表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い霧  作者: 田中元一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/29

■ 古舘村の「101部隊」■   第1話 地図から消えた島

大東亜戦争が始まる、少し前のことだった。

軍都・広島。

そして、軍港・呉。

その二つからほど近い海に、周囲わずか四キロほどの小さな島があった。

その島は、決して特別な場所ではない。

米も野菜もよく育ち、秋には松茸が採れ、海に出ればサザエやアワビが獲れる。

人々は畑を耕し、漁に出て、慎ましく——だが不自由のない暮らしを営んでいた。

ごく普通の、豊かな島だった。

だが、ある日。

島民全員に、突然の立ち退き命令が下る。

理由は、告げられない。

説明もない。

補償の詳細も示されなかった。

命令は、ただ一つ。

「島を、出ろ。」

数か月後、島は完全な無人島となり、外部との往来は一切遮断された。

そして——ある日を境に、地図からその島の名前が消えた。

◆ なぜ、この島だったのか

陸軍がこの島を選んだ理由は、感情ではなく——計算だった。

万が一、毒ガスが漏れても被害を最小限に抑えられる。

外部に秘密が漏れにくい。

中国大陸に近く、輸送が容易。

空襲を受けにくい立地。

1923年、関東大震災以降。

軍は知っていた。

化学兵器は、敵よりも先に自国を滅ぼしかねない——という事実を。

だからこそ、人のいない島が必要だった。

1929年(昭和四年)。

住民が去ったその島に、陸軍の毒ガス兵器施設が建設される。

音もなく。

記録にも残らず。

誰にも知られぬまま。

こうして島は、人々の記憶からも、地図からも、静かに消えていった。

だが——

島が消えたのではない。

そこに作られた**“もの”**が、後に数え切れない命と運命を狂わせることになる。

そして、その存在こそが——

やがて「101」と呼ばれることになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ