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番外編・とある学園祭のひととき-2

「うう、とんでもない事になっちゃった」


 シズが顔を真っ赤にして、俯きながら歩いていた。

 そんなシズは今、フィエンドと手を繋ぎながら歩いている。

 散々抱きついていちゃいちゃしていたフィエンドはシズが正気に戻った時、キスをしてどうにか欲望を抑えた。


 もともと、そこそこ長い間、生殺しにあっていたのでこの程度ではフィエンドの理性が切れる事はなかった……わけではなかったのだが、傍にいたオルウェルとエルフィンの幸せそうな様子にあてられたのもあって襲えなかった部分もある。

 そして今は二人っきりで学園内をデートであり休憩も兼ねて学園祭を見て回っている最中だった。

 取り巻きたちも全員まいて、今は二人っきりである。


「シズ、何処を見に行きたい?」

「う、うう、あまり僕は分からないので、フィンにお任せします」

「……分かった」


 フィエンドが微笑むと、シズがさらに顔を赤くする。

 それにフィエンドは気を良くして、シズの手を引きさらに歩いていく。

 お化け屋敷の様な物や、お菓子を売っている所もあって、そこに丁度、イルがいたためにシズに、


「“僕の妖精”にはこのお菓子が似合う!」


 との事で大きな棒付くキャンディーを押しつけられた。

 子供の好きな細長い飴をぐるぐる巻いて棒をつけた飴である。

 シズは深く考えずに、それを頂いた。


 ちなみにフィエンドもクッキーの小さな子袋を購入していた。

 何でも、イルの作るお菓子は、都市の高級菓子店に劣らない味であるらしい。

 イルの傍にいたレイクがそう説明してくれた。


 ちなみにそこで綿菓子も売っており、その機械はレイクが作った物らしい。

 何故か、フィエンドがクッキーを買ってくれたおまけとして、ふわふわの白い綿菓子を二人に一つづつくれた。

 好意を受け取って、シズとフィエンドは生徒達が行き交う学園を歩いていく。


「少し静かな場所に行かないか? 二人っきりになれるような」

「……うん」


 そうフィエンドに提案されてシズは頷く。

 学園内はとても広い。

 だから人気のない場所もある。


 そこは水辺の一角にある場所だった。

 初めてエルフィンに会ったのもこの辺りだった気がするなと思う。

 丁度金属製のベンチがあり、そこにシズはフィエンドと一緒に座る。


 先ほど貰った綿菓子はすでに食べてしまって跡形もない。

 美味しいけれど儚いお菓子だとシズは思って、そこでフィエンドを見上げる。

 それに気付いて、フィエンドが優しげに微笑む。


 シズは顔を真っ赤にしていると、フィエンドの顔が近づいてきてシズの唇と重ねられる。

 シズの顔が更に真っ赤になった頃にフィエンドは唇を放して、


「俺の顔を見て、どうしてそんな風に顔を赤くするんだ? シズ」

「だ、だって、さっきもあんな風になったし、それに、フィンの顔、好きだし」

「俺の顔が好きなのか?」

「う、うん、初めて会った時、こんな可愛いくて綺麗な子がいるんだ、って思ったし」


 もじもじとしながら、シズがそう答えるとフィエンドがおかしそうに笑う。


「可愛くて綺麗なのは、シズの方だろう? 初めて会った時から、ずっとそう俺は思っていたが?」


 そこでシズは黙り、少し考える様に黙ってから、


「フィンは力が強いから、きっとそう、僕の“本当”の姿が見えていたんだね」

「“本当”の姿?」

「うん、僕、無意識のうちみたいだったけれど、他の人には“平凡”と認識される様な、そんな魔法を使っていたみたい。認識操作って言うのかな? 多分僕はずっと“普通”でありたいと、“人”でありたいと願っていたから」

「ああ、確かに皆が皆そんな妙な事を言っていたが……そうか、シズがそんな魔法を使っていたのか。でも、俺にはその方が良かったな」

「? 何で?」

「シズの魅力を知っているのは俺一人でいい」

「う、うう……」


 そう言われてしまうと、嬉しい様な恥ずかしい様な、でもこんな綺麗なフィンの傍にいるならシズもそれ相応であった方が良いんだろうかと悩む。

 でもその認識操作も、気付けば溶けてきてしまっている。

 多分、シズは自分でも自覚しているくらいフィエンドが好きだから、より魅力的に見えて欲しいのだと思う。


 そう思って見上げたフィエンドは、シズにとって相変わらず可愛く見える。


「フィンは、初めて出会ったあの時と変わらず可愛いよね」

「……それだけはシズの気のせいだと言わざるおえないな」

「そうかな? あの時からずっと、フィンの全てが僕は……大好きだよ」

「シズ……俺もシズがすごく好きだ。別れてからずっと忘れられないくらい」


 そうお互い言い合って、微笑みあい、どちらともなく手を繋ぐ。

 喧騒を離れた静かな場所で二人きり。

 それがフィエンドにも、シズにも酷く幸せな物に感じられたのだった。

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