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きっとこれが本質

 それからすぐに学園に戻ったシズ達だが、出迎えたリノとロイ。そこでリノが、


「シズ、良かった、無事だったんだ! 突然いなくなってこんな事になって、それで授業も休校で」

「そうなんだ」

「うん、フィエンド様達が暴走をしないようにって」


 チラッとシズがフィエンドを見ると、フィエンドが優しげに微笑みシズをぎゅっと抱きしめた。

 それにシズがくすぐったそうに、


「フィン、さっきからずっとこう」

「……シズが傍にいるからそうしたくなって何が悪い」

「……嬉しい、かも」


 そこでいちゃいちゃしだすシズ達に、リノはお邪魔かと思いながら、傍にエルフィン達がいるのを見て、どうすべきか戸惑ったようだった。

 リノもシズをエルフィンが連れ去った事を知っているからだ。

 だからシズは、


「エルフィンはもう大丈夫なんだよ」

「え? でも……」


 リノがロイを見上げる。言うべきか躊躇しているようだった。

 そこでロイが、思い出したかのように、


「……オルトネイという長老が死んだらしい。その件でフィエンド様の兄君とアースレイ学園長が今話しているらしい」

「オルトネイ様が?」


 そこでエルフィンは驚いたように声を上げた。

 そしてエルフィンはシズを見る。


「……シズ、ひょっとして……」

「僕は何も知らないよ」


 困ったようにシズは笑う。

 本当の崩壊はもう少し先だと思っていたから。

 もっと違う形で壊れると思っていたから。

 けれど、あそこは“闇”の気配が多くて、確かに魔物呼ぶほどの何かが行われていて……そうシズが考えていると、そこでフィエンドが、


「それで、その長老は魔物に殺されたのか?」

「いえ、何者かに暗殺されたようです。ただ、それが何処の誰がやったのかが分らないのです」

「……見知らぬ勢力があると?」

「らしいです。ただそこまでしか俺も知りません。フィエンド様に武器等を渡さないようにと念を押された時にフィエンド様の兄君に少し聞いただけですから」


 ロイの言葉にフィエンドは少し考えてから、


「分った、ありがとう、そしてリード兄さんに今すぐ行って話を聞く。何時までも蚊帳の外では……シズを守れないかもしれないから」


 フィエンドはそう言ってシズを見る。それにシズは、心配しすぎだよといいたくて、けれどフィエンドが真剣そうな表情だったので、言い出せなかったのだった。




。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"




 フィエンドの兄であるリードとアースレイ、そして傍にウィルが何故かロープでぐるぐる巻きにされていた。

 むーむー呻くウィルを抱きかかえるように押さえつけながらアースレイは、


「確かにそういった計画はこちらにもあったが、こちらが手を下す前に死んでいた」

「こちらも同様です。それに魔物が呼び出されて、否、呼び出せるとは知りませんでした。あれは自然に発生し、予知能力者にしか捉えることのできないものだとばかり」


 その険しそうなリードの答え。

 それはそうだろう、これでは好きな場所に魔物を誘致できるのだから。

 その今までにない危険性に、アースレイも険しい顔をしながら、


「だが現実に呼び出された。そして予知能力者はそれを予知しなかった、何故か」

「予知を妨害したと?」

「……予知は“破壊の神”の力による。その壊れた隙間を魔物達の……“闇”が埋めたとしたなら、見えなくする事も可能かもしれないのだが」

「だが? 他に予知が見えなくなる可能性があると言う事ですか?」

「……以前の神殿との戦いで、予知がことごとく外れた。そう、予知が壊された。それに何か思い当たる節はないか?」

「……いえ」

「そして彼らはフィエンドを欲しがっていた。その理由に心当たりは?」


 リードが黙る。フィエンドは、“破壊の神”の血を半分引いている。

 けれどその事を話すかどうかと言われれば、フィエンドを危険にさらしたくないとブラコンの兄は思っていた。が、


「“破壊の神”の血を半分引いているからか?」

「! 何処でそれを!」


 何処か焦燥感に満ちたリードに、そこでアースレイは初めて気の毒に思った。そしてぼそりと、


「今神殿で“破壊の神”が久しぶりに現れて、自慢をしていた。それで確証を得た」

「……」


 リードは絶句した。そんな理由で隠しておこうと思った事がばれるとは思わなかったのだ。

 そしてそんなリードに、多少同情しつつアースレイが、


「……気の毒だとは思うが、諦めろ。そのうちお前達の父親にも会いに来るらしいからそのとき文句を言ってくれ」

「……確証を得たということはその前から知っていたと?」

「お互い探り合いだから当然だろう。それで、フィエンドがそれをやった可能性は?」

「フィエンドが暴走しないように私がきたのですから、フィエンドは何もしていません」

「知られずに手を出す方法は?」

「魔力には人一倍敏感ですから」


 それは隠しながら何かを行えないという事。つまりフィエンドではない。

 そうなってくると、得体の知れない相手が更に得体の知れなさを強くする。

 そこでウィルがぶるぶる震えるので、アースレイが首筋にキスをする。


「まったく、ウィルはもう少し大人しくしろ。シズは無事に戻ってきたのだから」


 そんなアースレイの様子にリードが、


「こちらの方がシズの叔父の?」

「そう、私の伴侶だ。だが、シズが攫われたと聞いて神殿に殴りこみをかけようとするものだから、私も色々大変だった」

「……シズという少年は愛されていますね」

「そうだな。だが嫉妬してしまいそうになる」

「そうですね」


 ブラコン発言なリードに、アースレイはふうと息を吐いてから、


「それで、オルトネイが暗殺された件だが……ついでに、丁度きた様だから、彼らにも話しておいた方が良いだろう。敵が未知でもあるのだから。そして、フィエンドも狙われていると」

「やっぱりフィンも狙われているのですか!」


 シズが駆け込んできて、そしてぐるぐる巻きのウィルを見る。


「……ウィル叔父さん、どうしてそんな格好を?」


 それにアースレイは溜息をついて、


「お前を助けに行くと煩くて」

「でも、僕一人でも逃げ帰ってこれるよ?」


 その言葉に、ウィルはしゅんと大人しくなった。 

 これで暫く静かだなと思いつつ、アースレイは今までの経緯を話す。

 シズ、フィエンドと、ついでにいたオルウェルとエルフィンにも。

 一通り聞いてシズが、


「確かに、フィンに手を出すような事を言っていた、そうだよね、エルフィン」

「はい、フィエンドも神殿に必要で、神殿にいるべき存在だと。あとで、“破壊の神”に会いましたから、その時にフィエンドが息子だと聞きました」


 そこで、珍しくエルフィンがふわりと笑う。

 その様子にオルウェルが不安を覚えるも、そこでアースレイが、


「“破壊の神”に会ったと? 確かに気さくで人間味のある神だが、威圧感の恐ろしい神だとも聞いているが」


 エルフィンは、シズが物怖じせず、そして“破壊の神”とも知り合いのようだった事を思い出すも、話すのをやめる。

 それは多分シズの望まない事だから。

 だからほんの少しはなしを変えて、


「予知能力者である僕が、“破壊の神”も末裔であったために、匿っていただけたのです」

「そう、か。それで、一応はオルトネイが全ての黒幕であったらしいという話で落ち着いている。そしてオルトネイは何者かに殺された」


 ちらりとアースレイがフィエンドを見ると、


「まだ終わっておらず、俺やシズが狙われていると?」

「だから気をつけて欲しい、得体の知れない連中に君達と力が奪われるのは、考えるだけで空恐ろしい」

「分りました。一難去ってまた一難か」


 嘆息するフィエンドに、シズはそこで笑って、


「そんな事ないよ。良い事もあったよ」

「何がだ?」

「エルフィンが、オルウェルからもう離れられないってこと」


 その言葉にエルフィンに視線が集中する。

 けれどそんなシズに、エルフィンはといえば相変わらず微笑みながら、


「……襲いますよ、シズ」

「照れ隠ししなくても良いよ、エルフィン。もう、エルフィンを縛っていた、逃げ出せなかったものは何もない」


 何かを言い返そうと思ったけれど、エルフィンは言い返せない。

 今なら自由で、だったら、オルウェルの同室者になって、二人っきりになる事だってできないかと、欲が出てしまったから。

 だから、勇気を振り絞って、


「……オルウェル、これから毎晩、僕の相手をしていただけませんか」


 まだ怖くて、遠回しに言ってみるエルフィン。

 けれどそれにオルウェルは絶望的な表情になり、


「ゆ、許してくれ。流石に私の体が持たない」


 そんなぷるぷる震えだすオルウェルにエルフィンは、


「……貴方は本当に……ふふ、ですが少しの間僕はオルウェルを味わう事ができなかったので、楽しみにしていて下さい。 オルウェル」

「ま、待て、どうしてエルフィンは怒っている!」

「それが分るのに、どうして貴方は……大丈夫ですよ? 僕の体で無ければいけない体に仕込んであげますから、これからは時間がたっぷりとありますから、ね?」


 その笑みがあまりに壮絶で、オルウェルはそれ以上何もいえなくなってしまう。

 そしてそれを見ていたシズは、とりあえずオルウェルはマゾじゃなかったんだな、と失礼な事を考えつつ、この二人はこうやって関わっていくのもまた良いのかもしれないと思う。そこで、


「とはいえ今日はここまで。話はしたからもう良いだろう、私もする事があるから」


 アースレイがお開きにするといって、ウィルを連れて行ってしまう。

 どたばた隣の部屋で聞こえるもすぐに静かになる。

 その隣の部屋に続くドアを一瞥してからリードも、


「父様達に話してくる。フィエンドも、また、何かあれば手助けするから」

「ありがとう、兄さん」

「可愛い弟だからな。……フィエンドを頼むよ、シズ」

「はい!」


 その元気の良いシズの様子を見て、複雑な思いをリードは駆られる。

 確かに弟を取られるのは嫌だと言うのもあるのだがフィエンドが選んだのだからそれで良い。

 けれど、このシズという少年は未知数で、おそらくは……。

 とはいえ、リードたちは今はきっと見守るしか出来ないだろう。

 そしてリードがその場を去って、フィエンド達もまた自分達の部屋へと戻ったのだった。



。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"




 部屋に戻ったエルフィンは早速オルウェルをベットに押し倒したので、フィエンドが不可視の壁を魔法で作る。

 ついで、シズをベットに連れ込んでぎゅうと抱きしめる。

 そんな絶対に放さないと守るように抱きしめるフィエンドに、シズは苦笑して、


「フィン、苦しいよ?」

「……シズ、わざと攫われたのか?」


 その問いかけに、シズは躊躇したように瞳を揺らして、こくりと頷いた。


「うん、エルフィンがこのままだと良くない事になるし……その連鎖はきっと、フィンにも及ぶから」

「俺のため、か? それともエルフィンのため、か?」

「……エルフィンは、友達だよ?」

「友達のために命の……いや、シズが身を危険に曝す必要があるのか?」

「もともと僕も狙われていたから、ここで切っておくのも良いかもと思ったんだ」

「そうか……ならもう大丈夫なのか?」

「分らない。“闇”は深いから」


 ぼんやりとした瞳で呟くシズ。

 それが何時にも増して鮮烈な美しさを湛えていて、けれどその分またフィエンドの腕からいなくなってしまいそうでフィエンドは不安を覚える。

 そんな逃さないと抱きしめるフィエンドに、シズはほんの少し頬を染めて、


「心配させてごめん」

「……俺は、シズを守りたい。こんな事がもうないように閉じ込めてしまいたい」

「僕の事、閉じ込めたいの? フィンは」

「……誰にも見せなければ、知られなければ、きっとシズに手出しをしてこない」


 そうすればシズは、何も気にする事なんてない、取られる不安も、シズが傷つく事もないと、フィエンドは囁く。

 けれどそれにシズは微笑んで、


「でも、フィンの事あの神殿の人は求めていたでしょう? フィンに手出しをしたなら、僕は容赦しないよ?」

「……俺は、我慢した」

「フィン?」

「前にシズと一緒に実家へと帰った時に……俺も狙われている事を聞いていた。そして、シズを助けるために俺は、神殿を更地にしようとした。でも、兄さんが来て、止められて……そこでふと気づいた。もしも俺も狙いなら、俺が囚われたなら……更にシズを動けなくしてしまう」

「その時は僕が助けるから、大丈夫だよ?」

「俺は、シズを守ろうと思って……それだけの力があると思って……」

「フィンは強いから。でも優しいから、辛いんだね」


 シズがフィエンドを抱きしめ返して背中を優しく撫ぜて、フィエンドは、


「……前も言ったが、俺は優しくない」

「優しいよ、どうしてそういう事を言うかな。……フィン、僕のフィンの悪口を言っちゃ駄目だよ? でないと僕は怒るよ?」


 笑ってシズは、フィエンドにキスをする。

 そうすればもうフィエンドは何もいえなくて、今シズが傍にいるからそれだけで良いとフィエンドは諦めた。

 そこでじいっとシズがフィエンドを見て、


「フィンは、“破壊の神”には、そこまで似てないんだね」

「……会ったのか?」

「うん、僕の事、フィンの“彼女”だって言っていた。そのうち会いに来るかも」

「そうか。……俺は、“破壊の神”に似ていた方がシズは良かったか?」


 “破壊の神”は人に並ぶもののいないほどに美形だという。

 その方がシズは嬉しいのだろうか、と、ふとフィエンドは好奇心で聞いてみただけなのだが、そこでシズが今まで見た事がないくらい変な……嫌そうな顔をした。


「シズ?」

「……あのヤリチンみたいにフィンがなる? いや、でも、フィンはそういえば色々な子と、そもそもエルフィンとしていたし……」

「シズ、流石に“破壊の神”をそう言うのはどうかと思うぞ?」

「だって本当に……まさかフィン、知らず知らずに誰かを……いや、何人も……」


 顔を青くして焦りだすシズ。

 そもそも“破壊の神”が三柱の中で人間に手出しをよくしている事は普通は知らない、秘された事なのだが……それよりも、誰にでも手を出していた事は幾分かは認めるが、節操なしといわれるのはフィエンドには心外だった。

 ずっとシズ一筋で、それが忘れられず、今だってシズだけを愛しているのに。

 この自分がだ、とフィエンドは思って、それを疑うシズが許せなくて、


「俺はそんな事をしていないよ」

「そ、そう、でも」

「だから、シズだけだから安心しろ。そして、そうだな……」

「え、えっと、フィン?」

「これから他の奴に手を出すか心配だろう? シズは。だからずっと俺の相手をしてもらおうか」

「フィ、フィン、えっと……するのはもっと後……」

「全部俺の気分次第だ。そう、シズがどんなに抵抗してもするから……諦めろ」

「でも、だって、僕は普通なのに……フィンは僕を選んで、だから……」


 焦って俯くシズに、フィエンドは、嫌だといわれなかった事にほっとしながらも、普通というその言葉にフィエンドは、


「シズは綺麗だよ。俺にとって誰にも代え難いものだ」

「……フィンはおかしいよ」

「それはシズだってそうだ。しかも“破壊の神”の美しさは、見るものを虜にすると……どうしてそんな変な顔をするんだ、シズ」

「……自然にこうなっちゃうんだ、仕方がないよ。でも、フィン達が神々について、どういった知識があるのかは知りたいな」


 そこでシズは面白そうにフィエンドを見る。

 その表情は、ふと垣間見せるあの美しい表情に似ていて、フィエンドを不安と共に目を離せないほどに魅了する。

 けれどそれに対してフィエンドは、シズに対していつものしているように優しげに、


「この世界の神は、“破壊の神”と“維持の神”だと言われている。そしてその力を借りて、俺達は魔法を使えるとされている、ここまではよく聞く話だ」


 それに頷くシズ。

 それを見ながら、フィエンドはきっとこの話はしておいたほうが良いと思う。

 だってシズは特別な存在だから。

 フィエンドのみという意味ではなく、それ故に神殿が求めるほどに。


「けれど本当はもう一人、神がいる。それが、“創造の神”」


 その言葉を聞いた瞬間、シズの中で何かしっくりとくるものがある。

 パズルのピースが埋まっていくようなそんな感覚。

 もう少しその話を聞きたいと思って、けれど同時にシズは怖い感覚を覚える。

 だってシズは、普通の人間のはずだから。


 そんな躊躇に苛まれるシズ。

 そして続きをフィエンドが話そうとした所で、フィエンドの張った不可視の壁が壊れて、オルウェルが逃げてくる。


「も、もう無理だ。頼むエルフィン、許してくれ」

「……オルウェルがいないのが、触れられないのが、僕はもう我慢できないと言っているのに、どうしてオルウェルは逃げるのですか?」


 悲しげに情熱的に口説くエルフィンだが、それにオルウェルは一瞬言葉が詰まるも、すぐに震えながら言い返す。


「朝までこれをされるのは私の体がもたない!」

「オルウェル……逃げられると思っているのですか? 僕から。貴方が嫌だといっても、僕は逃しませんよ?」

「う、く……エルフィンが絶倫すぎて、私の体では持たない! だから手加減を……」

「残念ですね、もう僕は自由ですから、好きなだけオルウェルをもらうことにしました」

「ゆ、許し……そ、そうだ、美味しいお菓子があるからそれでも食べないか?」

「ふふ、確かに僕はお菓子も好きですが、一番の好物はオルウェル、貴方なのですよ? オルウェルはとても美味しいですからね、他の誰かがつまみ食いをしたようですか、そんなほかの誰かに貴方を上げるつもりなんてありませんよ? ああ、そうです、誰かに食べられてしまう前に……全部頂いてしまいましょうか」


 それにオルウェルが悲鳴を上げて部屋を逃げ回る。

 相変わらずな二人に、フィエンドが嘆息して、それにシズがくすくす笑って、


「もう寝ようか。僕も疲れたから」

「そうだな」


 そうフィエンドの答えを聞いてシズはフィエンドにお休みのキスをする。

 この騒がしさが、ここに来ての日常で、シズにとってはこのままでいて欲しいと瞳を閉じる。

 睡魔はすぐ二人を襲い、深い眠りへと誘う。

 そしてオルウェル達といえば、結局オルウェルがあまりにも逃げ回るので、エルフィンが根負けして、シズ達のように抱きしめて眠るだけでエルフィンは許したのだった。




。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"




 次の日の朝、シズはフィエンドを起そうとしてキスをし、そのままぎゅうと抱きしめられたり、エルフィンは朝起きてむらむらしたのでオルウェルを美味しく頂こうとして失敗したりしたのだが。


「シズ、どうしてオルウェルは僕を受け入れてくれないのでしょう」


 さめざめと泣きながらエルフィンはシズに愚痴をこぼす。

 それを見ていたオルウェルが、


「そ、そんなつもりは……」

「良いんです、所詮僕なんてオルウェルとは身分違いで、オルウェルは僕の事なんて遊びだったのです」

「い、いや、待て……」

「そうですよね、オルウェルにふさわしい相手は僕ではなかったと。そうですよね、僕が知らない間に知らない誰かと関係を持っていたなんて」

「え、と、エルフィン、勘違いしているようだが……」

「……やっぱりオルウェルは、僕に二度と逆らえなくなるまでして、僕に逆らう事の恐ろしさを植え付けて逃がさないようにするのが一番良いのかもしれませんね」

「エルフィン……冗談は」

「冗談に聞こえましたか? でも僕は何時だって本気なんですよ? 本気で貴方が好きで愛しています、オルウェルだけを」

「エルフィン……」

「だから、何処にも逃げられないようにして貴方を僕だけのものにしたいと思う気持ちをさえて、抱いてもらうだけで我慢していたのに、酷いです」


 オルウェルは、どうしようかと思った。

 こうやって口に出して愛されている事をエルフィンに言ってもらえるのは、以前と違いしがらみがない分本心だと思うも、体が持たない。

 と、そこでフィエンドとオルウェルは目が合う。

 ふっとフィエンドが馬鹿にしたように笑い、


「恋人の想いに答える事も出来ないのか?」

「く……ふふん、未だにシズを襲う事すらできないお前に言われたくはないな、フィエンド」

「俺はシズが大事だからこうなった。そしてシズは望んでいるからそれを俺は答える事が出来る、限界はあるが」

「だが、手を出せていない事に変わりはない!」


 そんな子供じみた優越感に浸りかかるオルウェルに、傍にいたエルフィンは嘆息してからフィエンドに抱きつかれているシズの傍へいき、


「所でシズを襲っても良いですか? なんだか最近特に綺麗になってきたように感じてとても美味しそう……」

「「駄目だ!」」


 オルウェルとフィエンドが同時に叫んでオルウェルはエルフィンの手を引いてぎゅっと抱きしめる。

 エルフィンも暫く大人しく抱かれているけれど、すぐに、


「……もっと僕の体をオルウェルに攻め立てられたいのに。もうオルウェル以外感じられなくなるまで、オルウェルのものだと匂いが移るくらいまで抱いて欲しいのに」

「エルフィン……」

「僕は貴方ただ一人を選びたいのです。それとも、こんな僕は、嫌いですか?」

「そんな事はない! 私はエルフィンがエルフィンだから好きなんだ。だから、エルフィンが望むのなら……してもいい」


 そんなエルフィンの切ない願いに心を動かされたオルウェルだが、そこでエルフィンはにっと悪い笑みを浮かべた。


「……言いましたね?」

「え?」

「自分で言った事には責任を持って下さないね、オルウェル。今日は楽しみです」


 エルフィンがくすくす笑い、オルウェルが顔を青くする。

 こうやってエルフィンに振り回されるオルウェルだが、それでも何処となくし合わせそうだなとシズは思ったのだった。



。" ゜☆,。・:*:・゜★+★,。・:*:・☆゜"



 そんなこんなで食堂にて、朝食をとり、授業へ。

 魔法を外で行う授業が入り、シズとエルフィンはそちらに向かったのだが、


「おい、誰か止めろ!」

「なんだ、どうしてこうなった!」


 悲鳴が上がる中、シズはシズでぼうっとしていた。

 そもそも授業の最中に、以前消しゴムの欠片を投げていた“神殿”の彼らだが、それがシズに因縁をつけてきたのだ。


「そもそも、こちらに戻ってこられるなんて、お前は“神殿”のものと繋がっていたんじゃないのか?」


 ざわりというざわめき。

 けれどそんなやっぱりと呟く者達もシズには見えていた。

 “神殿”だ。

 それもとても闇に近い部類の彼らだ。

 けれどそれを聞きながらシズはぼんやりと思った。


 うるさい、と。


 その感情に触れた精霊達が呼応するように動き始める。

 遊ぶかのように動き出す精霊達の力で、地面がぐにょぐにょ曲がり、そこら中で小さな竜巻がおき、木々は枝を伸ばす。

 それに生徒たちが巻き込まれる。

 幸いにも、うるさい赤子をあやしてやろうといった雰囲気が強く、生徒達は精霊達に弄ばれている。

 そこら中で悲鳴が上がる中、エルフィンとシズは巻き込まれていなかった。

 なので、ぼんやりとして何処か無表情な、けれど、時折垣間見せる神秘的な美しさを振りまいているシズにエルフィンは、


「シズ、そろそろ止めてあげませんか?」

「……そうだね」


 シズが呟くと、途端に精霊達は大人しくなり生徒達は地面に怪我をしないよう落とされた。

 ちなみにこの時間の魔法の授業担当の教師も巻き込まれて、のびてしまいその後自習となってしまった。

 やりすぎたかなとぼんやりとシズは呟いて、エルフィンはシズの様子がおかしいと気づく。

 いつもの温かい感じではなくて、もっと怖くて綺麗な……透き通った冷たさと威圧感がある。

 けれどそれは今までシズに感じていた違和感の理由をエルフィンは分ってしまった。

 きっとこれがシズの本質なのだ。


 そこで、シズとエルフィンは、事情説明という形で、アースレイ学園長に呼び出されたのだった。



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