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幕間
王都の外れに、
古き紙一枚、保管されている。
描き手の名はなく、
年号も記されておらず。
正しき測量図とは、言い難い。
線は歪み、
文字は掠れ、
それでも、
人の手が辿りし跡のみは、残っている。
図に描かれしは、
王都と、処刑場。
その先に、
森あり。
境は、曖昧にして、
道は、途中より失われていた。
書き込まれし言葉は、
確かなるものばかりにあらず。
「危険」
「戻らず」
その類の文字が、
余白に、散見される。
魔の森の内について、
詳しき記述は、なし。
焚火の痕。
獣を、解体せし跡。
誰かが、
即座には果てなかったらしきこと。
南へ抜ける道あり、
との書き込みも、見える。
されど、
それを確かめし者の名は、
いずこにも、なし。
紙に残されしは、
ここまでなり。
この先、
線も、
文字も、
記されておらず。
※本話に登場する古地図の写しはこちら
(王都周辺・古記録写)
https://49265.mitemin.net/i1065770/




