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再度、つれさらわれて

 オルウェルとエルフィンが心を通わせて、また、神殿内の動きが活発化している頃。

 散々女装をさせられて弄ばれて、くてっとなっているシズにフィエンドが問いかける。


「そろそろ戻っても良いだろう。十分楽しんだはずだ」


 と、シズを抱き上げようとしたフィエンドは、大丈夫、自分で歩けるよ、とシズが微笑んで、抱き上げ損ねたと心の中で悲しんでいた時。

 シズがそこでふと考えてから、


「今日はあの二人をそっとしておいてあげれないかな」

「……部屋には戻らない、と?」

「うん、他の部屋は無理かな?」


 と、ねだると、フィエンドは少し考えてから、


「……逆に学園内で遭遇しているから外の方が良いかもしれないな」

「え?」

「久しぶりに学園を抜け出してみるのも面白いかもしれないな。夜の街は綺麗だぞ、シズ」

「そうなの?」

「危険はない。俺もいるし、安全な場所にしか連れて行かない」


 実の所、外の町をシズとデートできたのは、シズがまだシズだと知る前だったので一度やりたいというフィエンドの欲望が一番の理由だったりする。

 だが、それでも傍にいればシズを守りきる自信がフィエンドにはあるのだから、問題なかった。

 そして夜の街の夜景もまた美しいので見せて喜ばせたいというフィエンドの思いもある。

 そうして誘ってフィエンドにシズは、少し考えてから頷く。


「フィンと一緒にいられるなら何処でもいいや」


 にっこりと笑うシズの表情に、フィエンドが平静を装いながら、というよりは格好良い所を見せようとした表情を向けつつ、心の中で悶絶する。

 もちろんシズは相変わらずフィンは格好良くて可愛いな、と思っている。

 そんな二人の様子を空気のようになったリノが見ていたりするのだが、そんなリノといえば、相変わらずフィエンド様はシズに骨抜きにされているなー、とにまにまして様子を見ているだけだった。




。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"




 そして夜の街に繰り出したフィエンドとシズだが、


「……綺麗な看板が広がっているけれど、なんとなくこう……」


 服装が何処と無く厭らしかったり、怖そうなお兄さんや、飲食店が広がっている。

 笑い声も聞ける華やかさはあるが、見ていると何処か怖くなり、シズはぎゅっとフィエンドの服を握る。

 そんな頼るようなシズの様子に、フィエンドは小さく笑って人ごみを歩き出す。

 煌びやかに着飾った大人達。

 けれどこの場に澱むものはシズにとって苦手だ。

 あまり長くいては苦しくなってしまいそうで、本当なら今すぐにでも森や草原を駆け回りたい気持ちになる。と、


「ここは、以前案内した時にシズと通った場所だぞ?」

「ええ! ……分らない」

「あの時は昼間で市や別のお店が並んでいたからな」


 フィエンドが語ると、シズは眉を寄せて周りを見る。

 目を細くして少しも見落としがないように周りを見渡すも、満たされる嫌な空気に気を取られて分らない。

 そこで、フィエンドがある建物を示す。


「あれが、俺がシズを引き込んだ宿だ」

「……ああ! 確かにそうかも。……まさかあそこに泊るの?」

「ん? そうだけれど、何か問題があるか?」


 あの宿は知っている。ああいう事をする場所だ。

 つまり、フィエンドはシズを初めからそうするつもりでここに連れて来たのだ。

 そう思ってシズは、思いもよらずそんな事になってしまうと顔を赤くする。が、


「……冗談だ。シズトするのなら、もっと違う場所に連れて行く」

「フィ、フィン……僕は、いいよ」

「え?」


 驚いたようなフィエンドの声に、けれどシズはそんな事を気にする余裕がない。

 心臓がバクバクいって顔が赤くなり、けれどそれを耐えるように、そして逃さないようにフィエンドの服をシズはぎゅっと握った。

 その仕草からシズが勇気を出して言っているのが分りフィエンドは、その可愛さとけなげさにくらりと来た。

 そして、フィエンドが口を開きかけた時、


「あれ、そこにいるのは俺の息子じゃないか」


 そう、声がしたのだった。



。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"



 シズが今まで見たことのないくらい微妙な顔をして、その声の人物を見た。

 赤い髪に、何処か野性味と威圧感のある恐ろしいほどの美形。

 人の中にありながらもその異質さは際立っているのに、逆に意識できない、したくないような雰囲気を醸し出している。

 そんな彼が言った言葉を思い出して、シズの父親だろうか、似ていないなとフィエンドは現実逃避をして、そこでシズはフィエンドの方を見る。


「“破壊の神”」


 誰が、とは言わないものの、シズが嫌そうに告げる。

 その様子があまりにも珍しくてフィエンドは、シズに問いただそうとするも、そこで“破壊の神”が。


「場所を移そう。そこの宿はどうだ?」


 示された宿は、シズが以前フィエンドに引きずり込まれた場所だったが彼といるならば個室の方がいい。

 なのでシズとフィエンドは頷いて、彼と共に部屋へと向かったのだった。




。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"



 部屋のテーブルの片側に、フィエンドとシズ、もう片方に“破壊の神”が座っていた。


「しかし、実際にこの目で見ると、感慨深いものがある」


 そう“破壊の神”はフィエンドを見ながら優しげに目を細め、


「フィードによく似ているな。彼は元気か? と聞くのもおかしな話だ。ずっと見ていたから」

「ずっと、ですか?」

「ああ、俺の子供達や末裔を見守って、時に手助けしていたが、ここ暫く俺はこちらにこれなくて……苦しんでいる君を助ける事はできなかった。許して欲しい」


 そう申し訳なさそうに言う“破壊の神”にフィエンドは何の事かと思うも、ぎゅっとシズがフィエンドの手を握るのを見て、気づく。


「“破壊の神”である貴方様の力を引き継いでいるから、俺の体が、弱かったのですか?」

「そうだ。厳密に言えば、フィエンド、お前の中にある力は、今までの子供たちの中で桁違いに強い。それゆえに器が持たなかった」


 そこでシズが、フィエンドの手をぎゅうっと更に強く握る。

 だから安心させるように一度シズの手を放してから、今度はフィエンドが自分から握り締める。

 それを“破壊の神”は優しげな眼差しで見ながら、


「けれど、そこにいる……アレが、お前を癒してくれて、それで今も生きているし、この前も死なずにすんだ。ついでに、お前を見守る事で、アレの存在も見つけることが出来て一挙両得という事だったんだが……」

「アレ、じゃない。僕は、シズだ」

「あー、はいはい。そういえばシズ。お前がフィエンドと結ばれたなら、俺の事は“お義父さん”になるんだが、分っているか?」


 にやにやと笑いながら、シズを見る“破壊の神”。

 その一方でシズは絶望的な表情で固まった。

 顔から血の気が完全に無くなり、真っ青になっている。

 だからフィエンドはシズを抱きしめて、


「大丈夫か? シズ」

「う、うぅ……フィン……僕、フィンの事が大好きだから、頑張ってあのエロ親父を“お義父さん”て呼べるように頑張るよ」


 そう、酷く悲しげに呟くシズを宥めながら、フィエンドは、この“破壊の神”本人を前にして、エロ親父と言えてしまうあたり……と気づく。

 同時に自分よりもずっと強い存在なのだと認識して、フィエンドは、つい、


「俺の事、捨てるなよ? シズ」

「! そんな事しない! フィンこそもう、僕を遠ざけようなんて……んんっ」


 そこで文句を言おうとしたシズの唇をフィエンドは自分の唇で塞いだ。

 大人しくキスされているシズ。

 そしてその二人を、顎に手を当てて、ほーう、と面白そうに“破壊の神”はにやにやしながら見る。

 そこで唇を放したシズが、ぎゅうっとフィエンドに抱きつく。

 その幸せそうな表情に、フィエンドは微笑む。と、


「仲が良いのは良い事だ。さて、俺はフィードに会って……ああそうだ、神殿の者達は皆、お前が俺の息子だと知っている」

「……え?」

「お前たちの家が神殿と仲が悪いのは知っているが、フィエンド、お前は俺の、神である俺の血を引いている。だから、いずれ居場所となる場所である神殿の者達に話しておいた」

「俺はあの神殿を更地にしたい、です」

「それは俺もだ。だが、お前はしないだろう」


 黙るフィエンドに、薄く笑う“破壊の神”だが、そこで、“破壊の神”の頭がはたかれた。

 何故か手にはスリッパが握られていて、そしてシズは怒ったように、


「フィンに意地悪をしないでください! どうしてこう、貴方は昔から……」

「昔から、何だ?」


 そこで、“破壊の神”がい抜くようにシズを見て、問いかける。

 けれどその問いに含まれている意味に気付いて、シズはびくりと震える。

 次に俯くと、そこで小さく“破壊の神”は嘆息して、


「まあいい。どうやらシズ、お前の事は“維持の神”の子が狙っているからな。多分そんな事はないと思うが、フィエンドから心変わりするなよ?」

「当たり前です!」

「ならいい。フィエンドは、家族以外に興味がほとんどなかったからな」

「……そんな事ないよ。フィンは、優しい」


 シズが“破壊の神”に言い返す。それに、“破壊の神”はそうだなと笑って答える。そこで、フィエンドが、


「“維持の神”の子とは誰ですか? 俺はそんな奴がシズに近づいていたなんて知らない」

「ああ、あのアンノウンと名乗っている、リグという少年だ」 

「なるほど。この前半殺しにした彼が、そうなのですか」


 フィエンドがさりげなく言ってしまった言葉だが、そこで“破壊の神”がぎょっとした顔で、


「“維持の神”が会うことも出来ずに悶々と見守っている、溺愛しているあいつを半殺しにしたのか!」

「あ、いえ……シズに手を出して、俺が切れて……」

「シズ、お前の責任だ。だから、フィエンドを、頼む。俺の方からも宥めてみるが、期待しないでくれ」


 深刻そうな表情で“破壊の神”がフィエンドを守るよう頼んだ。

 フィエンドはシズの責任じゃないと言おうとして、言葉が発せられなくなる。

 シズが、いつもの不思議な美しさを纏いながらじっとフィエンドを見ていたから。

 その威圧感は“破壊の神”に似ていて、遠くに行ってしまう気がしてフィエンドはシズをその場で抱きしめる。


「フィン?」


 不思議そうに問いかけるシズの声を聞きながら、フィエンドはシズを抱きしめ、絶対に逃さないと心に誓ったのだった。




。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"




 シズの叔父であるウィルは、怒っていた。


「まったくシズは、昔はおじさんおじさんて懐いてきてくれていたのに、恋人が出来たら……自分で出来るからとか、可愛くない事を言うし」


 現在ウィルは一人だった。

 アースレイは彼の弟のブラウニングに連れて行かれて、賊の尋問をするらしいことを言っていたが、ウィルは蚊帳の外だった。


「そんなに頼りないと思われているのか、僕は」


 口に出してみると、本当にそうなんじゃないかという気がしてウィルは不安になる。

 だから余計いらいらして、いつもとはちょっと遠くまで散歩に来てしまったウィル。

 状況が状況なだけにお前も狙われているからと、アースレイはウィルに釘をさしていった。

 それがウィルには余計に気に入らない。 


 そこで、近くの草むらから、ぬっと黒いローブの男達が現れた。

 おそらくは、神殿の者達だが、アースレイを通さずに直接ウィルに会いにきている点で警戒すべき相手だった。が、


「お久しぶりですね、ウィル様。以前の魔物の大量発生の件では、ありがとうございます」

「貴方は、以前都市を滅ぼすような魔物の大群を、僕達に教えた?」

「はい。あの時は我々としても助かりました」

「いえ、僕も半信半疑だったのですが実際アースレイから手紙が来て、実際に現れて……」


 彼らがある日突然ウィルの前に現れて、力をお貸しくださいと頼んできたのだ。

 まさかと思うもののそれは段々と確信に代わり、結局シズと二人で食い止めた。

 そんな彼らが再び自分達の前に現れたというのは、


「まさか、また魔物が?」

「ええ、そのようなものなのですが、今回はとても繊細な手を打たなければならないため、お二人に、一時的に手伝っていただきたいのです」

「そうですか、では、アースレイに……」

「いえ、繊細な状況でしてできるだけ他の方々に知られたくないのです。お願いできますでしょうか」

「それは……」

「貴方様方の安全は保障させていただきます。きっと全てが終われば、アースレイ様も認めてくださるでしょう、貴方の素晴らしさを。頼れる相手だと」


 その言葉はとても甘く聞こえて、そして、彼らは以前教えてくれた人だと信頼できて、だから。


「分った、僕はどうすればいい?」


 そのウィルの答えに、彼らは相変わらずの張り付いた笑顔で、語ったのだった。





。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"




 ぼんやりとシズは目を覚ます。

 夜が明けたばかりらしいと、カーテンの隙間から差し込む光を見てシズは思う。

 思ってもう少しだけ眠っていいかなと、右に転がり眠る方向を変えて……目の前にフィエンドの寝顔があるのに気づく。

 気づいて、いつも見ているのに、いつもよりも綺麗だなと思ってしまう。


「フィン……」


 起さないように小さくシズはフィエンドの名前を呼ぶ。

 瞳を閉じた何処か幼さを感じさせるフィエンドの顔。

 見ているだけでシズは幸せな気持ちになる。

 昨日は色々な事があって、そしてフィエンドの父であるあの“破壊の神”と話して、フィンが、捨てるなよって……。


「……どうしてフィンが言うかな。言うのは、僕の方だったはずなのに。あ、でも、初めは田舎に帰れって何度も言われたっけ」


 フィンが幸せならそれでいいと思っていた。

 だから自分を誤魔化して、フィエンドが昔のように笑ってくれるように、色々とした。

 でも、やっぱり心のどこかで諦め切れなくて、そして幸運な事にフィエンドもシズを求めてくれた。

 これ以上、何を望むというのだろう。


「結局、何もしなかったし」


 ここに連れ込まれたのは二回目。

 でも結局、二回とも何もしなくて、こうやって朝まで一緒に眠るだけだ。

 流石にちょっと酷すぎるかな? という罪悪感がシズをちくちくと苛むが、フィエンドの寝顔を見ているとそんな気持ちも吹き飛んでしまう。


「フィン、大好き」


 小さく呟いて、シズはフィエンドの手に自身の手を重ねて、再び瞳を閉じる。

 もう少しだけ眠っても大丈夫だろうと思い、すぐにシズは深い眠りへと誘われる。

 それから少したって、フィエンドは目を開いた。

 シズの規則的な寝息を聞きながら、フィエンドは深々と溜息をつく。


「……寝たふりをしているのも辛いが、でも、シズが俺の事をどう思っているのかが聞けたから良いか」


 相変わらず、フィエンドの愛おしいシズは瞳を閉じたまま。

 不埒な事を考えそうになって、フィエンドは必死に耐える。

 大体シズは無防備すぎるのだ。こんな、シズを襲いたくて襲いたくてたまらないフィエンドに、好きだとか、こんな風に信頼を寄せるようにフィエンドの傍にいて。

 だから余計にフィエンドは手を出せなくなって、大事だから手を出せなくて、好きだからシズに酷いことはしたくなくて。

 ふとフィエンドはこんなに好きだから、一度抱いたなら、タガが外れてしまうのではないかと思う。

 けれど我慢するという選択肢は無い。


「シズに嫌われない程度に抱くか……出来るか? 俺に」


 でもそうするしかない。シズがただの平民でただの人間であったなら、事は簡単だったのに、と思うも、シズがシズだったからこそ今の自分がいるのもフィエンドには分かっていた。

 だから余計悔しい。

 何時だってシズには助けられてばかりだ。

 守りたいと、フィエンドは願いながら、それから再び瞳を閉じて、結局眠る事ができずに時間が来て、シズを起したのだった。




。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"




 学園に戻ってきたシズとフィエンドだが。


「オルウェル、愛しています」

「エルフィン……私も愛している」


 部屋に戻ってくると、エルフィンとオルウェルがいちゃいちゃしていた。

 やけにエルフィンが幸せそうで可愛らしくなっているが、同時にオルウェルも、とろんとしただらしない顔をしている。

 それを見ながらシズは良かったなと思うけれど、何時声をかけようか迷う。と、


「あ、フィエンドにシズ、どうしたのですか?」

「あ、う、うん。良かったね」


 突然気づいたエルフィンに言われて、シズは奇妙な受け答えをしてしまう。

 それにエルフィンはくすっと笑って、


「ええ。オルウェルはもう僕のものなんですよ。もちろん僕はオルウェルのものですが」


 とろけ落ちそうな幸せな笑みを浮かべて、エルフィンはオルウェルに抱きつく。

 オルウェルはちょっと恥ずかしがって抱きつい耐えるフィンを抱きしめ返して、優しげな笑みを浮かべてエルフィンの頭を撫ぜた。

 そのあまりに幸せそうで、時間も忘れていちゃいちゃしだしそうな二人に、フィエンドは深々と嘆息して、


「あの二人のバカップルは放っておいて、シズ、朝食を食べに行こう」

「ふ、羨ましいかフィエンド」

「……ようやく報われて良かったな」

「……これからこんな夏に近い時期なのに、雪でも降るのか」

「さて、シズ、行くぞ」


 オルウェルの皮肉をあっさり無視したフィエンドがそうシズに微笑みかける。

 けれど無視されるのも気に喰わないのかオルウェルは、


「おい、無視をする気か」

「下らないものの相手をする気がないだけだ」

「この……いたたたたたたた」


 そこで、エルフィンがオルウェルの耳を引っ張った。

 その痛みに、耳を押さえながらオルウェルが、


「何をするんだウェルフィン!」

「オルウェルが相変わらずフィエンドが好きなようですから」

「気色悪い事を言うな! 私はあいつがだいっ嫌いなんだ!」

「だったら僕だけを見て、僕だけ相手にしていればいいんです」


 オルウェルの頬を撫でながら、エルフィンは微笑みながら優しげな声で諭すように囁く。

 けれどオルウェルは長年の経験からエルフィンの怒りを察知した。

 同時にそれが焼餅だと気づいて、その可愛さにオルウェルはエルフィンを抱きしめた。  

 そしてエルフィンも大人しく抱きしめられている。


 そんな二人を、良かったなー、と見ているシズをフィエンドは捕まえて、朝食をとりに行ったのだった。



。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"



 教室へと移動する最中、シズは叔父のウィルに会う。


「お昼休みに、二人っきりで話したい事があるんだけれど、いいかな?」

「うん、分かった」


 そんな何気ない会話。

 シズはフィエンド達に事情を話して、フィエンドも相手がウィルだからと油断をしていたこともあるのだろう。

 それをフィエンドが後悔するのは、その少し後の事だった。




。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"





 授業中、エルフィンがおかしかった。

 やけににこにこと幸せそうで、授業も上の空である。

 その様子から皆が気づいたらしい。

 あのオルウェルとエルフィンが、ようやくくっ付いたらしいと。

 けれどあまりに幸せそうなエルフィンの様子に、誰も聞く事も出来ずにいる。

 やがて授業が終わり、シズが、


「エル、授業が終わったよ?」

「え? あ、そうですね……」


 はっとしたように我に返るエルフィン。

 それでもすぐに、ぼんやりとしてしまうエルフィンにシズは、


「大丈夫? エル」

「いえ……なんだか幸せすぎて夢を見ているみたいだなって」

「そうなんだ。でもこれは夢じゃないよ?」

「そうですね。そう……」

「あ、フィンとオルウェル達が来た。行こう!」


 そう、シズはエルフィンの手を掴み駆け出す。

 そしてフィエンドの前にやってきて、シズはそのままフィエンドに抱きついた。


「やっぱり、フィンと一緒だと幸せな気持ちになる」

「俺もだよ」

「ずっと一緒にいようね」

「そうだな」


 フィエンドが微笑みシズを抱きしめる。

 このカップルはいつもこうだから良いのだが……一方、オルウェルとエルフィンはといえば。


「オルウェル、今更何を恥ずかしがっているのですか」

「いや、人前でこう……」

「フィエンドとシズはやっているでしょう! どうして僕が抱きつこうとすると、避けようとするのですか?」

「うう……こう、私のイメージというものが……」

「そうですか。ふーん、オルウェルは、その程度の感情でしか僕の事を見てくれないんですね?」


 そこで、ふわりと優しげな人を魅了する笑みを浮かべて、エルフィンはオルウェルに告げた。

 けれどこの微笑の裏でエルフィンが機嫌を損ねているのをオルウェルは分っていて、一瞬躊躇しながらも、思い切って目の前にいるエルフィンを抱きしめた。

 エルフィンの背中に回した手がぷるぷるしているが、それでもオルウェルが自分から抱きしめた事には変わりなく、エルフィンがほんの少し見上げるとオルウェルが顔を真っ赤にしているのが分る。


「こ、これでいいか?」

「ついでにキスしてもらえると嬉しいのですが……」

「つ、ついでで、エルフィンにキスなんか出来るか!」


 叫んだオルウェルの表情を見て、それが真面目に答えているのだとエルフィンは気づく。

 キス程度でこんなにむきになって。

 もっと凄い事を色々していたのに、まったくオルウェルはとエルフィンは小さく笑って、


「オルウェルは可愛いですね」

「……エルフィン。私は何処からどう見ても可愛いなんて柄ではないはずだが」

「オルウェルは可愛いですよ? 本当にいつもどう料理してやろうかと思っているのですから……冗談ですよ?」


 真っ赤だったオルウェルの顔が真っ青になる。

 そんな様子もエルフィンは可愛く見えて、そのままぎゅうっとオルウェルに自分からエルフィンは抱きついた。


「ずっと僕を捕まえていて欲しい」

「……もちろんだ」


 その言葉に、エルフィンは微笑む。

 そんな二人を見つめるシズとフィエンドだが、そこでフィエンドが、


「シズ、そのバカップルは放っておいて、食事に行こう。ウィルさんと話があるんだろう?」

「フィエンド、お前に言われたくはないぞ」

「シズ、いくぞ」


 相変わらずフィエンドはオルウェルを、どうでも良いように適当にあしらう。

 それにオルウェルが牙を向くのもいつもの事で、それを見て、エルフィンがオルウェルをなだめて……シズは幸せだと思う。

 このまま続いていけば良いけれど、また巻き込まれる。けれどここで、出来る事なら、


「……これで終わりにしよう」

「シズ? どうした?」

「うんん、ウィル叔父さんどうしたかなと思って」


 そう笑って誤魔化すシズに、フィエンドは不安を覚えるも、その時はシズが幸せそうに笑っているからそれ以上追求しなかったのだった。




。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"




 指定された場所にやってきたシズ。

 そこにウィルは、ぼんやりと空を見上げていた。


「ウィル叔父さん?」

「あ、シズ、来たんだ」

「うん……誰と会ったの?」

「ん? どうして分るんだい?」

「嫌な物の残渣が見えるから」


 その言葉にちょっとウィルは黙ってから、


「シズ。前に村にいたとき魔物を大量に倒しただろう?」

「うん、アレは凄かったね」

「それを、僕はある人達から聞いていたんだ」

「……そうなんだ」

「その人達が、再び危機が迫っているから、手助けして欲しいらしい」


 そのウィルの言葉にシズは、嫌な予感を覚える。


「ウィル叔父さん、アースレイ学園長達に話した?」

「いや、事が繊細らしくて、二人だけで内密にって」

「怪しいと僕は思うんだけれど」

「でも! 僕だって力があるんだ、なのにいつまでも蚊帳の外じゃないか!」


 そうウィルが叫んで、その表情からシズは随分とウィルが追い詰められているようだと気づく。

 アースレイ学園長はなにをやっているんだと思いつつ、シズはウィルを見上げて、


「やっぱり、そんな重大な事を僕達二人に頼んでくるのはおかしいよ。様子を見たほうがいい」

「……嫌だよ。アースレイがいなくちゃ、僕は何も出来ないみたいじゃないか!」


 駄々をこねるウィルに、シズは何かを言おうとして、そこで甘い香りがするのに気づく。

 甘く、けれど気分の悪くなるような、むせるような香り。

 目の前にいるウィルも、それを感じ取って辺りを見回す。

 そこで目の前が霞み、慌ててそれをかがないようにと思うもすでにときは遅く。


 ウィルとシズの意識は、そこで途切れたのだった。







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