表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い霧  作者: 田中元一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/29

第18話 JNL本社へ──“向井”という名前 ――犯行は「人」ではなく、「構造」に隠れていた――


丸の内。

JNL本社ビル。

この事件の実務を指揮してきた五十嵐警部は、報告のため8階・役員フロアを訪れていた。

ここへ来るのは、これで三度目になる。

エレベーターを降りると、専用受付。

美しい受付嬢が型通りに深く頭を下げた。

目的の役員室へ向かう途中、ちょうどドアが開き、中から出てきた男と鉢合わせする。

「……兵頭先輩じゃないですか?」

五十嵐が声を上げた。

「おう。五十嵐じゃないか。お前、なんでこんなところにいる?」

兵頭は、かつて静岡県警で共に働いた先輩刑事だった。

「先輩こそ、どうしてJNLに?」

「定年で上がってな。今はここの総務部だ。静岡時代、支店長だった山岡さんと縁があってよ」

短い立ち話のあと、五十嵐は労務担当役員・山岡の部屋へ入った。

◆ 「内部犯行ではない」──だが

「例の“過激な整備員”の件だが……どうなった?」

山岡は窓の外を見たまま切り出した。

「一か月、二十四時間体制で洗いましたが——全員、シロです」

山岡は小さく息を吐いた。

「つまり、“内部犯行ではない”と?」

五十嵐は、すぐには答えなかった。

「少なくとも、“社内の過激な整備担当者”ではありません。ただ……」

言葉を選ぶ。

「機体構造に精通し、天井に上がって作業できる人間、という条件を考えると——“内部の人間”という線は、まだ捨て切れません」

山岡は、黙って頷いた。

「公安委員長も、同じ見解だったよ。過激派組織と直接つながる社員はいない、と」

二つのルートから、同じ“空振り”の報告。

それでも五十嵐は、確信していた。

犯人は、必ずどこかにいる。

そして——

この事件の本質は、まだ誰にも見えていない。

それは、一人の犯行ではないのかもしれない。

もっと静かに、

もっと巧妙に組み上げられた「構造」。

五十嵐は、その入り口に立っていることだけを感じていた。


▶ 次回予告

“向井”は、実行者なのか。

それとも、巨大な仕組みの中の歯車に過ぎないのか。

捜査はついに、「個人」から「構造」へ踏み込む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ