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禁忌の子レイ  作者: ぴすまる
第四章:三界衝突編

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第100話

 記録は、静かに始まった。


 白い卓の上に、薄い紙が並べられる。

 角が揃っていない。

 誰も直さなかった。


 天界の報告官が、視線を落とす。


「境界歪曲の発生を確認。

 規定第七条に基づき、干渉制限を発動。

 裁定執行官オルディナ=サフが現地対応を実施」


 紙をめくる音だけが、遅れて響く。


 次の報告。


「建造物の一部損壊。

 居住区三棟に影響。

 負傷者数、現在集計中」


 数値の欄には、空白が残っている。

 誰も、それを指摘しない。


 続いて、魔界側。


「迎撃行動により、侵入点を一時的に押し戻す。

 敵性行動の拡大は、防止したと判断」


 卓の端で、ペンが一本転がった。

 止まる。

 拾われない。


「……では」


 誰かが、息を整える。


「原因は?」


 問いは、そのまま記録された。

 答えは、続かなかった。


 天界は、規定を示す。

 地上は、被害の位置を示す。

 魔界は、成果の範囲を示す。


 紙の上には、すべて書かれている。

 だが、行間は埋まらない。

 責める言葉は出ない。

 名は呼ばれない。


 それぞれが、

 自分の紙を、自分の前に置いたまま動かさない。


 会議は、予定より早く終わった。

 結論は、書かれなかった。

 空白も、そのまま残された。


 最後に閉じられた記録には、

 二つのものが並んでいる。


 書かれた文。

 書かれなかった余白。


 被害の現場で、

 最初に足を止めたのが誰だったのか。

 どの命令が、途中で消えたのか。


 その紙は、最初から用意されていなかった。

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