第一王子の部屋には、何かが棲んでいる - その2
読みに来てくださってありがとうございます。
前回に引き続き、ラインハルト視点の王城でのお話となっています。
第一王子ラインハルトside
日中に色んな事があり過ぎて、その夜、私は、すっかり肝心の問題を忘れて眠ってしまっていた。
綺麗な花畑で、ベルリーナと手を繋いで笑いながら走り回っている夢だった。侍女達によると、頭お花畑というものがあるらしいが、これがそれなのではないかと思いながら、走っていた。だが、花畑に限らず走り回るのは楽しいと思うぞ。邪魔が入らなければ、な。
突然、夢の中の私達を黒い靄が囲んで、ベルリーナが叫んだ。
『ラインハルト殿下、起きて!』
目覚めた私の耳に、耳が痛くなるような音がして、何かが一瞬光った。
ベッドの側にあった大きな黒い影が崩れ落ちた。
ドアが開かれ、灯りを持った近衛兵達が駆け込んできたのが、わかる。
「いや、凄い威力だな」
部屋の灯りがともされ、私が最初にハッキリ見たのは、ベッドの脇に何かを持って倒れている黒い物を、歩きながら見下ろしてそう言う、魔術師団長だった。
「殿下を、別室にお連れしろ」
「殿下、失礼します」
魔術師団長の指揮と共に、近衛兵の1人が、そう言いながら、私を抱いて運び出そうとした。
あ、ベラ。ベラを持って行かないと…
「そこに掛けてある紫のリボンの付いた白い布を取ってくれないか」
でも、ベラのあった場所にあるのは、焼け焦げてほとんどなくなったベラの残りだった。引きちぎれ掛けたベルリーナの紫のリボンと白かったはずのハンカチの欠片が、何とかベッドの柱からぶら下がっている。
「申し訳ありませんが、殿下…。捜査の為、この部屋からは御身一つしか持ち出せません。てるてるぼうずは、残念ですが、捜査が終わるまで、このままとなります」
目の前にいる魔術師団長の、そう言う声が、遠くから聞こえているみたいだ。
昨日は、あんなに楽しかったのにな…。ねえ、ベルリーナ?会いたいよ、ベルリーナ。夢の中だけじゃ、足らないよ。
真相解明まで、少々時間が掛かるようですので、次回は、再びベルリーナのお話に戻ります。事件解決がんばれ、魔術師団長(ベルリーナの叔父上)。