第11話 鬼火谷 ――軍が求めた「道」――
第101部隊の地下施設は、四国から連れて来られた40名のトンネル工事人夫と
軍の兵士たちによって築かれた。
もともとこの地には、金山として使われていた2本の廃坑があった。
高さ、約2メートルほどの横穴。それらを地下で連結し、軍は「研究施設」として
再利用した。
だが――問題は、その先だった。
問題は「アクセス」だった
久留米市内から稲富村まで、約20キロ。ここまでは、トラックで入れる。
稲富村(人口250人)から、さらに上流へ5キロ。人口120人の古舘村。
ここまでも、かろうじて車は通れた。
しかし、その先、4キロの深い渓谷に沿って伸びる、細く、崩れやすい崖道が待っていた。
村人たちは、この谷を「鬼火谷」と呼んでいた。
夜になると、谷底から不気味な燐光が立ち上るという。
軍の命令は、あまりにも単純だった。「トラックが通れる道に、拡張せよ!」
翌年。
稲富村から80人、古舘村から30人、延べ110名の村人が「徴用」という名目で駆り出された。
作業期間は、3ヶ月。
岩を割り、崖を削り、命綱もない突貫工事。落ちれば、谷底まで一直線。
それでも作業は止まらなかった。
完成した「軍道」
3ヶ月後。ついに、軍用トラックが通れる道が完成した。
地下施設へ物資を運ぶための道。人間を運ぶための道。
そして――後に、“何か”を運び出すための道。
だが、この危険な工事を、実際に動かしていたのは、軍人だけではなかった。
次回 「工事を動かした男」
軍と村人の間に立ち、この道を“成立させた存在”。
物語は、新たな人物へと踏み込んでいく。




