表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑された7歳の俺、天使と悪魔の混血だったので全属性が目覚めました 〜禁忌の子は魔の森で世界に選ばれる〜  作者: ぴすまる
第三章:森の外・彷徨編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/74

第42話

 朝は、早かった。


 目を開けると、天井が近い。

 板の隙間から、光が細く落ちている。


 納屋だった。

 昨日、使っていいと言われた場所。

 戸は閉まっていない。


 外で、音。

 金属がぶつかる。

 何かを引きずる。


 身を起こす。

 体は、まだ重い。

 それでも、立つ。


 外に出ると、男がいた。

 ルガ。

 修理屋の前で、車輪を転がしている。


「起きたか」


 顔は見ない。


「……うん」


 車輪を立て、

 釘を抜き、

 別の釘を打つ。


「仕事、探してるか」

「……わからない」

「そうだろ」


「金は?」

「……ない」

「だろうな」


 ようやく、見る。

 顔。

 服。

 靴。


「力は?」


 間。


「……あるかも」


 ふん、と鼻を鳴らす。


「じゃあ、これは仕事じゃない」


 車輪を持ち上げる。


「持て」


 両手を出す。

 重い。

 落とさない。


 足に、重さが伝わる。


「そこに、立ってろ」


 金属音。

 動かない。


 腕が、じわじわ痛む。

 言わない。


 時間が過ぎる。


「いい」


 車輪を戻す。


 腕が軽くなる。

 しびれが残る。


「今のは、仕事じゃない」

「……うん」

「金は、出ない」

「……うん」


「でも」


 工具を置く。


「立ってたな」


 奥で、水の音。

 バケツが置かれる。


「水、汲んでこい」

「……仕事?」

「違う」

「生活だ」


 水場は近い。

 道は悪い。


 バケツが重くなる。

 こぼれないように、歩く。


 戻ると、別の修理。

 水を置く。


「置いとけ」


 昼が近づく。

 匂いが増える。


 腹が、動く。


「腹、減ったか」

「……少し」


 懐から、硬いパン。

 半分。


「食え」

「……いいの?」

「金は、出ない」

「仕事じゃないからな」


 食べる。

 硬い。


「ここにいるなら、

 勝手に手を出すな」


「でも、立ってろ」

「嫌なら、出てけ」


 考える。


「……いる」


 何も言わない。

 次の修理に戻る。


 金属音が、また鳴る。


 立つ。


 仕事には、ならない。


 それでも、

 今日のあいだ、

 ここに立っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ