に向かって歩き出す。


 巣穴の下まで来ると、リゼルダは石を巣穴に投げ込んだ。


 石は確かに巣穴に投げ込まれたが、何も起きる気配は無かった。


 リゼルダは近くに有った子供の頭ほども有る石をおもむろにつかむと、今度は全力で、巣穴に投げ込んだ。


 石は一瞬リゼルダの手元から消えた様に見えたが、轟音と共に巣穴の壁を破壊していた、それはそれだけで十分サラドラグラが倒せるのではないかと思える威力だった。


 流石に今度は、二匹のサラドラグラが出てきたが、警戒して、巣穴の入り口に張り付き、外の様子をうかがっている。


「ちっ、やり過ぎたか」


 リゼルダは呟くと、サラドラグラに向かって小石を投げつけた。


 小石は狙い違わずサラドラグラに当り、サラドラグラがリゼルダを認識する。


 リゼルダが背中の大剣に手を伸ばそうとすると、既にサラドラグラは目の前まで迫っていた。


 リゼルダは剣を抜きながら、後ろに飛び退いたが、サラドラグラの動きも速く、リゼルダが着地すると、既にまた目の前まで迫っていた。


『思ったより早いじゃないか』


 リゼルダはサラドラグラの咬撃の轟音を聞きながら、を小さな円を描くように回避し、サラドラグラの首の脇に移動する。


 首を狙い剣を振るモーションに入ろうとすると、電気にでも打たれたかの様な反射的速度でさらに咬撃して来る。


 リゼルダは、体制を整える種に大きく後ろに飛び退き今の処防戦一方だ。


『畜生、クルトに良いとこ見せる筈だったに、此れじゃ台無しになっちまうだろ』


 リゼルダが攻撃態勢を整え、攻撃に移ろうとすると、上空のチビが叫ぶ、『リゼルダ、後ろ』


 リゼルダが振り向くと、もう一匹の、サラドラグラが一段上の岩場から、既に咬撃の体制に入っていた。


 その咬撃を側宙で躱し一段下の岩場に着地する。


 其のまま間伐入れずに咬撃してきたサラドラグラの下あごから、大剣を突き刺し、瞬時に引き抜くと、もう一匹の咬撃を躱し、一段上の岩に飛び乗る。


 下顎から剣を突き入れられた、サラドラグラは剣に脳を貫かれ、その場で沈黙する。


『畜生、瞬殺のはずだったのに、私の見せ場が・・・』


 リゼルダは残ったサラドラグラに向かって一瞬で距離を詰め、サラドラグラの咬撃をかがんで躱し顎の下に入り込むと、先程と同じ様に下あごから、大剣を突き刺し、瞬時に引き抜く。


『畜生、師匠はあんな簡単に倒してたのに!』


 二匹目のサラドラグラが沈黙すると、リゼルダは思わす悔しさのあまりその場で地団駄を踏みそうになりながら、何とか平静を装う。



 すぐ近くで其の様子を見ていたクルト達は驚愕していた、ドラドナイトとは其処まで強いのかと。


 サラドラグラと言えば其の鱗は美しいだけでなく高強度を誇り、未熟な剣戟や半端な魔法は通じない、攻撃力も高く討伐するにも最低手練れが二十人は必要と言われる討伐難易度高い魔獣だった。


 それだけに、彼らはもっと接戦になると思っていたのだ。


 いくらブロンズ山犬を簡単に殲滅したと言っても、サラドラグラはさすがに一筋縄ではいくまいと思っていたのだ、だが実際ふたを開けて見れば、それこそ魔法も使わずに瞬殺だったのだ、クルト達はドラゴナイトの力を再認識させられていた。



 見せ場を失ったリゼルダは、気落ちしながらも直ぐに巣穴の中を調べ、目的の卵を確認すると、クルト達に合図を送る。


 合図を受けたクルト達は恐る恐る巣穴に入ると、両脇に卵を抱えて、数百メートル先のキャンプ地まで森を抜ける。


 キャンプに戻ると卵を運んで来た三人の口からリゼルダに対する賞賛の言葉があふれ出る。



「我らの女王様の勇姿を見せてやりたかった、サラドラグラ二匹を物の数秒だぞ」


 卵班のキーストが、興奮も隠さずキャンプに着くなりにしゃべりだす


「ああ、それもたった二太刀、一頭に一太刀ずつだ、あの見事な太刀裁き、本当にみせてやりたかった」


 ロルファも後を引き継いで自慢げに話し出す。


「本当に凄かったですよ、あの大きなサラドラグラが二匹とも瞬殺です」


 そして、何故か一番誇らしげに話すクルトだった。


 自分の思ったよりもずっと良い評価に気を良くしたリゼルダは、ニンマリとして直ぐに剥ぎ取り班を連れて取って返す。


 今度は馬車で森裾を通り岩場に付くと、剥ぎ取り班の男たちは目を見張る。


 大きさも最大級ではあるが何より傷が全くと言っていいほど無いのだ、倒す時に付けた顎の下の傷のみである。


 普通であれば罠で捕獲したにせよ、何にせよ、必ずそれなりの傷がついてしまい使えない部分がかなり出て来る者なのだが、目の前のサラドラグラは見事な程に傷が無く、今此処で眠っている様にすら見える程だった。


「見事ですね、女王様、此の倒し方は大変でしたでしょう」


 村ではクナシオ、現在村に残っているにダナト次ぐ服リーダー各だったレベルがちらちらとリゼルダを見ながら話しかける。


 レベルにダナト、今回同行しているトランとロルファ、そしてダナトと村に残っているガレンはリゼルダに返り討にあった五人だった。


 本当によくドラゴナイトを力づくで何とかしよう等と思った物だと、今更ながら冷汗を流す彼らだった。


「肩慣らしにも成らなかったぞ」


 リゼルダは内心の褒められた嬉しさを顔に出さずさらりと答える。


 それを聞いたレベルは、あの時もう少し加減を間違えられたら、骨どころか命も危なかったのではと、再度冷汗を流すのだった。


 男達はリゼルダとチビに守られ、二体のサラドラグラを手際よく解体し、必要な部分を厳選し馬車に積み込んで行く。




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