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幕間
決まったことは、何もない。
管理は続いている。
確認も、保護も、止まっていない。
書架の頁がわずかに揺れ、光が反射して、存在の輪郭を残す。
誰かが間違えたわけでもない。
悪意があったわけでもない。
それでも、前と同じ場所には、
もう戻れなかった。
境目は、誰にも示されないまま、
少しだけ、ずれている。
空気の密度が変わり、石の冷たさが、手に残る。
触れられていないのに、
触れられなくなった、
という距離。
何も選ばれていない。
何も始まっていない。
それでも、世界のほうが、
一歩だけ、
先に行ってしまった。
微かな振動が、床に伝わり、光はゆらぐ。
存在しながら、存在に触れない。
それだけが、確かに置かれている。




