兵士
銃声が鳴り響き、己の頭上を引っ切りなしに銃弾が飛び交う。ひど過ぎるといっても過言ではない豪雨が容赦なく体を濡らし、心も体も冷やしていく。
隣にいた人間が、まるで糸の切れた操り人形のように力無く倒れ込む。彼は、銃弾を頭部に撃ち込まれ、即死だった。もう、二度と動く事はないだろう。味方……いや、数々の戦場を共にした戦友とも言える人間だった肉片をまじまじと見つめ、再び作戦を再開する。
彼の死は確かに悲しい。だが、ここで立ち止まる訳にはいかない。死んで逝った彼の為にも、自分が彼の分まで生き抜かなければならない。ライフルを持つ手に力を入れ、彼を撃ち殺した相手に狙いを定め、引き金を強く引き、発砲する。
彼には、将来を共に誓った女性がいた。作戦開始前に
「この戦いが終わったら、俺は…」
と、幸せそうな笑みで、わざわざ自分の幸せを嬉しそうに語っていた事を思い出す。
「馬鹿野郎……死んだら何にもならねえじゃねえか。」
絶叫しながら、己の感情をぶちまけ、引き金を握り続ける。相手の体から、弾丸が命中した箇所がパッ、パッ、パッと、紅い花が咲き乱れる。その相手も、彼と同じように倒れ込み、再び動き出す事はなかった。
「ハアッ、ハアッ、……死にたくねえ。」
生きる。死ぬ。日常生活において、それを強く感じながら生きている人間が、どれほどいるのだろうか? 戦場ほど、それを強く感じる場所はないだろう。生きる喜び。当たり前の事を、幸福に思える事が、本当の幸せなんじゃないのだろうか?