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第1章 3話 『騎士と神器と王様と』

こんにちは!

2200PVありがとうございます!

 

 ────正騎士、それは選ばれしものにだけ与えられる名誉ある地位


 彼らは代々、王に仕えるものとしての誇りを持ち生涯を追うとともに、その生きざまは人々から羨望の眼差しを向けられてきた。また彼らは皆、高い戦闘能力を誇り、己の騎士道に従い数多くの民に手を差し伸べてきた。


 当然彼もその一人である。彼の名はソラフ、まあ彼の場合は少し特殊でひょんなことから正騎士に選ばれてしまったのだが……。


「襟よーし、髪型よーし、顔よーし、オッケイ!バッチグー!!」


 ソラフは執務室の前でテンポよく身だしなみチェックをして、一呼吸空けてから金属製の冷たいドアの取っ手に手をかける。


「さぁ、正騎士様ってのがどんなに大変な仕事だろうと俺は乗り越えて見せるぜ!」


 ソラフは最後にそう言い放つと重たいドアを開いた。執務室は相変わらずこぢんまりとしていて次期国王が使っている部屋には到底思えない程簡素だった。


「ソラフ!遅いじゃないですの!待ちくたびれましたわよ!?」


 ソラフが部屋に入るなり、先に甲高い声で第一声を放ったのはエリスだった。


「わりぃわりぃ、ちょっとお花摘みに行ってたらハチの大群と出くわしてな……」


「そんなことあるわけないですわ!しかも、普通男の子は熊を狩りにに行くんじゃないですの!?」


「ん、それはあれだ、そう、あれ、ハチミツ大好きなくまさんだったんだよ、多分」


 ソラフが訳のわからない言い訳をしていると、とうとうエリスは呆れて、


「はあぁ、この先が思いやられますわ……。それはともかく、問題はあなたが正騎士に選ばれたことですわ」


 エリスは大きなため息を漏らしながら呟く。その横顔がなんとも愛らしい。


「んー、その正騎士ってのはそんなに大変な役職なのか?」


 噂によると、まあ噂といっても屋敷の中で聞いただけなのだが、どうも正騎士とやらはえらく重要な役職らしく、以前からソラフが気にかけていたことだ。


「……ええ……、こんな方が正騎士になるなんて……はぁ……」


 執務机に置いてあったワイングラスをひと回ししてから少しだけ口に含んだエリスは、大きなため息をついてから一呼吸空けて言う。


「ほら、そんなにため息ばっかついてると幸せが逃げてくぞー、ほら笑え!」


 鈍感なソラフがおどけた顔でにやにやした笑みを浮かべて見せる。


「あなたのせいですわよ!?もう一周回って笑えてきましたわ……」


 もう反応するのでさえ面倒になってしまったエリスは顔に苦笑いを浮かべて答える。


「で、本題に戻すけど、正騎士って、よーするにどんな役職なの?」


「そうですわね……簡単にいうと王様の側近といったところですわね……」


 もはやエリスに彼とまともに話す気力が残っていなかったことは一目瞭然だった。

 そして、少し間をあけてからいつもと変わらぬ丁寧な口調で話しを始める。


「正騎士は、各領地にいる領主に必ずひとりつく役職ですわ。本来であれば、各領の騎士団の中から選ばれるのですわ。でも、その正騎士の選び方というものが少し特殊なんですの」


「……ふーん……、続けてくれ」


 長い話を聞くのが苦手だったソラフだったが今回ばかりは珍しく興味がわいた。もちろん自分のことだからということもあったが、それ以上に騎士団なるものの存在が気になってやまなかった。


「ええ、クリストフ王国が先の大戦で分裂したあと7つの地方に分裂したという話はご存知ですわよね?」


「ああ、七雄の話のことか?」


「そうですわ。彼らは七つの領地に国を分割した際に、各領地にひとつずつ神器を置いたのですわ」


「ちょっと待ってくれ、神器ってなんだ?」


 淡々と語るエリスについていけなくなったソラフは顎に生えかかった髭をなでるようにしながら訊ねる。


「え、ああ、はい。神器、それはクルシア12神を象徴するもの、つまりこの世に12個存在していますの」


「神器ってそんなにいっぱいあんのな」


「それで、さっき言ったとおり、その12個の神器のうちの7つはは各領地に保管されているんですの。」


「ふーむ、なるほどな。わかったような、わからなかったような……。まあいい、んで、その神器ってのがどうしたんだい?」


「神話では、神器は人から選ばれるのではなく、人を選ぶものと伝えられているんですの」


「それで理由はわかんないけど俺が選ばれちまったってわけか」


 王国内には現在確認できるだけで7つの神器が存在する。断罪神マルスの魔杖、光明神ミルワの光弓、恒久神フィルスの大太刀、相愛神レムスの鎖鉄球、守護神アメルの大盾、嫉妬神ヘラスの聖槍、そして追憶神ソラフィスの聖剣の7つである。


 この7つの神器は各領地内のどこかで封印されているかすでに正騎士となった者が所持している。


 かくいうソラフもそのひとり。彼が所持している神器は言うまでもない、追憶神ソラフィスの聖剣だ。先代の領主が次世代のために宮廷内に封印しておいたものである。


「ところでさ、神器は12個あるんだろ?じゃあ何で7つしか封印されていないんだ?」


「それが問題なのですわ。残る5つはどこにあるかがわからないんですの」


「はぁ!? それって結構やばくない? え、だって神器っていうくらいだしめちゃ強いんでしょ?」


 想定外のエリスの答えにソラフは目を見開いて質問を重ねる。


「……まずいに決まっているじゃないですの! それくらいあなたに言われなくてもわかってますわ!」


「じゃ、どうするってんだよ……」


「そう、だからこそ、私たちは正騎士になるにふさわしい器をもっている方を探しているんですの。でも、不本意ではあったけれどあなたが現れてくれたおかげでその手間が省けましたわ」


 文句ばかりしか言わないエリスだが、今回ばかりはまんざらでもなさそうに華麗にお辞儀してみせる。


「それは構わないんだがよ、なんで神器探しに正騎士が必要なんだ?」


 ソラフは首をかしげて一生懸命考えるが、頭の中では一向に話がつながらない。


「その理由はただひとつ、神器とは神器でしか戦うことができないんですの」


「え、なにそのチート性能」


「でも、神器はその力に見合う器を持った人物でないと扱うことができないんですの」


「待って、俺剣術とかできないよ?」


「……ええ、知っていますわ、だからこそ心配したんじゃないですの」


 やっとこ事の重大さに気づいたらしいソラフを目の前にしてエリスは大きなため息をつく。


「まあ、あなたは神器に選ばれた身ですもの、おそらくは大丈夫ですわ」


 エリスは半ば自己暗示をかけるようにそういってみせる。


「なあ、今更聞くのもあれなんだけどさ、エリスって次の国王なんだろ? なんで7つある地方のうちのたった一つから2代も連続で王様が出るんだ?」


「……。」


「おい、なんで黙ってんだ?」


「……それには深いわけがあるんですの……私はソラフを巻き込みたくはありませんわ」


 エリスの声のトーンが突然落ちたことに気がついたソラフは自分の質問が無神経だったと反省して、


「悪かった、聞かないほうがよかったかな……」


「い、いえ! そんなことないですわ、こちらこそ取り乱してしまって申し訳ないですわ」


「ああ、すまん。ところで、何で先王はすでに他界してるのにエリスはまだ王位継承してないんだ?」


「それが例のあれですわ。クリストフ王国憲法第12条の2、『王位を継承したる者には必ず正騎士が在任せねばならない』というやつですわ」


 エリスは王位を継承するに当たって血のにじむような努力をして覚えた憲法の条文の一部を読みあげる。


「ちょっと待ってくれ、何で王様には正騎士が必要なんだ?」


「それは単純な話ですわ。各地方が正騎士を手駒に持っているんですわよ? 万が一、反乱が起きたときに正騎士を静めることができるのは正騎士だけですもの」


「ああ、まあそうか、その通りだ。しかしながらだ、エリスにはもう俺という超頼りになる正騎士様がいるだろ?」


 調子に乗ったソラフはまたいつものように冗談なのか本気なのかわからないようなことを抜かす。


「超頼りになるかどうかは別としてその通りですわ。というわけで、3日後には王都に向けて出発しますわよ!」


エリスは突然思いついたようにとんでもないことを言い出す。


「なんだよそれ、俺の仕えるご主人様は突発的に行動して他人を振り回すわがまま姫さんだったのか……」


「わがまま姫なんかじゃないですわ! 人の心配より王都で馬鹿にされないように剣術の練習に励みなさい!」


 心外とでもいうような顔で叫んだエリスはぷいっと外を向いてしまった。


「ああ、わかった、明後日だな? 俺の華麗な剣術みせてやるよ! 待ってろよ!」


「……はぁ……元気があって何よりですわ……」



 ────自信満々に豪語するソラフと呆れ顔でため息をつくエリス、このときまだ二人は自らに降り注ぐ災いの火の粉など知る由もなかった



こんにちは、黒猫わらびもちです!

やっと3話書き終わりました!

最近忙しくてなんかペース微妙ですけど、これからもよろしくお願いします!


感想お待ちしております!


またね Good Bye♪

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