第12話 工事を動かした男
地下施設の工事は、比較的順調だった。
若い兵士たちを動員し、外部の人夫も徳島から集められていた。
地下での作業は、「軍の仕事」として完結していたからだ。
崖道工事の指揮を執ったのは、西村少佐。その副官が天野少尉だった。
だが――崖道工事だけは違った。
村に残っていた人間
古舘村に残っていたのは、すでに“働き盛り”ではない人間ばかりだった。
多くの若者は、すでに戦地へ送られていた。 現場に立っていたのは、老人と女と子供。
岩を割るには、あまりにも非力な人々だった。当然作業は遅れた。
軍の焦り
工期は3ヶ月。 一方の地下施設は、すでに完成の目途が立っている。
だが、道がなければ、施設は使えない。トラックが入れなければ、物資も、人も運び込めない。
西村少佐の表情は、日に日に険しくなっていった。 部隊長の山曽根中佐も苛立ちを募り始めていた。
「……このままでは、間に合わん」
軍では、動かない
命令を出しても、村人たちは限界だった。 倒れる者、怪我をする者、作業に出られなくなる者。
これ以上、軍の力だけで押し切れば――死者が出る。
それは、極秘施設にとって最も避けるべき事態だった。
そのとき、軍でも村でもない“第三の存在”が、静かに浮かび上がる。
次回 「工事を動かした男の正体」
軍の命令でもなく、村人の恐怖でもない。この工事を前に進めた“男”。
物語は、軍と民のあいだに潜むもう一つの力へと踏み込んでいく。




