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第84話
【天界】
観測盤は、
以前と同じ速度で
回転していた。
光の層も、
数値の更新間隔も、
変わらない。
異常値は、
安定域に
留まっている。
「……継続ですか」
念のための、
確認。
「はい。
観測を続行します」
セラフィエル=アーカは、
端末から
目を離さない。
裁定は、
出さない。
だが、
何もしていない
わけではなかった。
観測対象の周囲に、
見えない制限が
置かれている。
触れさせないための、
距離。
近づかせないための、
間。
「対象は、
引き続き行動なし」
「外界への影響も、
限定的」
報告は、
昨日と
同じだった。
数値が、
変わらない。
その状態が、
続いている。
「線を引く必要は?」
ルクス=エルディアが、
問いを出す。
「今は、
不要です」
引いた線は、
戻らない。
それだけが、
共有されていた。
観測は、
続く。
記録は、
積み上がる。
制限は、
解除されない。
光の層が、
わずかに
組み替えられる。
保護域が、
ほんの少しだけ、
広がった。
数値は、
相変わらず
安定している。
ただ、
それを確認する
手順が、
一つ、
増えただけだった。




