第17話 崩れた仮説 ――「最も疑わしい」は、無実だった――
2名の整備担当者は、「重要参考人」として慎重に事情聴取された。
張り込みは延べ10日間。
24時間態勢。
行きつけの居酒屋にも、捜査員が客として潜り込んだ。
だが——
結果は、冷酷だった。
◆ すべてが噛み合わない
2人とも、
・事件前後のアリバイは完璧
・技術的に可能とは言えない工程
・犯行に直結する動機も存在しない
どこを切っても、「黒」に繋がる糸は出てこなかった。
捜査本部は、ついに結論を出さざるを得なかった。
最も疑わしい者が、最も「シロ」かった。
「内部犯行説は、成立しない」
◆ 再び訪れる沈黙
合同捜査本部の会議室。
壁の時計だけが、乾いた音を刻んでいた。
誰も言葉を発しない。
最も疑わしいはずの仮説が、音もなく崩れ去った。
では——
犯人は誰なのか。
内部でもない。
外部でもない。
組織でも、個人でも、説明がつかない。
斎藤警視正は、黙ったまま机の上の図面を見つめていた。
(……これは、復讐でも、テロでもない)
胸の奥で、別の可能性が静かに芽を出し始めていた。
その可能性に、まだ名前はない。
だが斎藤は、本能的に理解していた。
——この事件は、もっと異質だ。
▶ 次回予告
内部犯行が否定された今、捜査本部は「動機」ではなく「構造」に目を向ける。
なぜ、あの三人だけが生き残ったのか。
なぜ、最後部に“特別な寝台”があったのか。
事件は、次の段階へ進む。




