第9話 山奥の地下施設 ――第101部隊――
総勢23名の囚人たちは、トラックを降ろされ、さらに徒歩で1時間、山道を歩かされた。
夜だった。
足元は見えず、ただ前を行く兵士の背中だけが頼りだった。
やがて——
闇の中に、仄かな灯りが浮かび上がった。
——坑道の入口だった。
地下に広がる「もう一つの世界」
入口を抜けた瞬間、空気が変わった。
湿り気を帯び、わずかに、薬品の匂いが混じる。
内部は、囚人たちの想像をはるかに超えていた。
・宿舎
・食堂
・発電設備
・実験室
・検査室
・動物飼育室
・倉庫
・囚人収容区画
すべてが、地下に整然と配置されていた。
各部屋には換気口。
新鮮な空気が、常に循環している。
それはつまり——ここは、一時的な施設ではない。
長期運用を前提とした、完全な研究拠点だった。
この施設の名は、陸軍・第101部隊。
部隊長は、山曽根康路・陸軍中佐。中野学校出身。
冷徹で、切れ者。
その性格から、「カミソリ康」と呼ばれていた。
貧農の出だが天賦の才を見抜かれ、軍へ。
諜報と特殊兵器の世界で、急速に頭角を現した男。
——だが。
金と女への執着もまた、異様なほど強かった。
それでも軍上層部は、彼の「成果」だけを見ていた。
集められた研究者達は満洲・731部隊を嫌い、内地での研究を望んだ研究者達。
選抜された60名の医師・研究員が、この山奥に集められていた。
彼らはすでに、新種毒ガス兵器の開発に成功していた。
残る段階は、ただ一つ。生身の人間による実験。
そのために。23名の囚人が、ここへ運ばれてきた。
李成鎮一家も、その中にいた。
次回予告
「新任将校・斉藤和男」
彼は、この地下施設に足を踏み入れたとき、まだ知らなかった。
自分が、どこへ配属されてしまったのかを。




