夕べに明日明くる 《前》
ここからは文学フリマ短編小説賞応募作品「亡国の歌姫と琴の騎士」及び「イメソン集」に掲載中のその作中歌「夕べに明日明くる」のネタバレを含みます。
ネタバレを好まない方はぜひ、本編を読んでからいらしてください。
では、どうぞ──
今回は前回紹介しました文学フリマ短編小説賞本命作品の「亡国の歌姫と琴の騎士」作中歌である「夕べに明日明くる」の紹介です。
「夕べに明日明くる」は「イメソン集」に歌詞全編を掲載しております。
「夕べに明日明くる」は詩なので、今回はあらすじ紹介はありません。詩のあらすじを紹介するって難しいと思います。
余談はさておき。「夕べに明日明くる」には色々と仕掛けを施しました。
次のとおりです↓↓
その一
歌詞には三羽の鳥が出てきます。わかりますか?
まずは烏。
一番と三番で啼いています。
続いて、これは難しかったんじゃないでしょうか。鳶。
えっ、どこに? と思うかもしれませんが、二番にいます。"知らずに飛び交う"という歌詞がありますよね。そこの"飛び"と"鳶"がかかっているのです。
"鳶"は"とび"ではなく"とんび"でしょうって? そうですね。一般的にはあの鳥は"とんび"と呼びますが、元は"とび"と言います。言い方がなまって"とんび"になったという話だったと思いますが、ちょっと自信はないですね。けれど皆さん"鳶色"という色はご存知ですか? 黒みがかった茶色の鳶の羽のような色を示すのだそうです。これは"とびいろ"と読みます。
最後の一羽はわかりやすく名前が出ていますね。白鷺です。
二番の歌詞にあります。
で、その鳥の名前がどうした? となりますよね。
これがあらまあなんということでしょう、本編と関係があるのですよ。
三羽の鳥はそれぞれ「亡国の歌姫と琴の騎士」に出てきたメインキャラクター三人のことを暗示しているのです。
どの鳥が誰に対応しているかというと↓↓
烏→姫君
烏はごみ捨て場にいるとか、夕方にぎゃあぎゃあ五月蝿いとか悪いイメージも多々ありますが、夕暮れ時に郷愁を誘う童謡「七つの子」という名曲があります。あれは烏の歌で、作者はとても気にいっていますし、あの曲を聴いて気分を害する人はあまりいないのではないかと。
それに濡れ羽色という美しい言葉があります。濡れた烏の美しい羽のように艶やかな黒を指す言葉です。女性の美しい髪の色を言うことが多いですね。
そろそろお察しかもしれませんが、濡れ羽色は姫君の髪の色です。つまり、烏は姫君を暗示する鳥なのです。
鳶→少年
鳶というと、こちらも童謡がありますよね。小学校の教科書に載っていました。曲名はそのまま「とんび」。なんだか楽しくなってきちゃう歌でした。
のんびり、悠々と空を旋回する鳶。隼かと思い見上げると大抵鳶という。隼もかっこいいので残念ですが、見るうち鳶も好きになりました。
そんな鳶、先に述べましたとおり、黒みがかった茶色い羽をしております。それは琴の騎士の少年の髪の色。
鳶は少年のことを示していました。少年に限らず、"琴の騎士"という呼び名の人物全員かな?
ある意味自由な人たちでしたから。宛もなくふらふらしている感じがそこかしこを旋回する鳶の姿と重なるかな、と。
鳶の目的地は一体どこなのでしょう?
白鷺→老人
前述と同じような考え方でいけば、自ずとこの答えは出るでしょう。
老人は白いひげのイメージがあって……おそらくサンタクロースとか某魔法学校の校長先生とかの影響かな、と。
白鷺というのは美しい鳥です。青空によく映える白い鳥ですね。
いつか青々とした田んぼの中から快晴の空に一羽の白鷺が飛び立つところを見ました。思わず「見つけた」ぱしゃりとやりたくなりました。どこの半澤くんじゃ。その当時は自転車乗りだったのでどっちかというと海道くん。
こほん、余談が過ぎました。兵庫県の姫路城、有名ですよね。あの城も壁面の美しい白い色から別名白鷺城と呼ばれています。
白鷺というと、そのお城のイメージが強いです。だから老人の役回りは城を守る"門番"となりました。
さて、ここまで来るとあとは裏歌詞の紹介だけですね。
長くなったので、裏歌詞は次回。




