第6話(前編)――第一報――
◆ 臨時ニュース
午後7時3分。
定時ニュースの途中で、画面がふっと切り替わった。
アナウンサーの声は、誰の耳にも分かるほど硬かった。
「山曽根厚生大臣、竹村外務大臣、横山防衛大臣、佐野通産大臣一行226名を乗せ、本日午後5時55分に羽田空港へ着陸したJNL特別機に、何らかの事故が発生しました」
——一拍の沈黙。
「現在までの情報によりますと、大臣以下、乗客・乗員226名全員が死亡した模様です——」
◆ 日本中が、止まった
羽田空港のロビー。
人々は、テレビ画面の前から動けなかった。
「……着陸、してたよな?」
「そんな……冗談だろ……」
泣き崩れる者。
呆然と立ち尽くす者。
声も出ず、画面を見つめ続ける者。
駅前の大型ビジョン。
居酒屋のテレビ。
家庭の食卓。
日本中が、同じ沈黙に包まれた。
◆ 生存者3名という衝撃
翌朝——1990年10月7日。
早朝ニュースが、一斉に同じ言葉を告げた。
「JNL特別機事故で、生存者が3名いることがわかりました」
生存者は、わずか3人。
・ファーストクラス
防衛庁技官・山田(52歳)
・エコノミークラス
老人ホーム職員・宇野清二(74歳)
・同じく職員
奥野静江(65歳)
3人とも集中治療室で治療中。
命に別状はない。
だが——
続く言葉が、空気を一変させた。
「死亡が確認された223名の死因は、
“青酸性ガス”による可能性が高いとのことです」
毒ガス。
その単語が、画面越しに国民の胸へ突き刺さった。
政府は、「事故」と「事件」を同時に想定した。
警察。
検察。
そして官邸。
異例の“三重体制”が、
不気味なほど迅速に動き出していた。
▶ 次回予告
未曾有の惨事を前に、国家はどう動いたのか。
そして捜査本部は、どこから「違和感」を掴んだのか。
物語はここから、さらに深い闇へ踏み込んでいく。




