デザリスタの華は、愛に目覚める-その3
読みに来て下さって、ありがとうございます。
何と、1話だけ挟もうとしたミザリアとゴリラ男、いや、ベンデンの話が続いております。
今回も、ミザリア視点です。
デザリスタ王女ミザリア side
混乱した私は、あれよあれよと言う間に侍女達の手によって食事、入浴を終えてベッドに放り込まれ、気が付いたら朝だった。
叔父様やドミトリーも医師の診察を受け、私と同じ様な診断が下された。ドミトリーは、魔力が多いせいか、年齢のせいで毒は控えめに盛られていたのか、一番軽少で済んでいた。
ドミトリーがイライラして癇癪を起こしやすかったのも、毒と呪いのせいじゃないかしら?
昨夜の診断のせいか、朝から皆が妙に優しい。特にベンデンは、私が立つ度に手を添えたり、部屋の外に行こうとすると、お姫様抱っこをしようとする。
「ベンデン、ダメよ。私は、ちゃんと歩けるわ。抱っこしなくても、大丈夫だから」
「いえ、しかし、殿下。昨日の今日ですし、まだ完全に回復なさってないかと」
「小さな子供じゃないのよ。心配いらないわ」
ベンデンが、両手を差し出して、私に向かってくる。
抱っこ癖が付いたのかしら。
「今からベルリーナとお茶を飲むのよ。何事かと思われるわよ」
「しかし、殿下。万が一の事も、ありますので」
しょげた犬の様に、いや、叱られて元気のないゴリラの様にベンデンは、悲しい顔をする。
いや、ゴリラが犬に見えるとしたら、私もいよいよ、恋の病かもしれない。うう、そんな顔を、するんじゃないわよ、ベンデン。
「では、エスコートしてちょうだい。それなら、問題ないでしょう?」
とうとう、絆されてしまったわ。
ドミトリーとラインハルト王太子殿下が横で『勝負、勝負』と、うるさく言っている間に、私とベルリーナは、お互いにお菓子を食べさせ合いっこをして、すっかり仲良くなった。
ベルリーナは、何だかとても可愛い。まるで、小さな妹の様だわ。こんな妹が、いれば良いのに。
やがて、ドミトリー達は騎士団の演習場で勝負をすると言うので、私は演習場の隅で見学をすることにした。
演習場では、騎士達が修練に励んでおり、模擬試合も行われていた。
「まあ、皆、スゴいのね。あの騎士は、特に強いのね。先程から、ずいぶん勝っているわ」
「いえ、彼よりも、ベンデン殿の方が何倍も強いんですよ。殿下」
ルッキオが、自分の事の様に自慢気に言った。
「まあ、そうなの。ベンデンの強い所が観れなくて残念だわ」
「少々お待ち下さい、殿下。団長、その、私も模擬戦に参加しても、よろしいでしょうか?」
ベンデンが私の近くに挨拶にやって来た騎士団長に、許可を取った。
え?ベンデンも参加するの?それは、ちょっと楽しみかも。
「よし、行ってこい。殿下の前で無様な格好を見せるなよ。殿下の護衛は、私が代わってやろう」
騎士団長は、ニヤッと笑い、腕を組んで椅子に座っている私の横に立った。
「殿下、うちのゴリラを手懐けましたな。実に見事な、ご手腕で。女嫌いのゴリラで有名でしたが、すっかり貴女に夢中になっている様だ。ほら、ご覧ください。とんでもなく凄まじく張り切ってますよ」
騎士団長は大声で笑い、ベンデンの方を見た。
ベンデンは、次々と襲いかかってくる騎士達を、千切っては投げ千切っては投げ、どんどん山積みにしていた。
「明日、殿下が帰られた後、あいつは、どうなってしまうんでしょうな。意気消沈して、しばらくは、使い物にならないかも知れませんね」
私だって、意気消沈して、使い物にならなくなってしまうかも。でも、ベンデンを持って帰る訳にも、いかないし。
はぁ。
「おや、溜め息ですか?
ところで、ベンデンですが。本名をベンデルンド・サウストと申しまして、我が国の元女王陛下の王配を輩出したサウスト公爵家の嫡男でして。
ですが、あのご面相に、あの巨体ですから、23歳にもなっても嫁の来ても無く、困っております。もし、そちらの国に良い縁談でも有りましたら、紹介をしてやっていただけませんでしょうか」
ニヤニヤと笑いながら、団長は、こちらを見た。
え!?ベンデン、公爵家の嫡男なの?しかも、元女王陛下の王配って、女王陛下と共に残した色んな逸話があって、我が国でも有名な方よ。
え!?掘り出し物じゃない。
「いい加減にしろ!ベンデン。こういうのを、八つ当たりって言うんだぞ!」
「うるさい。黙って、大人しく私の剣の塵となれ」
「副団長、お願いします。何とかして下さいよー」
「いや、ムリだって。こいつ、目が据わってるからな。本気だからな。俺でも、敵わんわ。束で行け、束で。全員一斉に、かかれ。ムリだろうけど」
騎士団のゴリラは、最強です。まあ、他国の王女の護衛ですからね。血統の良いのも混ぜとかないと、失礼があっても困りますから。
それにしても、ベルリーナのひいお祖父様はゴツいイケメンじじいなんですが、ゴリラ遺伝子が何処から来たのかは、謎です。




