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禁忌の子レイ  作者: ぴすまる
第四章:三界衝突編

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第114話

 地上では、

 片づけが続いていた。


 壊れた建物。

 使われなかった資材。

 戻らなかった人数。


 監督官は、

 帳簿を閉じた。

 数字は、頭の中に残ったままだった。


「……ここまでです」


 声に、うなずきは返らない。


 誰かが、守ろうとした。

 誰かが、止めようとした。


 その事実だけが、並んでいる。


「あの子の判断は?」


 質問は出た。

 名前は、出なかった。


「聞いていない」


「聞けないーーが正しいな」


 訂正だけが、残る。


 善意は、記録された。

 だが、引き取る場所はなかった。


 帳簿は、閉じられた。

 結論の欄は、空いたままだ。



 魔界では、

 撤退が終わっていた。


 痕跡は消され、

 交わされかけた契約も破棄されている。


「惜しかったな」


 誰かが、言う。

 別の誰かが、鼻で笑った。


「違う」


 ヴァルは、刃を布で拭きながら答えた。


「早すぎただけだ」


「次は?」


「次を考える段階じゃない」


 それ以上、話は続かなかった。


 奪わなかった。

 だが、誇る理由もない。


 判断が、正しかったのかどうか。

 その問いは、置かれたままだ。



 天界では、

 会議が解散していた。


 裁定は、出た。

 だが、それを喜ぶ声はない。


「判断しなかった」


「先に送っただけだ」


 言葉は出たが、結論にはならなかった。


 セラフィエルは、記録庫の前で立ち止まる。


 空白の頁。

 埋められなかった欄。


 名がないこと。

 分類されないこと。


 それが、最善だったのかどうか。

 考える理由は、残っている。


 答えは、置かれなかった。



 地上も、魔界も、天界も。


 何かを得たとも言えない。

 何かを失ったとも言い切れない。


 動かなかった。

 だが、元の位置でもない。


 誰も、満足していない。

 それでも、やり直しは宣言されなかった。


 世界は、少しだけ間を空けたまま、

 次の動きを待っている。


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