00
そう広くもない部屋を埋めるのは、積み重ねられた段ボールの山だった。
大きくもないデスクに陣取って、男は一人パソコンの画面を睨んでいる。
廻りの段ボールの圧迫感など少しも気にしていないようだ。
「これもハズレ」
キーボードを叩いてパソコンから取り出したディスクを無造作に放る。
それは過たず、男の左手側に置かれた大きな段ボール箱の中に落ちて音を立てた。
その段ボールの中には同じようにむき出しのディスクが何十枚何百枚と窮屈そうに身を寄せ合っている。
その一方で、男の右手側に積み重ねられた段ボールの一番上で口をあけているのには、ケースに入って整然と淑女のように並ぶディスクが覗いていた。
無駄のない動きでケースを掴むと、男は中のディスクをパソコンに滑り込ませる。
「これもハズレ」
先ほどと同じ動作が繰り返され、新しいディスクがパソコンに吸い込まれる。
どれだけ同じ動作を繰り返してきたか知らないが、それでも男には少しも飽きた様子がなかった。
「これも、ん?」
不意に瞬いて、男は食い入るように画面を見つめる。
無造作にディスクを取り出そうと伸ばした手を止めて、男はその手を握りしめた。
「あぁ。漸く見つけた」
それは泣き笑いのような、酷く安堵した言葉だった。