それぞれの休日~レイクの秘密
レイクはしばし考えて、父親に一通り今までの出来事を話す。
その話を聞き終わった父親は、
「それで、“始まりの神”は目覚めているのか?」
「どうでしょう。まだ普通の人間だと思いこみたいように、僕には見えましたが……というか、普通なのに変わっているようなそんな状態です」
それにレイクの父は沈黙する。
この世界の隙間から入り込んでくる魔物。
その凶悪さは、その魔物の牙等が高価で材料になるといっても割に合わない。
そしてこの世界の三人の神々の内、もっとも強い一人の神がが行方不明なのだ。
その神によりこの世界が作られ、けれどその存在はずっと秘されて来た。
理由は幾つかある。
その神がもっとも強く、そして干渉してこない事、否、干渉しても皆気づかない事
また、作られたものは、初めから目の前にあるものには、人は関心を向けない事。
あるものは存在しているとしか認識できないから、それが存在できる“維持の神”、壊される“破壊の神”に意識がむく。
それ故に自然と忘れ去られ、消えてしまった。
更に加えるならば、その力が恐ろしく、人々が目を背けた部分もあるのだろう。
それが今のレイク達の見解だった。
現に、彼の力は全てをひっくり返す。
そこで、レイクの父親が口を開いた。
「以前の、凶悪な魔物の襲撃。その予知をひっくり返したその……シズ、という少年はどうだ」
「そうですね。一応、ウィルという、アースレイの思い人がやった事になっていますが……死ぬはずと予知された彼が今も生きている」
「そして、他にも予知をひっくり返していると?」
その問いかけにレイクは方をすくめて、更に付け加える。
「予知にも現れないそうです」
「それは、この世界そのものであるから?」
「だろうという話です。それに、その予知に続く道を作り変えている可能性もあります」
「それは、私達が、選択しているつもりで、選択をさせられているという事か?」
何処か蒼白な父に、レイクは困ってしまい、以前イルも交えて聞いた話も含めて思い出して、
「うーん、イルから聞いた話も含めてなのですが、あの、シズという少年は同じ力を持っていて、けれど彼自身が望まず精霊達に話しかけないそうです。けれど、彼が望めば精霊達に影響はするでしょうね」
「予知に現れる……予知として存在できる事象に向かい、その切っ掛けとなる些細な事象、動きを変更して、推定される結果の変更……予知能力者達、“破壊の神”の力の先祖帰りとはまた違った方法か」
なるほどと頷く父。
ただ、レイクには思うところがある。
「“破壊の神”は“始まりの神”と相性が悪そうな気がするのですが、なんだか仲が良いですね」
「さて、人だから好きなだけかもしれない。“始まりの神”は人が好きだから」
「まあ、“破壊の神”と関係があるからといって仲が良い訳ではありませんからね。予知能力者達のように」
予知能力者達の傲慢さと残酷さはレイクは嫌いだった。
その中で、エルフィンはまだその傾向が少なく、けれどだからこそ、彼らに馴染めない部分もあったのだろうと容易に想像出来る。
そう心の中で考えたレイクだが、
「……その件だが、追い落とされたあの、エルフィンだったか?」
エリフィンの名を聞いて、レイクの顔が険しくなる。
「……彼がまた?」
「執着している者がいる。そして、彼以外の予知能力者の予知が、以前全て壊されただろう? フィエンドによって」
その話に、レイクは少し彼の様子を思い出して、
「彼、そのことに気づかれていないと思っているみたいですよ?」
そうレイクが言うと、レイクの父は目を瞬かせて、ああと思い出したようだった。
「多分フィエンドは、自分が“破壊の神”後を半分引いている事を知らないのだろう。彼の父親が確かまだ話さないと言っていたから」
「本人から?」
「もちろん密偵からだ」
それはきっと彼の家が、それこそ家族くらいしか知らない特別な話。けれど、
「最近シズが来てからフィエンドの調子が良さそうなんですよね……」
「確か、昔、彼がいた村にフィエンドはいた事があるな」
「ええ、シズと出会ったのもその村ですね。そして、あの二人の関係は、とても危うい」
二人の関係、痴情のもつれの面倒くささを思い出して、大きくレイクの父は眉を寄せるも、
「……どちらにせよ、二人にはこちら側に捕まえておく必要があるだろう。あの二人はこちらの切り札だ。既に神殿の、こちら側でない方に、“維持の神”の子も、予知能力者達が捕らえられている」
「“維持の神”の子は、アースレイの義弟が執着していますから、時間の問題でしょう」
「……そうだな」
「しかし、何であのアースレイ達といいフィエンド達といい、あんななんですかね」
「昔からそういうものだ。他に、何かあるか?」
「神殿が別のものに喰われているらしい事です。神殿内が別のものが見え隠れしているので、特に注意が必要かっと」
「アースレイ達にも話しておく」
「はい、では以上で?」
「ああ。それでイルはどうしているのかね?」
「眠っていますよ、僕のベッドで」
そこで始めてレイクが本当に心の底から嬉しそうに笑う。
その様子にレイクの父である、この国の王もまた目を細め、微笑んだのだった。
部屋に戻ると、イルが起きていた。
「起きていたの?」
「うん、もうすぐレイクが来る気がしたから」
そんなイルを抱きしめて、レイクはキスをする。
この意味も、そしてレイクがイルを抱く意味も、イルは良く分っていない……と思っていたのだが、困った事に分っているらしかった。
なのに、シズの事は好きらしい。
「イルは僕とシズ、どっちが好きなんだい?」
「加えて精霊も好きだよ?」
「それは全部同列なの?」
「うん、だっていつも傍に居るから。でも、シズは特別だけれど」
「イルと同じだから好きなの?」
「同じ……初めは同じだと思ったけれど、でも、違うかも」
「そっか……でも、イルが僕のことを好きならいい」
そう答えて、イルの服にレイクは手を差し込んでいく。
肌に手を這わすだけで、イルは小さく震える。
イルとレイクであったのは、幼い頃の森の中。
あの時精霊達と話すイルは妖精の様で、初めは本当に妖精かとレイクは思った。
そして人と知り、捕まえた。
精霊達と語り、人である事を忘れそうなイルを引き止めて、レイクは自分のものにした。
レイクはイルを外からはそんな風には見えないけれど、溺愛して、その体も重ねている。
けれど今一イルは分っていないように感じる。
逃げられないようにレイクは囲って、なのにイルは自由だと思っている。
時々、イルの事が分らなくなる、それがレイクには怖い。
こんな風にイルがレイクの腕の中にいるときだけ、レイクはイルが自分だけのものだと確信できる。
「イル、愛してる」
「僕も、レイクの事を愛してる」
何処までその言葉の重みを分っているんだろうと、レイクは時々不安になるも、仕方がない。
惚れてしまったレイクの負けなのだ。
そう思いレイクはイルに再びキスをしたのだった。




