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第9話 神の助言

 舐男と放置老婆がいまだにその場から一歩も動けないでいる。


 目の前にあの『アド・シ・エル』がいる。


 誰かの吹いた言葉や誰が書いたのかもわからないような、伝説の存在が今、目の前にいて、丁寧にお辞儀をしている。深々と頭を下げて


 観測「おやおや、お二方。何をそんな固い表情をされているのですか?」


 観測「どうかリラックスしてください。暖かいダージリンティーでもお出しましょうか?」


 観測「といってもここはあなた方の家なのですが…」


 二人はどうリアクションを取っていいのかわからないままでいる。笑っていいのか、動いていいのか、助けを呼んでもいいのか、呼吸をしてもいいのか、はたまたこのまま自害をしてもいいのか。


 放置老婆が勇気を出して「観測」に話しかける。


 放置老婆「…しゃべっても私たちは死なないのかしら…?」


「観測」が困ったような顔をしている。舐男と放置老婆は、自分たちの選択を間違えたのではないかと思ってしまう。


 観測「もちろん…言葉を発してはいけない人間なんてこの世に一人もいません。それが神の前であっても…」


 安心していいのかもわからない。まだそのときではない。


 放置老婆「では、質問をしてもいいのかしら?」


 観測「どうぞ」


 放置老婆「あなたのことをなんて呼べばいい?」


 観測「ジェームスとお呼びください。『12』。親しい友達はみな、そう呼んでくれます。」


 放置老婆「あなたは本当にあの『アドシエル』なのね?」


 以降ジェームス「はい。『アドシエル』は伝説の生き物でも、ファンタジーの世界に存在するユニコーンの様なキャラクタリスティックな現象的寓話でもありません。実際に貴方の前に、存在しています。」


 放置老婆「本来、私を殺す役目は、まっとうに行けば『11』のはず。組織の、最高Noクラスのあなたがなぜ私をわざわざ殺しに来たの?」


 ジェームス「いやいや、私はあなた方を殺しに来たのではありません。ただ、お二人がどんな様子なのかを観測しに来ただけです。この目で直接。」


 放置老婆は考え込む。これらの話が本当なのか、嘘なのか、判断材料が全くない。


 ここで我らが主人公、激辛舐男が口を開く。彼も、ジェームスに敵意が無いことを知り、安心して質問を投げかけるようと手を挙げている。しかし、放置老婆は内心不安である。何せ、両手にうんこを塗りたくって戦うなんていう奇天烈で突拍子もない方法を迷いなく実践する人間だ。

 伝説を前にお尻を丸出しにし「俺の菊の門を見てくれないか?」とわけのわからないことでも言いだすんじゃないかと…心配である。


俺様「俺様の上腕にこんな謎のタトゥーが入ってるんだ。俺様はこんなもの入れたことなんてない。なんせ模範的社会人だからな。こいつのせいで俺様は年柄年中長袖なんだ。これ、どんな意味があるのか知らないか?」


途端に空気が変わる。ジェームスを中心に。この世界の中心は『神である私だ』と言わんばかりに


放置老婆(こいつまたなんかやらかしたわねぇぇぇぇ…!)


放置老婆が死を覚悟する。その瞬間ジェームスは嬉しそうに笑う。


ジェームス「はははははははははは!やっぱりか!君は知らなかったんだな!知ってはいたが…君はやはりそうなんだね!!??」


二人は混乱している。人の家に勝手に侵入してきたかと思えば今度は大笑いしている。こんなに非常識な人間もなかなかいない。英国紳士のすることではない。


ジェームスは一通り笑い終わった後に落ち着きを取り戻す。


ジェームス「失礼しました。少々取り乱してしまいました。3000年振りに。」


これも冗談なのか?この男が、神は冗談なんて言うんだろうか?


神が重々しい口を開く。そこから放たれた言葉は二人への助言だった。


ジェームス「…『12』、激辛舐男。二人にはどうにか生きてもらわねばなりません。ここで私からの助言です。」


ジェームス「まず、『12』。今まであなたは同格、もしくは格上の『アド戦士』たちと戦ったことはありますか?」


放置老婆は短く「NO」と答える。


ジェームス「であれば、これからあなたたちは格上の、アド戦士達と戦わなければなりません。彼らの持つ能力、特に『アドワールド』はあなた方がご存じのようにとても強力です。無策で戦った場合、何もできずに無様にやられてしまうでしょう。」


ジェームスがここで二人に質問をする。


ジェームス「アドワールド同士がぶつかった場合どうなるかご存じですか?」


放置老婆が短く「知らない」と答える。


ジェームス「アドワールド同士は衝突しません。二つの世界は混在します。それぞれの世界の特徴を保持したままこの世界にあり続けます。」


ジェームス「ただ、もちろん力量があまりにも離れている場合、強者のアドワールドのほうが、多く侵略する。あるいは相手のアドワールドのすべてを食らいつくす。なんてこともあります。私とあなたのアドワールドのように。もし仮に戦えばの話ですが」


放置老婆が短く「そんなことあるわけないでしょう…」と言う。だれも望んでいない。そんな展開。


ジェームス「そして、舐男君。あなたにも助言があります。おそらくあなたには隠れた能力が存在することがわかっています。ここでいうつもりはありませんが…次の『11』との戦いで存分に発揮してください。」


舐男がわかったと短く返事をした。


放置老婆(絶対こいつ…わかってないわね。)


ジェームスが黒いワープホールの様なものを展開する。どうやら、広告を介してワープしているわけではなく、いつでも好きな時に現れることができるようだ。


ジェームス「ではお二方…最後に…次の刺客がもう迫ってきています。いつでも戦える準備をしていた方がいいでしょう…では」


ジェームスが去る。二人は気をはっていた糸が緩むようにその場に倒れこむ。


俺様「なあ…俺が安心してピカリンを見れる日はいつか来るのか?」


放置老婆「知らないわよ…てゆーか次の刺客って言ってたけど…あんた肩の傷と足の裏の傷は大丈夫なの?」


俺様「ああ、それならもう完治してるぜ。俺様って傷の治りが早いんだ。昔、看護師をやっていたこともあるからな。」


バレリーナの次は看護師か…こいつ、自分のイメージに合わないようなことばっかやってるな…と放置老婆があきれる。


放置老婆(しかしこの回復速度は異常ね…上腕骨にひびまで入っていた筈なのに。完治するには早すぎる。もしかしたらこいつが本当に次の戦いのキーになるのかも)


俺様「まあとにかく、一旦ピカリンを見させてくれ。早く見たくてしょうがないんだ。」


放置老婆「…まああんたの楽しみの邪魔をするつもりはないわ。ゆっくり楽しんでらっしゃい。私はベッドに横になってるから。」




二人がそれぞれの時間を楽しもうとしたその瞬間。



ピンポーン



チャイムが鳴る。もしや…ジェームスの高笑いであの、毎朝うんこを触る修行をしているあの変態隣人が文句を言いに来たのでは…



舐男が社会人モードに入り、謝罪の準備をし、ドアまで行く。


俺様「はーい!」


扉を開ける。


そこには見知らぬ二人の少女がいる。一人は金髪の少女。もう一人は豊満な乳房を携えているであろう銀髪の少女。明らかに普通のサラリーマンに用事があるとは思えない。


金髪の少女は長い髪を携えており、制服の様は格好をしている。彼女はフラットな胸を持ち、どこかあどけないような静かな体つきをしている。

銀髪の少女がショートのボブカット。同じく制服のような格好をしているが、胸の部分だけ切り取られており、その大きな胸は強調されている。


共通しているのは二人は極端に短いスカートを履いており、そこにはガーターベルトと白く長いストッキングをはいていることがわかる。


二人は同時に挨拶する


11「こんにちは」


俺様「…こんにちわ…あの、何か用ですか?」


二人がその質問の答えを考える。




…数秒ほど舐男が二人の返事を待つ。二人の少女の小さな捕食器官が口を開く。




11「さようなら」




舐男が瞬時に察する。目の前にいるのはおれたちの命を奪う刺客だと。


放置老婆「舐男!!!」


突如後ろから放置老婆の声が聞こえる。なにか異変を感じ取ったのだろう。もうすでに靴を履いて臨戦態勢に入っている。舐男もそれに倣い、靴を取り、履く。




放置老婆が傘をかざす。


11がお互いに手を取り合いお互いの唇を湿らし、重ねる。



それらを合図にそれぞれの世界が展開される



放置老婆「アドワールド!!!」 11「「アドワールド」」




放置老婆「アインテルシー!」  11「「・ラザエラ」」



アドワールドは衝突しない。



混在する。

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