《番外編》聖女(仮)は、老害公爵をぺしぺしする
読みに来て下さって、ありがとうございます。
解決してない件があるとの指摘がありましたので、ここに番外編を書きました。
今回は、聖女(仮)アメリア視点です。
聖女(仮)アメリア side
お祖父様が、帰っていらっしゃった。婚約者が決まった従兄弟の王子、ラインハルト殿下に私を押し付けようとして、失敗したお祖父様。貴族牢に、しばらく入れられていらっしゃったけど、やっと帰して貰えたのね。
「ああ、アメリア。お祖父様が、ただいま戻ったよ。アメリア?アメリア?どうしたんだ?」
お祖父様が、私を抱っこしようとするのを、お兄様達が、私を抱き上げて阻止して下さった。
「私、ブルース叔父様に、仮面を着けた男爵に売られましたの。お祖父様もそれに関わってるって。
どう言うことなんですの?」
「それを阻止したかったのだ。男爵が本当に欲しがっていたのは、イースタン公爵家の小娘だからな。私は、アメリアをラインハルト殿下の妃にし、二代続けてノースター公爵家から王妃を輩出すると言う栄誉を培う。
男爵は、イースタンの小娘を隣国デザリスタの王子と、娶らせる。これでお互いに上手く行く」
「お祖父様は、アンポンタンですわっ!ベルリーナこそ、この国に必要な本物の聖女ですのよっ!
私が売られた時に、一番に助けに来てくれたのは、ベルリーナでしたわ」
私は、男爵から取り返したお気に入りの扇子で、お祖父様が、私に伸ばした手を叩いた。
ベシッ!
軽く叩いたつもりだったんですのよ。
それにしては、スゴい音がしましたわね。
お祖父様の手の甲には、真っ赤な扇子の痕が付いていました。
さすが、オリハルルの扇子。オリハルコちゃん?だったかしら。
「何を言う。聖女は、お前だろう?今、我が国で唯一、光魔法を使えるのはアメリア、お前だけだ」
貴族牢に入ってらしたから、情報がお祖父様の元まで回ってないんですのね。
「私の光魔法は、ショボいですわよ。逆剥けとか切り傷を治したり、光のカッターを出して羽ペンの先を削ったり、ろうそく程度の光を出すのが精々ですわ。ああ、そう言えば、菜っ葉を切れる様になったんでしたわね」
お祖父様は、私に顔を近づけてニヤニヤ笑った。
「なぁに、今から魔術の練習をすれば、私のひいお祖母様の聖女の様に、なれるぞ。ほら、お祖父様の所においで」
「絶対に、嫌っ!」
近づくお祖父様のお顔に、扇子をお見舞いですわ。
ベシッ!
「このクソガキがっ!アーマイン、そいつを寄越せ!」
お祖父様、お口が悪いですわね。私はアーマインお兄様にしがみつき、お兄様は私を抱いたまま、飛び下がった。
バチバチと光がはぜて、お祖父様を囲った。雷の檻。振り向くと、セルマンが居た。冷たい目で、お祖父様を睨んでいる。
「アメリアお嬢様は、クソガキでは、ございません。あ、失礼しました。アーマイン様の方でしたか?元公爵様」
「セルマン、一言多いぞ。だが、助かった」
アーマインお兄様は、一族の火魔法が使えるけれど、家の中で火魔法は危ないですものね。
「いくらなんでも、お祖父様を火ダルマにするのは、ちょっとヤバいよね。アメリアが火傷したら困るし。暴れられて、家具に飛び火してもね」
セルマンは私に両手を差しのべて、こちらに来いとニッコリ笑ったけれど、私は顎を上げてセルマンを見て、更に目線をお祖父様に向け、セルマンにお祖父様を見るように合図した。
いいから、お祖父様の方に、集中しなさい。
セルマンは手を下ろし、お祖父様を更に憎々しげに睨み付け、指を鳴らした。
雷の檻が狭まり、お祖父様が『気をつけ』の体勢に、なりましたわね。
これは、十当たり?九つ当たり?八つで、済まなさそうにないわね。
「おや、これは父上。まだ、こんな所で油を売ってたんですか?いや、油は、まだ搾っている最中かな。牢に居て、何で肥って帰ってくるのやら。
早く荷物をまとめて馬車に乗り込まないと、前女王様が辺境領で、お待ちですよ。前女王様は、曾孫のイースタン公爵令嬢を隣国に売り渡そうとした事を少しばかりお怒りでしてね。
『生意気なガキんちょ。その性根を叩き直してやろう』と伝言を承っています」
「旦那様、荷物のご用意が出来ております」
執事長のヘイダンが、トランクとコートを持って部屋に入ってきた。ヘイダンが着ているのは、軍服かしら。
「不肖、私ヘイダンと、元公爵家騎士隊長のアデムが、旦那様のお供を承ります。俗世の垢を捨てて、昔の様に皆で暴れまわりましょうぞ。我らは、火の一族。王都よりも、辺境こそが本領発揮の場」
「旦那様、家宝の剣は持って行けませんが、ほれ、愛用の槍も手入れしてあります。若い頃の様には行きませんが、何、ちょっと鍛え直せば、まだまだ戦えます。隣国デザリスタの輩が彷徨いている様ですから、ちょいと突っついてやりましょう」
雷の檻の中のお祖父様が、溜め息を深く吐いた。
「アデム、お前、そんな小さな雑嚢1つって。着替えは、せめて持って来い。道中、臭いのは敵わん。
セルマン、もう、檻を外せ。老兵は、去ろう。ブルースも、鍛え直してくる」
「父上は、老兵ではなく、最近では老害と呼ばれてましたよ。何しろ、片っ端から反対するだけで、解決策も後始末も何もかも、他に丸投げでしたから」
「わかったよ。息子よ。私もまだまだ役に立つ所を、皆に見せてやろう。何しろ、前女王から見ると、まだまだガキなんだそうだからな」
お祖父様は、上機嫌で槍とコートを手にした。
「ところで、お祖父様。私、セルマンと婚約する事にしましたわ。雷魔法の一族は重要ですし、子孫を残さねばならないのに、セルマンは私の側から動かないんですもの。
そうすれば、お祖父様も他の誰かも私に手を出せないでしょう?」
キラキラバチバチと、破顔したセルマンの周りに小さな放電が起こった。
「セルマン!『待て!』」
私の声に慌てたセルマンは、放電を止めると、私とお兄様に抱きついた。
「いや、待て、セルマン。私を巻き込むな。渡す。今すぐアメリアを渡すから」
焦ったお兄様は、セルマンに私を手渡し、私は抱きついてきたセルマンの頭に手を伸ばすと、静かに撫でて上げました。
「第二王子が、いるだろう?それに、セルマンは伯爵だ」
「父上、そう言う所が、問題なのですよ。第一王子殿下が光魔法を顕現されたので、第二王子にまで光魔法の使い手を付けると、他の者がうるさい、と。
セルマンは、先日のアメリアとイースタン公爵令嬢の奪回の際に大いに活躍したので、侯爵への陞爵が決まっています。ご心配ありません。侯爵ならば、問題ないでしょう?
第一王子殿下からは、セルマンを側近にと話を頂いています」
これ以上、文句言うなと、お父様の目が言っている様な気がしますわ。
大体、私が第二王子と結婚したとして、セルマンが、くっ付いて来たらどうしますの?というか、絶対に、くっ付いて来ますわね。
はぁ。5歳にして結婚相手が決まってしまうのは何ですが、まあ、セルマンなら良いですわよね。
「アメリア、出発前にお祖父様に抱っこは?」
「え!?アメリア、クソガキなので、わかりませんわ。15年くらい経って大人になって、赤ちゃん産んだら見せに行きますから、それまでにブルース叔父様を何とかしといて下さいましね」
「ついでに、隣国も何とかしといて下さい。父上」
「「お任せ下さい。新公爵様」」
「私は、この張り切りじじい2人の引率者か?まあ良い、さっさとブルースを引きずって来い!」
辺境領は辺境領で、じじいズが一緒にいるだけで、楽しそうです。




