朱鬼
ここからは「朱鬼」のネタバレを含みます。
ネタバレを好まない方はぜひ、本編を読んでからいらしてください。
では、どうぞ──
続きましては短編より「朱鬼」の解説をしていきます。
まず簡単なあらすじをば↓↓
ヒトとして死に、鬼として蘇ったものの放浪記。
ヒトであった頃、生きづらい生を生き続けることを苦にし、自ら死を選んだ緋角の鬼。最後の親族を密やかに看取り、鬼は自らの過去を省みながら歩き出す。
自ら死を選んだ理由、鬼として蘇り、意味のない生に意味を見出だそうと親族を看取る日々、振り返る日々の中で、鬼は何を思うのか──
近未来を歩く鬼、という時代錯誤ファンタジーをコンセプトとし、描いたのがこの「朱鬼」です。
ほぼ衝動で書いたので、改めて読むと作者自身も新鮮だったり。時代錯誤はテーマなのですが、それにしても不思議な感覚のするお話です。
さて、こんな不思議話でも、衝動から生まれた作品でもこの人(←自分だw)はしっかり言葉遊びをしているんですね。
これは結構簡単な方の遊びです。答えを知ると単純すぎて驚きます。さすが深夜の思考回路です(「朱鬼」はある日の深夜に執筆し、予約投稿した)。
今回の言葉遊びは二つあります。作中に答えがあるものとよく考えるとタイトルだけで答えが出るものの二つです。どちらも明けてしまえば簡単なタネ。
まず、作中に答えがある方。これは簡単、作中の最後に「この手記を突き出して」とあります。その"手記"とタイトルの"朱鬼"の発音が引っ掛けてあるんです。
それから、タイトルだけで答えが出る方。この話のタイトルは"朱鬼"なわけですが、何か気づきませんか?
まあ、この種明かしをするためには、タイトルの二字を分解してみるのが早いでしょう。
というわけで、一字目の"朱"。これは"朱色"の"朱"です。赤系統の色の一つですね。外国語で表現すると"ヴァーミリオン"。おっと、これは蛇足でした。
続いて"鬼"。これは説明するまでもなく、古来より有名な化け物の筆頭格の"オニ"です。
作中の鬼は"緋角"と表現されていますので、主人公の彼女の名前が"朱鬼"という捉え方ができます。ちなみに"緋"も赤系統の色の一種で、こちらは"スカーレット"と呼ばれます。
はて、"朱"が"あか"っぽい色、"鬼"が"オニ"とわかれば、もう答えは出たも同然。
つまり"朱鬼"はこうも読むのです。
"朱鬼"="アカオニ"
朱鬼さんはヒトだった頃、生きるのが苦しくて死んでしまいました。ここから察するに、彼女はきっと、思ったことを上手く口に出せないタイプだったのでしょう。
きっと、上手く泣くこともできなかったはず──
そんな彼女が、作中で最後に目指した目的地に達したとき、感動できるといいな、と願いを込めました。
感動の涙を流す赤いオニ──そう、「泣いた赤鬼」です。
作者は小学生のとき、音楽で習ったあの物語が今でも好きです。赤鬼も優しいですが、青鬼もいいやつですよね。




