第10話 新任将校 ――斉藤和男の違和感――
「本日付で、第101部隊配属を命じられました。斉藤和男中尉であります!」
満洲731部隊から、囚人23名を護送してきた若き士官。
着任の報告を終えた斉藤の前に現れたのは、西村少佐だった。
言葉少なく、感情を一切表に出さない男。その背後には、副官の天野少尉が立っている。
3人の間に、必要以上の言葉は交わされなかった。
車中で聞いた「概要」
久留米から山奥へ向かう車中で、案内役の崎山上等兵が、小声でこう語っていた。
廃坑を利用した研究拠点で外部者は一切、立ち入り不可。
工事人夫は徳島から動員して指揮役は杉山上等兵 (西村少佐の縁者)
すべては 「国防の名の下」で、説明は必要最低限。だが言葉の端々には、異様な慎重さが滲んでいた。
斉藤は、そのとき直感していた…… ここは、普通の部隊ではない。
数字と沈黙が放つ違和感―――囚人の数、施設の規模、集められた研究員の顔ぶれ。
どれもが、表向きの説明では、どうしても辻褄が合わない。しかも――誰も、核心については語らない。
質問を投げかけても、返ってくるのは、曖昧な言葉か、沈黙だけだった。
斉藤の胸の奥で、小さな警鐘が鳴り始める。
( これは…… 知ってはいけない場所なのではないか )
逃れられない確信へ
その予感は、やがて――はっきりとした形を持ち始める。
この地下施設は、「研究拠点」などではない。ここは、人間が人間でなくなる場所だ。
斉藤和男は、まだ知らない。この違和感が、やがて自分の人生を、取り返しのつかない方向へ
引きずり込んでいくことを。
次回 斉藤和男は、ついに――目を逸らすことのできない現実を、
その目で見ることになる。




