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元魔王な令嬢は、てぶくろ人形を作る-その2

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 いよいよ、てぶくろ人形を作ります。



「筋肉談義は、いいからさ。騎士団長は置いといて、新しい手下の作り方を教えてよー。ささ、ベルリーナちゃん。始めよう、始めよう」


「お前の場合は、もうちょっと肉を付ける所から始めなきゃならんからな」


 団長が言うように、確かに部長は、肉が無さすぎる気がするわね。徹夜し過ぎで、ラディッシュマンドラゴラも摂取してドーピングしてるし、健康には気を付けた方が、いいかも。

 魔道具製作部に向けて、うちの野菜を使ったヘルシーフードを作ったら、売れるんじゃないかしら。


「ほら、ベルリーナちゃん。よろしく~」


 私の目の前で手袋を振りながら、部長が言った。

 ちょっと、幻のお金がザカザカ降ってくるのが、見えてました。ごめんなさい。うーん、ヘルシーフード作りは、後でお祖父様に要相談ね。



「これが、ほぼ出来上がりの『てぶくろ人形』です」


 私は、侍女のミルカに見本を出してもらった。これは、今日、ライ殿下と一緒に仕上げようと思っていた『てぶくろ人形』。何体か作った内で、一番上手に仕上がったやつだ。

 ビミョーな失敗作は全て、叔父上に持っていかれてしまいました。


『おう、いいのが出来てるじゃないか、貰っていくな』


 だってさー。ぶーぶー。失敗作だから、別にいいけどー。今度、町で評判のタルトタタン、奢らせてやるー。

 閑話休題。


「まず、手袋を片方用意して下さい~。親指部分は付け根から切って、人差し指と小指は中に突っ込んで、開いた穴を縫い付けて、綿を詰めてくださいね。これが、うさぎさんの頭です」


 よいしょ、よいしょ。私が作ってるのは、ドミトリー殿下の分。部長とミザリア殿下は、自分で作成。ドミトリー殿下は、まだ針を使った事がなかったので、私が代わりに縫う事になった。

 ライ殿下が、ちょっと拗ねてるけど、ドミトリー殿下が自分で出来る所は、自分で作って貰うわよ、当然。


「出来たら、次は身体作りです。もう片方の手袋の中指と小指を、中にキュッキュッと入れ込んで、入れ込んだ穴を縫って、綿を詰めます」


 あ、部長、横着してる。


「小指に綿を入れたら、そのまま腕にならないかと思ったけど、親指と小指をそのまま腕にすると、アンバランス過ぎて気持ち悪いな」


 そーなの。小指と親指を腕にしちゃうと、出来上がりが、ウサギと言うより、アンデットっぽくなってしまうのよ。横着は、敵!


「頭の部分で切っておいた親指に綿を詰めて、身体の方の手袋の小指部分に縫い付けます。元から付いてた親指の根元の部分と胴体部分の間に、真っ直ぐの縫い目を入れて」


 うんしょ、うんしょ。5歳児の指は、まだまだ動かし辛い。なるべく細かく縫おうと思っても、上手くいかない。

 がんばれ、私!


「身体と頭をくっ付けて、縫い合わせて」


 あ。ミザリア殿下、もう出来上がってる。縫い目、キレイ。上手。


「う、う……目を付けて、口にペケポン刺繍したら、出来上がり、です」


「ど、どうした?ベル」


 私がしょげているのが判ったのか、隣にいたライ殿下が、私をキュッと抱き締めた。


「いっぱい練習したんですが、ミザリア殿下みたいに、どうしてもキレイに縫えなくて。もっと、練習しないと、ダメです」


 はぁ。もっと上手になりたいな。


「心配するな、ベルリーナ。姉上のウサギの出来上がりを見てみろ。俺には、あれがウサギに見えないぞ」


 う、ミザリア殿下のウサギ、何か厳つい。ウサギのくせに、何かゴツい。綿の入れ具合のせい?しかも、太い眉毛に一文字の口のせいか、やたら、凛々しい。


「うっ。ちょっと作りながら、ベンデンを思い出しちゃって」


 あれはゴリラで、ウサギには見えないと思うんだけど。ミザリア殿下には、ウサギに見えるんだろうか。この手下、斥候よりも、破壊活動に向いてるかも。


「ミザリア殿下は、余程、うちのイケメンゴリラが、お気に召したと思われますな」


 カカと笑う団長の前のソファ-に座るミザリア殿下が、真っ赤になってしまって、何か可愛い。初対面の時の自信たっぷりの派手なお姉さんっぷりとは、えらい違い。恋は女を可愛くするのね。


「俺は、姉上の作ったやつより、ベルリーナ嬢が作った奴が欲しい」


「ありがとうございます。でも、目と口は簡単なので、自分で付けて下さいね」


 ドミトリー殿下がウサギに目と口を付けている間に、ライ殿下にも私が作ってきたウサギに目と口を付けて貰う。


「私のウサギの目は、紫色だな」


「えへへ。ベルリーナうさぎです」


 ライ殿下の近くにいて、いつでもお役にたちますベルリーナうさぎです。


「俺も、紫の目にしようっと。俺のも、ベルリーナうさぎだな」


「僕も、ベルリーナちゃんの瞳とお揃いにしようっと」


 いや、部長までお揃いにしなくても、良いのでは?こっそり、叔父上の瞳の色のボタンに換えとこうかしら。


「最後に、首にリボンを付けてやって下さいね。はい、ライ殿下。私のリボンをどうぞ」


 ライ殿下のベルリーナうさぎには、私の紫のリボンを付けた。


「あ、俺も俺も。リボンくれよ、ベルリーナ嬢」


「ドミトリー、お前のウサギには、私のリボンタイをやろう。そら」


 ライ殿下は、ドミトリー殿下のウサギを取り上げて緑のリボンをくくりつけた。あ、いいなぁ。ちょっと、羨ましい。


「えー。ラインハルトのリボンかよ。まあ、いいけど」


 えー。羨ましいんですけど。何か、2人とも、スゴく仲良くなりましたよね。ちょっと、妬けるかも。


「今度、私の分のウサギを作ったら、ライ殿下のリボンを付けてやって下さいね」


「ああ、勿論だ。ベルのウサギには、必ず私の目の色と同じ緑のボタンを付けるんだぞ」


 ペアですね。ふふふ、ワクワクします。仲良しの証です。てぶくろ人形のウサギさん達も、私達と同じ様に、手を繋いで斥候に行くんでしょうか。何か、素敵です。


 さあ、仕上げですよー。


「私と一緒にウサギに魔力を込め、呪文を唱えて。


『ひっそりこっそり人知れず潜んで行け。長い耳で内緒話を聞きつけ、こっそり私に耳打ちせよ』


 後は、その都度、調べたい相手の名前や場所を教えてやって下さい」


 私は、ライ殿下、ドミトリー殿下、ミザリア殿下と順々に一緒に呪文を、唱えていった。


「ああっ、しまった!僕は、ネコ作っちゃったよ。耳、長くないや」


 ま、まあ、部長。ネコでも別に、大丈夫じゃないかな、きっと。忍び足、上手だしね。





「よお、レザリス。お前の作った新しい手下、中々、評判いいぞ。次々とスパイを炙り出してくれる」


「うーん。失敗作なんだけどね。まあ、アルジャーノンの役に立ってるならいいか。ネコだけに、ネズミ(スパイ)を炙り出すのは、上手なんだよな、こいつ」





 Xには、試しに作ってみたウサギの『てぶくろ人形』の写真をupしてあります。実際に作ってみるのも楽しかった~。



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