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第1章 1話 『名も無き来訪者』

半年振りです。これからはちゃんと書きますww


大幅改稿いたしました(*b'v・)b+。


感想書いて下さると喜びますww

────クルシア歴 783年 クリストフ王国 王都 エリス王女戴冠式前日




「はぁ、疲れた……」


 大仕事を終えた「彼」は人目も幅からず路地の真ん中で突っ伏した。


「もう、なんなんですの?こんなところでだらしないったらありはしませんわ」


 その無様な姿を見て困り果てる彼女こそ、クリストフ王国次期国王、エリス=アルソレアである。


「んなこと言ったってよォ、王都まで馬車をとばして5日、その上着いたらすぐに服の仕立て屋に行くなんて聞いてねーぞ」


「言いましたわよ!? 聞いていなかったあなたが悪いのですわ!!」


「だいたい、今回の戴冠式前夜祭だって貴方が出たいとおっしゃったのでしょう?」


エリスが半分呆れ気味で答えると、「彼」はますます怪訝な顔をして、


「いや、まぁそうだけどさ、ほらあれだろ、なんかそのあれだよ」


「何を仰っているのか理解しかねますわ」


「またそうやってスルーする。」


「あんな返事されたら無視もしたくなりますわ!」


 2人がいつもの調子でくだらないやりとりを繰り返して暇を持て余していたときだった。


「エリス様、王城大広間にてミンスレル地方領主ミケーネ様がお待ちです」


 しわがれた声で彼女を呼んだのは、エリスの付き人にして獣人族きっての弓の名手であるフィールズ=リー=アルトシアである。彼は見た目こそただの老いぼれ爺さんだが戦わせるとすごいとかなんとか。お屋敷の従者はみな口をそろえて言うのである。


「え!? どうしてですの? 今日は面会の予定はなかったはずですわよ?」


「そうだぜ爺さん! 俺とエリスは今から仕立て屋に行かなきゃいけないんだ!」


「彼」とエリスは突然の知らせに目を丸くして答える。


「そう言われましても……」


「おい……、なんかあったのかよ?」


「はい、あったことにはあったんですが、機密事項のため、今ここでは教えて差し上げられないのです」


「なんだかよくわかんないけど、とりあえず理由はわかった」


「彼」はわかっているのかいないのか、曖昧な返事を返したが、とりあえずは納得したようだった。そして「彼」は鼻でふっと笑い、エリスを見送ると目を閉じた……。



────「彼」がエリスと出会ったのはわずか二週間前のことだった。



 それはとても日差しの強い日のこと。

 エリスの生家であるアルソレア家は代々、クリストフ王国西端の領土、パンジーフ地方を収める領主の家系である。


 先の大戦で瓦解した国家体制を再成したクリストフ七雄のひとつだ。王国内では知らぬものはいないというほどの名門の家系だが、領地再編の際に当時の領主が貧乏くじを引き、王都から最も遠いパンジーフ地方を管理することとなったのだ。


 当時の領主たちはパンジーフ地方をアルソレア家に押し付けたことで厄介払いができたと思っていたのだが、最近になって、パンジーフ地方の鉱山に大量の魔鉱石が眠っているという噂が広まっている。


 「彼」もまた、その噂を耳にして一攫千金を夢見てやってきた貧しい青年であった。しかし、パンジーフ地方は領地のほとんどが深い森で覆われており、普通の人ならば絶対に立ち入らない場所である。無論、森の中にはゴブリンやオオカミをはじめとした危険な生物がたくさん潜んでいるからだ。


 そんなことはいざ知らず森の中へと迷い込んでしまった「彼」だったが……


「あ、チクショウ、なんだよこのツタ、きもちわるっ!」


 森の中は薄暗く木々がうっそうと茂り、猛禽類の雄たけびのような鳴き声が響き渡っていた。


「はぁ、やっぱりこんなところ来るんじゃなかった……」


 ガサッ、ガサガサッ……。森の奥の方からかすかに物音が聞こえる。


「誰だ!」


 突然の物音に「彼」の警戒心は一気に高まる。


────何かがくる……、こっちに向かってくる!?


 ガサッ、ガサッ!


────右か……? いや左……? ……後ろかっ!?


 そのときだった。ジェットエンジンを蒸すような高音とともに「彼」の体は空高く押しあげれた。


────し、下っ!?


 「彼」は死を錯覚した。


────おいおい、17年間自堕落に過ごしてきてやっと人生の糸口的なもん見つけたってのにこんなとこで死ぬのかよ……だっせぇ


 そんなことが「彼」の脳裏をよぎったその時だった。先ほどまで隆起していた地面が突如陥没し、「彼」は奈落の底へと落とされた。


「しっ、死ぬ!! …………ん? あれ……死んでない……?」


 念のため「彼」は自らの頬を思いっきり抓る。


「痛って!! 自分で抓っといてあれだけど抓る強さくらい考えろよな……」


 力いっぱい抓ったはいいものの、思っていたよりも痛かったようで「彼」は涙目になりながらつぶやく。近くに人がいなかったのは幸いだった。このときの「彼」は傍から見ればただのアホ、いや、バカか。


 あたりは先ほどの現象が起きる前と同様、静まりかえっている。ただ、人こそいないものの先ほどと変わった点がひとつだけある。「彼」の周りには透き通るような紫色を持つキノコが群生していた。周りの地形に変化がないところからも先ほどの揺れのときに生えてきたのだろう。


「なっ、なんだキノコか……。死ぬかと思った……はぁ……」


 てっきり何かに襲われたとばかり思っていた「彼」は謎のキノコの突然の登場に驚きながらも安堵の息を漏らした。どうやらこのあたりの生物は独自の進化を遂げているようで、このはじけるように成長するキノコもその一つらしい。何も知らない「彼」のような通行人にははた迷惑な生態だ。


 「彼」がふと空を見上げると、生い茂った木々の間から微かに西日が見えた。それから数分後にはそれも沈みはじめて、いよいよ夜が訪れようとしていた。


「うむ、暗くなってきたし今夜はここで一泊するとしようかな」


 「彼」は手提げの中から紫傘のキノコを取り出して持参していた串にブスッと刺した。


「腹も減ったしこれ食ってみるかな、よく見ると美味そうだし」


 「彼」は先ほどのキノコを火にかけると近くの木に腰かけ、キノコがこんがり焼けるのを今か今かと思い見ていた。普段よりも意識が朦朧としているというか酒に酔ったようにふらふらとするのを感じたが3日も歩き続けてきたのだ、疲れているのも無理はない。


 やがてキノコの香ばしい香りが広がり、食べ頃になると、「彼」は飢えたオオカミのようにキノコを頬張った。


「うまい! やっぱり俺料理の才能あるかも」


 我ながら上出来な味に感嘆の声をもらした「彼」は旅の疲れと久々にものを口にした幸福感に満たされて死んだように眠りについた……。


 どれくらいの時間がたったのだろうか、あたりはもううっすら明るくなってきていた。


「!?」


 久々に長い睡眠をとることのできた「彼」は満足そうな顔で起き上がろうとしたのだが、体がおかしい。


「か、体が……動かねぇ……」


 「彼」はまるで金縛りにあったかのように動きを封じられた。どんなにもがこうとも「彼」の体は全身を縛り上げられたかのように動かない。


────プツッ。


 突如、「彼」の視界は暗闇に包まれた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「お目覚めになりましたか?」


 聞き覚えのない声に「彼」は恐る恐る瞼を上げる。


 彼の視界に映ったのは、見知らぬ天井にふかふかのベッド、それに見知らぬ獣耳老人────


「って、オマエ誰なんだっ!? つか、ここはどこだなんだよ!」


「これは失礼。申し遅れました、私は当主エリス様に仕えておりますフィールズと申します。どうぞフィルとお呼びください」


「……フィルさんか。呼びづらいからフィル爺って呼ばせてもらうぜ。ところでだフィル爺、単刀直入に聞こう、ここはどこで、何で俺はこんなとこにいるんだ?」


 会って数分と経たない相手に勝手にあだ名をつけた「彼」はいきなり核となる質問をぶつける。


「ここはアルソレア領パンジーフ地方の領都フラムに位置する城郭、ルメール城です。あなたも一度は耳にしたことがあるでしょう?」


「……ないな」


 「彼」は辺りを舐めるように見回してから答える。


「ん、今なんとおっしゃいましたか?」


「だーかーら、ねぇって!」


「なんと……!」

 

 フィルは獣人族にしては小さめの耳にをピクピク動かしながら答える。


「先の大戦で荒廃しきったクリストフ王国を再建した七雄のひとつ、アルソレア家をご存知ないと!?」


「悪いんだが、なんにもわからん」


「では、アルソレア家現当主エリス=アルソレア様のこともご存知ではないのですか?」

 

 目を見開き、ありえないとでもいうような顔でフィルは尋ねる。


「あぁ、悪いけどそれも知らないね」


「お客様、失礼ですが、お名前は?」


「名前……名前ね……、うーむ、名前……」



────名前……、俺の名前は……、




「……ない」




「名前がないですと?そんなことあるわけ……」


「思い出せないない……本当に思い出せないんだ……」


「もしかして……、あぁ、そういうことでしたか」


 どうやら合点のついたらしいフィル爺はこぶしをポンとたたく。


「そーゆーことってつまり?」




「あなた、魔女の森に入ったでしょう?」




「魔女の森……?」


「魔女の森、それは忌み嫌われ歴史の藻屑と成り果てた場所。曰く、森の奥深くには邪悪な魔女が住んでいる。曰く、何人たるも立ち入ってはならない。曰く、森に立ち入った者は皆記憶を失う」


「おいおい、待てよ。それじゃあ、俺がその魔女の森ってとこに入って何かしたってのか?悪いけど俺は何も知らねぇよ?」


「おほんっ……言ったではないですか、魔女の森に立ち入れば最後、記憶を失うと……」


 フィル爺は軽く咳払いをしてひと呼吸置いてから続ける。


「なっ……、どういうことなんだよ……わけが分かんねぇ……」


「この近くではたまにあなたのように倒れている方がいるんですよ。まあ大半は魔物にやられて死んでいますがね。ごく稀にお客様のように息をしている方もいらしゃって、みな口をそろえて言うのです、自分が誰でどこで何をしていたのかわからない……と」


「なんなんだよそれ……」


「まぁ、頭の中で整理がつかないのも無理はないでしょう。名前は……ないとおっしゃいましたね」


 困惑する「彼」にフィル爺は優しく声をかける。


「あぁ」


「では、ソラフ様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」


「ん、どういう意味なんだ?」


「神聖語で名も無き来訪者という意味の言葉です。この地域では魔女の森からときどき現れる迷い人を『ソラフィスの迷子』と呼びます。それからお取りしました」


「ふむ、神聖語って?」


「神聖語は、クリストフ王国に伝承されているクルシア神話の伝承に用いられている言語です。もっとも私のように趣味で研究をしているようなものでないと読めませんがな」


「フィル爺って案外博識なんだな」


「彼」が素直にほめるとフィル爺は耳をピクピクさせて照れながらも話を続ける。


「ソラフィス様は、クルシア12神の末っ子で主神ティルスによって命を救われ、後にクルシア12番目の神として神格化されたといわれています。運良く私共に拾われたいまのあなたにピッタリでしょう?」


「うーむ、なんか話が非常に壮大でよくわからんけども、まあ、いいか、よろしくなフィル爺!」


「改めまして、こちらこそよろしくお願いいたします。ソラフ様」




────名も無き「彼」 改めソラフの物語はいま、ここから始まる



こんにちは、黒猫わらびもちもとい望月琴音です。

半年振りに戻って参りました!改稿された第1話はいかがでしたでしょうか?


4話までの改稿が終わり次第、新話も書きたいと思います!応援よろしくお願いします!


次回もお楽しみに(*b'v・)b+。

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