07.
「キヨさん、迷っても俺探せないから」
「ちょ、真田君。待ってよ」
結局、第二階層に繋がる道は、真っ暗な穴だった。
招きよせるように開いた扉の奥で、地下貯蔵庫のような、床の取っ手を持ち上げると黒々とした穴が覗く。
何も見えない先からは、けれど此処とは違う風の匂いがしていた。
「うーん。おにぎりでも転がしてみようか?」
「寧ろ、兎追いかけるなよ」
敢えて日本の昔話をあげると、真田君はさも可笑しそうに有名な西洋童話を持ち出して笑う。
「それって、真田君が兎ってこと?」
「勘弁してよ、キヨさん。兎っていうなら俺よりは、あいつだろ」
「あいつって、竜飛さん?」
もう一人の高校生アルバイトである少女の名をあげると、真田君は面倒くさそうに肩を竦めた。
「そ。ほら、良いからさっさと行くよ、キヨさん。時間がもったいない」
そう言って真田君はあっさりと穴に飛び込むから、僕も慌ててその後に続いて。
暗闇を抜けると、そこはジャングルだった。
「凄い所だね。ジャングルだよ」
うっそうと茂る木々を見上げていると、先を行く真田君が呆れたように僅かに振り返る。
「あのさ、キヨさん。ジャングルってのは、熱帯地方の森林なんだけど。つる性植物が混じった熱帯雨林を指すわけ。こんな風に、妙な森じゃないって」
真田君が幹を叩いたのは、良く見れば杉の木。
その隣には檜に楡。
向こうの方にはバオバブも見える。
「なんていうか、」
「「夢の森」」
期せずしてハモった言葉に、真田君が苦笑した。
「キヨさんの思考って単純だよね」
「酷いなぁ」
「じゃあ、そんなキヨさんに質問。この森の違和感を3つ答えてよ」
「え?」
「制限時間は10秒」
唐突に始まった容赦ないカウントダウンに目を白黒させると、真田君が肩を竦める。
「キヨさん、今回の依頼は?」
「えぇと、手紙を埋めた場所、」
「そ。第一階層はタイルだった。第二階層は土だ。多分、此処で見つかる」
真田君の横顔は真剣だった。




