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禁忌の子レイ  作者: ぴすまる
第四章:三界衝突編

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第82話

 会議室は、

 静かだった。


 声を荒げる者はいない。

 机を叩く音もない。


 紙がめくられる音と、

 羽ペンが走る音だけが、

 一定の間隔で続いていた。


「――確認します」


 地上監督官が言った。


 声は低く、

 抑えられている。


「当該事例は、

 現在も移動中です。


 危害行為の報告はありません。

 周囲への影響も、

 現時点では確認されていません」


 紙を押さえる指が、

 一度止まる。


「脅威レベルは?」


「未定です」


 即答だった。


「判断材料が、

 足りません」


 誰かが、

 わずかに息を吐いた。


 ため息かどうかは、

 分からない。


「危険ではない、

 という理解で?」


「危険ではない、

 とは言えません」


 監督官は、

 言葉を選ばなかった。


「ただし、

 危険であるとも、

 言えません」


 沈黙が落ちる。


 机の上で、

 紙が一枚ずれる。


「……」


 誰も口を開かないまま、

 時間だけが進む。


「管理が必要ですね」


 確認するような調子だった。


 提案とも、

 決定ともつかない。


 反論は、

 出なかった。


「形は?」


「保護、

 という扱いで」


 その言葉が出たとき、

 誰かのペン先が、

 紙の端に引っかかった。


「接触は行いません」


 監督官が続ける。


「位置の把握と、

 周辺環境の確認のみです」


「拘束は?」


 一瞬、

 間が空く。


「……想定していません」


 言い切らなかった。


 それ以上、

 説明もなかった。


「登録は?」


「保護対象として」


 紙に、

 線が引かれる。


 欄が一つ、

 埋まる。


 それだけの作業だった。


「名称は?」


「仮番号で」


 短く答えられる。


「個人名は、

 必要になってからで

 構いません」


 誰も、

 訂正しなかった。


 名前は、

 まだ要らない。


 そう決めた、

 というより、

 決めないまま通過した。


「現場対応官は?」


 少し、

 間があった。


「……適任者がいます」


 名は、

 出ない。


 だが、

 数名が

 同じ人物を

 思い浮かべた。


「では、

 準備だけ進めましょう」


 接触はしない。


 だが、

 何もしないわけでもない。


 紙は揃えられ、

 ペンは置かれ、

 椅子が静かに引かれる。


 会議は、

 それで終わった。


 外では、

 風が吹いている。


 その風が、

 どこを歩く

 誰の足元を

 通り過ぎているのかを、


 この部屋の誰も、

 確かめてはいなかった。

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