結末
昼休み。ふらふらな様子のシズに、エルフィンが心配そうに、
「大丈夫ですか? シズ」
「うん、あれくらいは平気だよ。体力なんて簡単に回復できるし。フィンには早く元に戻って欲しい。そのためだったら、僕、何でもやるよ、僕は」
「シズ……ですが、あまり自分の事を傷つけるような事はしないでくださいね? 友達としてのお願いです」
友達としてつけるエルフィンに、シズは、友達だから友達の願いを聞いてくださいねと、シズに言っているのだ。
そんなに無理をしているつもりはないのだけれど、そんな風にエルフィンに心配されて、自分がそんな状態だと気づく。
けれどそれでもシズはフィエンドに戻って欲しいから、何とかしようと思う。
ついでに、今のフィエンドを見ていてシズが思うことは、
「フィンはずっと僕にあんな事をしたかったのかな」
「……でもフィエンドが我慢していたのは、それだけシズを大事にしていたからです。それをあんな……でもくれぐれもシズが傷つくない範囲でしてください。そうでないとシズも、そして……記憶を取り戻した後のフィエンドもどうなるか分からない」
「うん、分ってる。でも僕はまだ大丈夫だから、いいかなって」
「……ぎりぎりで切り上げるのは良くないですよ? それだけは気をつけて」
「うん、分った」
そう微笑むシズに、エルフィンがしょうがないなといった風に笑う。
そしてシズは、授業を受け始めたのだった。
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フィエンドにオルウェルは突っかかっていた。
「フィエンド、少しやりすぎじゃないか?」
「何の話だ」
「シズに対してだ」
「お前だってエルフィンとやっていたじゃないか」
「ぐ、だがエルフィンは慣れているがシズは、そういった事に疎いぞ?」
「……やけにお前はシズの肩を持つな」
そうじろりと睨むフィエンドに、オルウェルはたじろぎながら、
「シズは恩人だから。私とエルフィンの仲を取り持つ……記憶にないか?」
「無い。……まったく、昔の俺だって同じ俺なのにどうして、お前もエルフィンもこんな風に俺を責めるんだ」
「……記憶がなくなる前は、信じられないくらいシズのことを大事にして、それこそ手も出せないくらいに甘やかしていたから心配しているんだ」
「信じられないな。嘘としか俺には思えない。俺はそんな人間じゃない」
「……シズだけがお前には特別だったんだよ。しかしどうしてこうなったのだか……まったく意図がわからない」
「……どうでもいい。俺はお前の言っていることが信用できないし、あのシズが淫乱でない証拠にはあまりにも心もとない」
「程ほどにしておかないと記憶が戻った時、後悔するぞ?」
「……うるさい。シズを見るたびに押さえられなくなるんだから、そんなあいつにも問題がある」
それを聞いたオルウェルが、無表情で黙った。
黙ってからしばし考えたらしく、深々と溜息をついて、
「それはシズが好きだから、そういうことか?」
「当たり前だ。でなければあんなに俺が……」
「……好きなら、優しくしてやれ。自分らしくないくらいに。愛しているとシズが自分から、フィエンド、お前にいえるくらいに」
「……お前に言われる筋合いはない」
そう遮断してしまうフィエンドにオルウェルはといえば、記憶がなくなってもシズが好きで、しかもその想いをこじらせて、面倒な事になっているなと嘆息して……もう少し様子を見てから手助けできるなら手助けしようと考える。
もっとも、そんな事をするまでも無い程度に、すぐに状況は変化する事となる。
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放課後、部屋でシズは不安そうに抱きしめるフィエンドに気付いた。
だから安心させるように、自然と出てきた言葉をシズは口にする。
「フィン、愛してる」
そのたった一言。
フィエンド様と言えとシズに、フィエンドは言えないくなる。
それどころか、微動だにできなくなる。
それはあまりにも唐突で、シズが愛しているとフィエンドに告げたことが切っ掛けとなっていて。
「フィン?」
そこで、顔を青くしているフィエンドの名前を、シズはもう一度呼んだのだった。
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シズがフィエンドを呼んでいるが、フィエンドはそれ所ではなかった。
一方そんな固まっているフィエンドに、シズは、
「フィン?」
「! すまない、俺は……」
記憶が戻ったのだと、シズは気付く。
だから蒼白になっているフィエンドにシズは、
「フィン……僕は別に気にしていないよ?」
けれどフィエンドは答えない。
そしてフィエンドはすぐにそのまま何処かへと立ち去ってしまったのだった。
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現在フィエンドは、ある空き部屋に引きこもっていた。
正確にはシズとしていたのがもとのフィエンドの部屋であったのだが、そこにいるのもいやでフィエンドは逃げ出してここにやってきた。
女々しいと思うが今は一人になりたかった。
なのに先ほどからシズやエルフィン、オルウェル達が部屋を叩く音がする。
どうしてすぐに分ったと思いながら、けれど悶々とフィエンドは考え込んでしまう。
シズが愛しているとフィエンドに言った瞬間、何か理性のようなものがぶちっと切れて、記憶が蘇った。
蘇ったのは良いのだが、その記憶のない時期にやらかした色々な……そう、色々なシズへの仕打ち。
フィエンドは自分自身それほど変態的な趣味はないと思っていた。
もう一度言う、フィエンドはシズを普通に抱きたかっただけであって、それ以上如何こうしたいと思っていたわけではなかった。
出来る事なら、たっぷり甘やかして気持ち良くさせたいと、いい思い出になるようにしたいとそんな希望があった。
だが結果はこれである。
どうしてそうなったとしか思えない自身の思考回路に、フィエンドは雄叫びを上げたい気分になる。
確かにフィエンドはシズが大好きだ。
そんなすきなんて言葉で表せないくらい大切で、確かに自分の行動にしては随分と人間らしく、優しかったように思う。
だがシズと出会わなければ、そんな感情も行動も持ちえなかったのだと今更ながらフィエンドは気づく。
それゆえに自分自身を良く知っているフィエンドは、エルフィンやオルウェルの言っている事を嘘だと決め付けた。
そんな事をするはずがないと。
オルウェルは後悔するぞと珍しくフィエンドのためになることを言っていて、けれど自分はそれが信じられなかった。
ひとえには自分が、シズを記憶を失っても一目惚れして欲しいと思ったからで。
しかも淫乱と勘違いして。
他の男と関係があると誤解してしまったのだ。
そもそも未だにオルウェルがシズの同室者のままだった所に問題があるわけで……つまり、全部あのオルウェルが悪い。
それで済ませられれば楽なのだが、現状を鑑みてそれでは済まされず、そもそもシズに嫌われたかもしれないとか、失望されたかもしれないとか、あああああああああ。
考えれば考えるほどど壷にはまっていく事に、フィエンドはまったく気づいていないのだった。
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シズは、扉を蹴破ろうかどうしようかと考えていた所で、オルウェルに止められた。
「少し一人で悩ませてやれ」
「ええ!」
止められたシズが驚いた様にオルウェルを見る。
そんなオルウェルにエルフィンが、
「いいではありませんか。こうもっと、フィエンドの心にざくざくと……」
「エルフィン、気の毒だから止めておいたほうがいい。そもそもあまり追い詰めるのは良くないぞ?」
「僕は壁際ぎりぎりまで追い詰めるのが趣味なのですが、どうしましょうかね……オルウェル?」
「な、何故私にそんな事を言う、エルフィン」
「最近ご無沙汰だからです」
「そんな!」
「僕はもっとオルウェルが欲しいのに、僕はオルウェル無しじゃいられない体にされてしまったのに……なのに当のオルウェルは、僕の事が飽きたから捨てるんですね?」
「どうしてそうなった! というか、何をやっているシズ」
再び扉を蹴破ろうとしたシズを、オルウェルが止める。
何で自分はこんなに大変な想いをしているんだろうとオルウェルが思ったのは良いとして、
「そうだ、僕に良い考えがあります。手伝っていただけますか? シズ」
そう、エルフィンがにたりと笑ったのだった。
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「や、やめ、エル、やめて、そこさわっちゃやだぁあ」
「いいじゃないですかこれくらい。もっと凄い事をフィエンドとしているんでしょう?」
「だ、だからってそこは……あっ!」
そこで、ばたんと部屋の扉が開いた。
フィエンドが真っ青な顔になって、怒りに体を震わせながら、エルフィンにわきをくすぐられている静がいた。
自分が何か大きな勘違いをした事にフィエンドは気づかされて、そしてエルフィンがしてやったりと黒く笑う。
ついでに扉が閉められないようオルウェルに押さえられていた。
「……騙したな、エルフィン」
「騙される方が悪いんです。さあ、フィエンド、一人で悩む前にする事があるでしょう?」
その言葉にエルフィンとフィエンドがシズを見る。
シズは、そこでフィエンドに微笑んで、
「僕はフィンと二人っきりで話したいのだけれど、いいかな?」
断りたい気持ちで一杯だったフィエンドだったが、そこでシズがフィエンドの手を掴む。
それを振る解く事のできなかったフィエンドは、そのままシズに連れられて、もとのフィエンド達の部屋へと向かったのだった。
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もとのフィエンドの部屋に来て、シズとフィエンドはベットに腰掛けて向かい合っていた。
けれどフィエンドは俯いたまま。
そんなフィエンドに、シズはフィエンドの手を握って、
「フィンの記憶が戻って、僕は嬉しいよ?」
「……俺は、最低だ。シズにあんな事をして……俺は」
「でも、記憶がなくなっても、フィンは僕の事が好きだったんだよね?」
「……好き、だった。だから俺は、シズの全てを自分だけのものにしたくて、だからあんな……」
そこで唇を噛むフィエンドに、シズは微笑んで、
「僕はまだ、フィンの事が好きだよ? だから、怖がらなくてもいいんだよ?」
「怖い? 俺が?」
「うん、僕に嫌われるのがそんなに怖い?」
そう問いかけられてフィエンドは思う。
シズに嫌われる、それはとても怖い。
嫌われたくなくて、好きになってほしくて、ずっと大事にしてきた。
大切にしていたのも全部シズに愛して欲しかったから。
そして今怖いのは、シズに、嫌がるシズを無理やり犯したこと。
しかもそんなシズを見て更に情欲と怒りを煽られて酷くしてしまった事。
更に付け加えるなら、勘違いをしてシズを罵ってしまった事。
その罵りも独占欲と執着からで、シズを犯す事の肯定としてフィエンドは使っていた。
嫌われて当然だ。なのに……。
そこでシズが、フィエンドに抱きつく。
「シズ?」
「フィンはずっと僕の事を好きでいて、だから優しく大切に扱ってくれていたんだって、今回の事で分った」
「……記憶のない俺は冷たかったか?」
「うんん、優しかったよ? これ以上は辛いって言ったら止めてくれたし。それにされてみて、ずっとフィンは僕にこういう事をしたかったのかなって」
「……いや、俺に変態的な趣味はない」
そっぽをむくフィエンドもまた可愛く思えてシズは笑う。
「確かに初めは辛くて怖かったし、酷い事も言われたけれど……それでもフィンは、僕の事を好きでいてくれた事が分ったから、それで良いよ?」
「だが、シズ、俺は、俺が自分で許せない」
「僕が納得しているのにフィンは納得してくれないの?」
「そうだ。だって俺は……」
「そもそも、フィンがこうなったのは全部、あいつら……“破壊の神”と“維持の神”のせいでしょう? フィンが、それを望んだの?」
「いいや。だが、彼らの言い分は、俺がもしシズと仲違いしたなら……」
「……あいつらそんな事を僕のフィンに言いやがったのか。後でたっぷりお仕置きだ」
暗く笑うシズに、その時状況を見守っていた“破壊の神”と“維持の神”がぶるぶる震えていたのだが、それはいいとして。
「でも、もしもを考えるなら……シズ?」
「フィンはもしもの事が起こって欲しい?」
「嫌だ、絶対に」
「僕もだよ、絶対に嫌だ。だから、僕らがそう思い続ける限り、大丈夫」
「けれど人間の心は移ろいやすいものだろう? 何時俺が……」
それ以上はいえなくなるフィエンド。
口に出したなら現実に起こってしまいそうで、不安だったから。
自分らしくないが、ことシズの事に関しては“弱く”なってしまう。
そこでシズは、そんなフィエンドの不安を読み取って、
「フィンは初めて会った時からずっと、僕の事を思ってくれていたんだよね?」
「そうだが、それがどうかしたのか?」
「そして僕は、フィンが忘れられなくてここに来た。そしてお互いがお互いを勝ち取って、それでもまだ不安に思う事はあるかな? 僕はないと思う。だってこんなに何年も離れていてもお互いが想い合えたなら、多分これからも大丈夫だよ」
そうにっこりと微笑むシズに、フィエンドも根拠はないけれど、大丈夫な気がしてくる。
自分らしくないように思うが、そう信じる事で実現できるのもまた事実で。
フィエンドがシズが好きな事には何の変わりもなくて、シズもフィエンドを好いてくれているなら何の問題もない。
だからシズにフィエンドも微笑んで、
「そうだな。シズの言うとおりだ」
「そうそう、僕はフィンが笑った顔が好きだから、ずっと僕の隣でそうしていてね?」
「……シズは相変わらず強いな。強くて、俺がはじめてあった時から好きなシズのままだ」
「僕はそんなに強くないよ。僕はフィンの方が強いと思うけれど?」
「そんな事はない。それは断言できる」
「……僕のフィンの悪口を言うな。流石にフィンでも怒るよ?」
「自分が弱いというのは平気なのか? シズ」
「……だって、フィンの事、今回、助けられなかったから。どうすれば良いのかも分らなかったし」
「そうなのか? ……いつも、分っていたのか?」
「うん、何となく。でも、フィンは今は、そんな枠組みから外れていて、少し良く分らない。でも、どうあってもフィンはフィンのままだって分ったから、僕は気にしていないよ?」
そうにこっと笑って今度は抱きついてくる。
けれどどうあってもフィエンドのままだと言われて、“闇”を受け入れて人の枠を超えたフィエンドでもシズが受け入れてくれているのだと分る。
フィエンドがフィエンドのままシズは受け入れてくれる。
そしてフィエンドは、愛おしさを覚えて仲直りも兼ねてまシズにキスをしようとして……そこで部屋の扉が開いた。
「魔物の大群が押し寄せてきた! シズにフィエンド、二人とも手伝ってくれ」
「……良い所でまた邪魔が入る」
恨めしそうな声を上げて、フィエンドは入り込んできたアースレイ学園長を恨めしそうに見たのだった。
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魔物の大群はフィエンドによって阻止された。
フィエンド自身が、それをすると言い、それを少しシズが手伝った。
その大群は一瞬にして倒され、その力を示した。
ついでその魔物の大群は、かの神殿にいた“闇”達が残していった置き土産である。
こうして、シズがやってきた事で絡み合った一連の出来事は、ようやく終わりを告げる事とのなった。
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皆が其々、部屋に戻っていく。
それを見送りながら、シズは呟いた。
「エルフィンとオルウェル大丈夫かな」
「……他の誰かを考えている暇があるのか? シズ」
「うーん、でも気になってしまうし。そういえばあのリグとか」
「……あの懐きようは別人かと思った」
フィエンドすらも戦々恐々としているのは、ここ数日の間にアースレイの弟、ブラウニングとリグが、正確には、リグが懐くように纏わりついて幸せそうで……一体ここ数日に何があった、という状態だった。
「シズ様とフィエンド様にはご迷惑をおかけしました」
そうにこっと笑ったり具を見たとき、シズは卒倒しそうになった。
別人かと思ったがどうも違うらしく、ブラウニングが言うには調教の成果……らしい。
恐ろしい、というか何があったのか。
疑問は尽きないが二人は考えるのをやめた。
そして部屋に戻ったフィエンドとシズ。
そこでフィエンドはシズに、
「優しくするから……いいか?」
その言葉にシズは頷く。
押し倒されて、幸せな気持ち煮ながらシズハフィエンドに抱かれた。
こうやってフィエンドが傍にいて、シズを愛して抱いてくれて、シズは幸せだと思う。
欲張って求めてしまって、けれど手に入れることが出来た、大好きな人。
これからはずっと一緒にいられると、シズとフィエンドは幸せな気持ちに包まれてお互いを貪ったのだった。
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その後。
事後、シズとフィエンドいちゃついていた所で、オルウェルが乱入した。
なんでもしばらくはフィエンド達と同じ部屋でいたいらしい。
「本当にオルウェルは……」
「エル、その鞭何処から持ってきたの?」
「え? ああ……大丈夫です。鞭で打つ趣味は僕にありませんから」
「えっと何処から? というか、それでオルウェルが怯えているんだけれど」
「……取り巻きの一人が馬術部で、忘れていきましたので僕がじきじきに返そうとしたのですが……その途中でオルウェルを見つけましたので、そのまま追いかけたらオルウェルは逃げ出してしまったのです」
まったく酷い話ですとエルフィンが嘆息する。
オルウェルはまだ警戒するように、エルフィンから距離をとっていたが。
そしてアースレイ学園長に、同室者をオルウェルとフィエンドは交換してもらう事となった。
そこまでは良かったのだが、
「四人で同じ部屋のままですか?」
「一応シズとフィエンドのその力はあまりにも強すぎる。だから、それを抑える意味で、そちらのオルウェルとエルフィンを置く事となった」
この提案に喜んだのはオルウェルとシズだけだった。
ちなみにどうしてシズが喜んだのかといえば、友達のエルフィンがいたという理由からである。
後はフィエンドがもう少しこう……。
手を繋いだりとか穏やかなものでもいいかなという、シズなりの思いもあったわけだが……フィエンドが不機嫌になり、今度の休みを楽しみにしていろとシズに微笑んだ。
シズはその笑顔に、フィエンドが怒っているのを感じたが、そこでげっそりとしたウィルが現れる。
「ウィル叔父さん、どうしたの?」
「……変な物を見た。そして襲われそうになった」
「……リグに?」
「ああ……あれが何だかアースレイの弟に懐いていたけれど油断したら襲われて……」
「ウィル、その話をもう少し私に聞かせてくれないか?」
微笑むアースレイだが、それを見たウィルが首を振り、
「さっきブラウニングが怒って連れて行って、今日は一日調教して矯正するって言っていた。ついでに、その分の仕事をアースレイに任せるって」
「……覚えていろ」
恨めしそうにアースレイが呟いて、そして、別室は認められないと最後にフィエンド達に告げた。
結局は、四人一緒にまた住まう事になるけれど、
「出来立てのカップル二組を同じ部屋にするのは、酷すぎないか?」
「そうですね、珍しく気が合いますねフィエンド。僕はもっとオルウェルを堪能したかったのに……酷い」
ちらりとオルウェルを見て涙を浮かべるエルフィン。
一方、オルウェルは凍りついたように固まっている。
そして、シズはといえば、
「でもこれからはずっと一緒にいられるんだよ? それだけで嬉しいよ」
「シズ……愛している」
そうフィエンドに抱きしめられてシズは幸せそうに笑う。
ここに来たばかりの頃はこんな風になるとは思わなかったと、シズは思って。
来る前と後で随分と変わってしまったものもあるけれど、それでも大好きな人が傍にいればそれだけで幸せなのだから、その変化はシズにとって愛おしくて尊いものに思える。
そこで抱きしめるフィエンドを見上げて、
「僕の初恋はフィンなんだよ?」
「そうか、俺の初恋もシズだ」
「でもここに来て、フィンに会ってどんどん好きになる。一緒にいて、会うたびに何度もフィンの事が好きだなって思ったんだ」
「俺も、シズと知らずに出会ったあの時心惹かれた。そしてシズと分っていても、手放せなかった」
「僕は何度でもフィンに恋をしたし、これからもすると思う」
「俺も、何度でもシズに恋をして、これからももっと好きになる。そんな自信がある」
そうフィエンドとシズが言い合って、キスをする。
それを見たエルフィンがオルウェルにねだっていたりするが、オルウェルは逃げ出した。
そんな騒がしさのある日常が再び戻ってくる。
こうして、幾つかのカップルが出来るまでの陰謀にまみれた出来事は、終わりを告げた。
そしてシズ達の大好きな人共に歩む平穏で騒がしい学園生活が始まりを告げたのだった。
{おわり}
ここまで読んで頂きありがとうございました。




