第7話 動けない警察
羽田空港からほど近い高瀬病院には、異様な熱気が渦巻いていた。
待合室と廊下には、すでに60名近い報道陣が押し寄せている。
狙いは、一つ。
生存者3名の「第一声」だった。
・防衛庁技官 山田
・老人ホーム職員 宇野清二
・同職員 奥野静江
この前代未聞の惨事で、彼らは——唯一の目撃者となった。
だが。
今回の事件では、さらに前代未聞の政府方針が出されていた。
国家公安委員長をトップとする「JNL特別便事故調査団」。
その第一次調査が終了するまで、警視庁の「JNL特別便事故捜査本部」は本格的な初動捜査を開始してはならない。
——という、厳しい“お達し”である。
つまり。
警察はすでに「事件性」を疑っていても、生存者への聴取も、機内の鑑識も、自由には行えなかった。
病院に渦巻く報道陣の熱気とは裏腹に、警察は手足を縛られたまま、待機を強いられていた。
だが——
この「動けない時間」こそが、のちに重大な意味を持つことになる。
なぜなら。
動けない時間ほど、本物の刑事は考えるからだ。
そして——
考える刑事ほど、真実に近づいていく。
▶ 次回予告
捜査本部は、わずかな違和感から“ある仮説”へ辿り着く。
それは事故か。
それとも、意図された惨劇か。
捜査は、静かに核心へ向かい始める。




