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禁忌の子レイ  作者: ぴすまる
第四章:三界衝突編

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第96話

【天界】


 指示は、すでに出ていた。


 観測域第三層、干渉制限レベルを一段階引き上げる。

 対象周辺への直接接触は禁止。

 防御行動は許可、過剰反応は避ける。


 文言は、明確だった。

 だが、それを受け取る側は、同じ場所を見ていない。


「――応答が遅い」


 管制席の光が、ひとつ消える。

 次の席でも、同じ遅延が発生した。


 命令は送信されている。

 確認信号が、戻らない。


「再送を」

「再送済みです」


 制限は、かけられた。

 少なくとも、そう表示されている。

 境界付近に、わずかな濃淡が生じる。

 数値にすれば、誤差だった。

 だが、その誤差を、誰も同じようには扱っていない。


 届かなかった命令が、そこに残る。


【魔界】


「試すだけだ」


 そう言ったのは、指揮官ではなかった。

 前に出た者の、独断だった。


 力を向ける。

 全開ではない。

 抑えた、様子見の一撃。


 魔界の動きは速い。

 判断が、共有される前に、実行に移される。


「抵抗ありと判断」


 天界の制限が届く前。

 地上の退避が整う前。

 撤回は、まだ可能だった。


 だが、声は重なり、遅れた。


「待て」

「止まれ」


 届いたときには、力はすでに空間に触れている。

 触れただけのはずだった。

 だが、境界は均一ではなかった。

 次の動きが、呼ばれる。


【地上】


 何が起きているのか、分からなかった。


 音が、遅れて届く。

 揺れが、方向を持たない。

 空を見上げても、何もない。

 それでも、空気が重くなる。


「今のは……?」


 問いに、答えは返らない。

 避難の合図は、まだ鳴っていない。

 だが、立っていられない者が出る。

 壁に走る、細いひび。

 昨日まで、なかった線。

 誰かが支えようとして、転ぶ。

 助けようとした動きが、別の人を押す。


 意図は、置かれたまま。

 結果だけが、ずれる。


【天界】


「制限が効いていない箇所があります」


 報告は淡々としていた。


「該当領域を特定」

「……時間がかかります」


 制限は、かけ直せる。

 だが、その間にも現場は動く。

 命令が、追いつかない。


【魔界】


「撤退信号、確認」


 その声が届いたとき、

 すでに動きは止まっていなかった。


「遅い」


 誰かが、そう呟く。

 責める声ではない。

 計算が、合わなかっただけだ。


「戻る」


 その言葉が出たとき、

 戻る先は、すでに同じではなかった。


【地上】


 合図が鳴る。

 遅れて。


 人々は動く。

 だが、どこへ行けばいいのかは分からない。

 指示は出ている。

 重なっている。

 避けた先に、別の揺れ。

 集まった場所に、別の音。

 使われなかった合図が、空に残る。

 遅れて届いた命令が、地面に落ちる。


 拾う者はいない。

 この時点で、整列は失われていた。

 だが、誰もそれを、特別な名前では呼ばなかった。

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