第3話 選ばれた古舘村
第3話 選ばれた古舘村
島では、すでに限界が来ていた。
だから次に選ばれたのは——
人のいない場所ではない。
人のいる場所だった。
その地は、博多港から内陸へ入った、熊本県と大分県の県境にあった。
山に囲まれた、小さな盆地。
周囲にある集落は、わずか二つだけ。
鉄道は通らず、主要道路からも外れている。
空襲を受ける可能性も、ほぼ皆無だった。
さらに——
この地には、およそ百年前に閉山した金山の廃坑が残されていた。
横穴は複雑に入り組み、内部構造は外部の人間には把握しきれない。
村は長く外界と隔絶され、独自の風習を守ってきた。
よそ者を簡単には受け入れない。
噂は広がらず、秘密は自然と守られる。
軍が求めていた条件を、古舘村はすべて満たしていた。
こうして——
古舘村が選ばれた。
1939年(昭和14年)10月。
満洲の731部隊から、ひとりの将校が研究者と兵士を率いてこの村へ転属してくる。
山曽根中佐。
表向きの任務は、「資源調査」だった。
金山跡の再調査。
地質の確認。
地域開発の可能性——。
そう説明された。
だが、その裏側で、まったく別の工事が始まっていた。
人目につかぬよう、静かに、しかし確実に。
地上ではなく——地下へ。
金山の廃坑は拡張され、新たな横穴が掘り進められていく。
そこに築かれていったのは、資源調査の施設ではない。
人知れず進む、
**“実験場”**だった。
島では、失敗した。
だから次は——
絶対に、外へ漏らさない。
その思想そのものが、地下深くに封じ込められていく。
だが後に、その場所は、数えきれない運命を飲み込むことになる。
▶ 次回予告
「地下に築かれた実験場と、野心の男」
山曽根中佐とは、何者だったのか。
彼を突き動かしたものは、忠誠か。
出世欲か。
それとも——。
物語は、村の地下深くへと降りていく。




