第一王子は、公爵家の秘境の庭に案内される
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今回は、ラインハルト視点です。
第一王子ラインハルトside
今朝は、朝早くから起き、父上、母上、ひいお祖母様、ひいお祖父様と一緒に朝食をとった。弟の第二王子は、流石に、まだ眠っている。
ひいお祖母様と、ひいお祖父様は、長くは辺境領を離れられないので、今日の午後には帰ってしまう。
ひいお祖母様は、辺境領に帰る前にイースタン公爵家を訪ねたいとの事で、ひいお祖母様とひいお祖父様、私の3人で公爵家を訪問することになった。
一応、お忍びの訪問だが、護衛は、当然しっかり付いてくるが。
公爵家に、馬車で着くと、公爵家の皆が出迎えた。
公爵家へのお土産は、城の料理長が腕によりをかけて作った色とりどりの宝石の様な果物のタルトだ。午前のお茶の時間には重いが、ベルが一番喜んだものだ。良しとして貰おう。
「ベル、おはよう」
公爵や、ベルの兄とフレンへの挨拶も、そこそこに、私はベルに抱きつき、ベルの頬に、おはようのキスをした。ベルも、同じ様に私に抱きついて、キスを返してくれた。
今朝も、ベルが可愛い。
ベルの庭(ベルが言うには、菜園?)に行く前に、部屋を借りて、私は運動着に着替えた。身体を動かす時に着る服だ。
「ライ殿下、そういう服も似合いますわね。イケメンは、何を着ても似合うんですね」
「ベルだって、可愛いよ。いつもと違う雰囲気だけど、エプロンが、よく似合ってる」
うん。こういう服も、ベル用にお城で用意しておこう。小さなメイドみたいで、可愛い。
ベルへのお土産の花は、ひいお祖母様のアドバイスで、王城の庭にひっそり咲いていた小さな薔薇1株を植木鉢に植えたもの。
薔薇をベルに見せると、ベルの瞳から涙が溢れた。
私は、慌ててハンカチを出し、ベルの涙を拭いた。
え?ダメだったのか?ひいお祖母様が、間違えた?
どうしよう。ベルが、ベルが、泣いている。どうしたらいい?
「これ、何処にあったんですか?ライ殿下」
植木鉢を抱いたまま、涙を流して、ベルが聞いた。
「私が、前に住んでいた所から、王城に持ってきて植えたんだよ」
ひいお祖母様が、私の代わりに答えた。
「ありがとう」
私とひいお祖母様を見て、ベルが言った。ただの一言なのに、ベルが、本当に、心の底から感謝しているのが判った。
エヘヘと、照れ隠しの様に笑って、ベルは庭師のガイを呼び、相談して、庭に薔薇を植え始めた。
薔薇は、庭の土に植え替えられると、枝を伸ばして葉を繁らせ蕾を付け、小さかった花は大きく広がって、大輪の赤い薔薇になった。
私は、呆気にとられた。
「この薔薇は、勇者の心と呼ばれた薔薇なんだよ。
薔薇は、お前の中に眠る勇者の血に応じ、愛する者にその想いを伝えるために、美しく咲き誇ったんだ。
ラインハルト、これは、お前の心だよ」
そう言うことなら、誰にも敗けはしない。ベルを想う私の心が、この薔薇なのだとすれば、もっともっと咲き誇れ。
ベルの心が、私の想いでいっぱいになるように。
この想いだけは、誰にも、負けは、しない。
「昔、ちょっと貰った事があったんで、懐かしくて泣いちゃいました。ライ殿下」
「そうなのか、ベル。いきなり泣くから、ビックリしたぞ」
「ライ殿下。これは、『勇者の心』ではなくて、『ライ殿下の心』ですね」
「私がベルを好きな気持ちは、誰にも負けないからな。勇者並みだ」
次回は、ベルリーナ視点に戻ります。




