幕間
街道を外れたところで、グラドは足を止めた。
舗装の切れ目。
先へ行けば、街ではない。
後ろは、振り返らない。
見れば、判断が揺れると分かっている。
あの子は、まだ街にいる。
働いてはいない。
守られてもいない。
だが、追い出されてもいない。
――それでいい。
最初から、長く一緒にいるつもりはなかった。
連れてきた。
渡した。
それだけだ。
守る役目は、もう終わっている。
街は、子どもを拾う場所じゃない。
だが、選別はする。
弱いから、ではない。
危ないから、でもない。
扱いにくいかどうかだ。
あの子は、静かすぎる。
泣かない。
訴えない。
助けを、使わない。
だから、余計に目に入る。
グラドは、腰の袋を確かめた。
中身は、減っている。
補充する気は、ない。
ここから先は、
見ているだけで、関われる距離じゃない。
もし、ここで名を呼べば。
もし、声をかければ。
それは、線を越える。
街に対しても。
あの子に対しても。
「……これでいい」
声は、誰にも届かない。
確認でも、祈りでもない。
ただの判断だ。
グラドは、踵を返す。
街と反対の方へ。
あの子は、振り向かない。
呼びもしない。
それでいい。
線は、引かれた。
切ったわけじゃない。
戻らないと、決めただけだ。
街は、これから動く。
あの子を、個人としてではなく、
扱うべきものとして。
グラドは、もう関与しない。
それが、一番ましな距離だと、知っている。




