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処刑された7歳の俺、天使と悪魔の混血だったので全属性が目覚めました 〜禁忌の子は魔の森で世界に選ばれる〜  作者: ぴすまる
第三章:森の外・彷徨編

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第45話

 朝の空気は、少し重かった。

 風がない。

 音だけが、残っている。


 いつもの場所に立つ。

 立つ場所は、もう決まっていた。

 邪魔にならないところ。

 でも、見えるところ。


 ルガは、何も言わない。

 手伝いが始まるときも、終わるときも。


 今日は、荷が多かった。

 木箱。

 中身は、分からない。


 持ち上げると、腕が引かれる。

 力を入れる。

 入れすぎない。

 運ぶ。

 置く。

 また戻る。


 その途中で、視線に気づいた。


 見られている。

 顔を上げなくても、分かる。

 背中に、当たる。


 昨日の視線とは、違う。

 森のものとも、違う。


 重さは、ある。

 でも、押し返してはこない。


 箱を置いて、手を離す。

 その瞬間、視線が動いた。

 ついてくる。


 何も言わず、次の箱へ向かう。

 歩き方を、少しだけ遅くする。

 見られている時間が、伸びる。


 視線の先に、人がいた。

 門のそば。

 動かない。


 腕を組んで、こちらを見ている。

 目は細くない。

 笑ってもいない。

 ただ、見ている。


 作業を続ける。

 箱を持ち上げる。

 置く。


 途中で、手が滑りそうになる。

 落とせば、音が出る。

 少しだけ、踏ん張る。

 箱は、落ちなかった。


 そのとき、

 視線が強くなった気がした。


 箱を置いたあと、息を吐く。

 吐いてから、吸う。

 自分の音が、聞こえる。


 別の大人が、低い声で言った。


「門のとこのセイン、ずっと見てるな」


 名前が、音として落ちる。

 それだけ。


「使えるか、測ってんだろ」


 誰のことかは、言わない。

 でも、近い。


 ルガは、何も返さない。

 聞こえなかったふりをしている。

 手を止めない。

 止めると、何かが変わりそうだった。


 しばらくして、休みになる。

 水を飲む。

 飲み終わっても、視線は消えない。


 今度は、別の人。

 知らない顔。


 目が合う。

 すぐ、外される。

 また合う。

 今度は、長い。


 何かを、確かめている。

 体のどこか。

 動き方。

 反応。


 分からないふりをする。

 視線は、返さない。

 返すと、始まりそうだった。


 近くで、声がする。


「ミナ、そっち終わった?」


 パン籠を抱えた子が、振り向く。


「うん。今いく」


 それから、こちらを見る。


「ねえ」


 小さい声。


「見られてるよ」


 うなずく。


「知ってる」


 それ以上は、言わない。


「へんなの」


 そう言って、肩をすくめる。


「役に立つと、見るんだよ」


 その言い方が、引っかかる。

 役に立つ。


 地面を見る。

 土が、踏み固められている。


 午後も、作業は続いた。

 同じことの繰り返し。

 でも、視線の数は、増えていく。


 通る人。

 立ち止まる人。

 少しだけ、顔を向ける人。


 誰も、話しかけない。

 それが、余計に気になる。


 終わりの合図が出た。

 ルガが、手を上げる。


「今日は、ここまで」


 手を止める。

 体が、少し重い。


 立ち上がったとき、

 門のそばの男と目が合った。


 今度は、外されなかった。

 逃げ場がない。


 セインは、何も言わない。

 ただ、見ている。

 測っている。


 危ないか。

 使えるか。


 そのどちらか。

 もしくは、両方。


 視線を下げた。

 それが、正しいかは分からない。


 ただ、見られる側でいる。

 それで、今日は終わった。

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