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禁忌の子レイ  作者: ぴすまる
第三章:森の外・彷徨編

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第67話

 道は、昨日と同じように続いていた。

 色も、幅も、変わらない。

 靴の底が当たる音だけが、違う。


 一歩出すと、少し遅れて音が返る。

 その間に、息が入る。

 吐くとき、胸の奥が引っかかる。


 歩幅は、気づかないうちに小さくなっていた。

 合わせたつもりはない。

 足が、勝手にそうしている。


 太ももの内側が、張る。

 引っ張られるみたいに、硬い。

 足を前に出すたび、裏が薄くなる。


 空腹は、音を出さなくなっていた。

 重たいまま、奥に沈んでいる。

 動くたびに、少しだけ揺れる。


 日が高い。

 影は短い。

 でも、さっきより位置が変わっている気もする。


 数えようとして、やめる。

 いくつだったか、すぐに抜ける。


 喉が、乾く。

 唾を飲むと、擦れる音がした。

 それだけで、歩く速さが落ちる。


 足を出そうとして、止まる。

 出なかった。

 出そうとしたまま、止まった。


 道の脇に、低い石がある。

 腰の高さより、ずっと下。

 座れそうな形をしている。


 一歩寄る。

 近づくと、表面がざらついて見えた。

 白い粉が、指につきそうだ。


 そのまま、立つ。

 足を引く。

 引いた瞬間、膝の裏が抜ける。


 石に、触れた。

 手のひらが、先に当たる。

 冷たい。


 腰が、落ちる。

 完全には、乗らない。

 中途半端な高さ。


 背中を、少し丸める。

 そうすると、呼吸が楽になる。

 代わりに、首が重い。


 視線が、低くなる。

 道の端の草が、近い。

 葉の影が、揺れている。


 しばらく、そのまま。

 時間が進んでいる感じがしない。

 音も、増えない。


 足先が、じんとする。

 しびれか、冷えか、分からない。

 動かすと、遅れて反応する。


 立とうとして、また止まる。

 膝が、言うことを聞かない。

 力は入っているのに、上がらない。


 息を吸う。

 胸が、最後まで広がらない。

 途中で、引っかかる。


 空腹が、少し上に来る。

 喉の奥まで、重さが上がる。

 でも、鳴らない。


 誰かの気配は、ない。

 見える範囲に、人影はない。

 音も、足音も、来ない。


 それが、長く続いている。

 どれくらいかは、分からない。


 立ったままより、楽だ。

 でも、楽と言えるほどではない。

 どこも、ちょうど悪い。


 石から、手を離す。

 粉が、少し落ちる。

 白い跡が、残る。


 その跡を、見ていると、

 目が、ぼやける。


 焦点が合うまで、時間がかかる。

 瞬きを、何度か。

 戻らない。


 もう一度、瞬く。


 風が、頬を通る。

 冷たくはない。

 でも、長く当たる。


 立つ。

 今度は、途中で止まらない。


 足が、地面を探す。

 一歩。

 音が、鈍い。

 昨日より、遠い。


 もう一歩。

 太ももが、引きつる。

 でも、止まらない。


 石から、離れる。

 振り返らない。


 さっき座っていた場所が、

 もう、少し低く見える。


 目線が、安定しない。


 歩きながら、

 また、座れそうな場所を探す。


 探しているつもりは、ない。


 道は、続いている。

 足は、前に出る。

 理由は、後から来ない。


 空腹は、まだある。

 眠り足りない感じも、残っている。

 どちらも、はっきりしない。


 それでも、

 足は、止まらない。

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