第一王子の部屋には、何かが棲んでいる
第一王子ラインハルト側のお話です。ラインハルト視点での話になります。
時間軸は、ベルリーナが王城から帰ってすぐです。
第一王子ラインハルトside
ベルリーナが、父親のイースタン公爵と、叔父のマクリスター魔術師団長に連れられて公爵邸に帰ってしまうと、私は教師の1人であるロザンナ・アガット伯爵令嬢に預けられた。
私の婚約者候補と側近候補を決めるお茶会で、『嫁、嫁、嫁、嫁』言いまくった罰らしい。まあ、確かに興奮しすぎたな。反省は、している。
「ラインハルト殿下、手が止まってますよ」
アガット先生は、王国立学園の卒業式に婚約者から、冤罪による婚約破棄を叫ばれた過去がある。しかも、私の叔父に。そんな先生に、今回の私の騒ぎの後始末を押し付けるのは、誰かからの、先生への当て付けじゃないだろうか。
『私は、二度と公の場で騒ぎを起こしません』
この文章を1,000回書かされた。まったく、労力と時間の無駄遣いだ。
だから、私は最後に違う文章をデカデカと書いて終わらせた。
『私は、ベルリーナを生涯かけて愛し、一生慈しみ、何があろうと離さないと誓います!』
「殿下…5歳にして、むちゃくちゃ愛が重いんですが。これ、ベルリーナ嬢に言っちゃ駄目ですよ。絶対、引かれますから」
先生が遠い目をして、明後日の方向を向いてしまった。
ベルリーナは、むちゃくちゃ凄くて、むちゃくちゃ可愛いくて、おまけにいい匂いがするんだ。一緒にいると楽しくて、ワクワクして、一緒なら何でも出来る気がする。だから、誰にもあげない。離さない。
晩餐や入浴も終わって就寝時間になった。部屋には、侍女のヴィヴィアンとアンナ、アンナの弟の侍従見習いで乳兄弟のネトラスしか残っていない。
「この、てるてるぼうず?でしたか?この辺に付けておけばよろしいですか?」
ヴィヴィアンが部屋を片付けている間に、アンナがベッドの天蓋の柱に、てるてるぼうずのベラを何とか吊るしてくれた。
手を伸ばしてみると、うん、寝ていても何とか手が届きそうだ。ベルリーナの紫のリボンが手に触れた。ちょっと匂いを嗅いでみる。うん、まだちょっとベルリーナの匂いがするな。
「…殿下、お行儀悪いですよ。くんくんしちゃ、いけません」
「ライ殿下、僕も嗅いでも良いですか?」
「駄目だ。ネトラスは、自分の嫁を探せ。これは、私の嫁のリボンとハンカチだ。因みに、アンナとネトラスも悪くない匂いだぞ。ベルリーナと一緒にベラを作ってから、匂いがよくわかるようになったのだ」
ネトラスが自分の服をくんくん嗅いでから頭を傾げた。
「僕の匂いって、よくわかんないな?それに、嫁って、よくわかんないです。女の子は、うるさいです。すぐに泣くし。ライ殿下と、一緒にいた方が楽しいです」
「他の女の子は、そんな感じだな。まあ、ベルリーナも頭の天辺に拳骨を落としたら、ちょっと泣いてたが」
「はあ!?女の子の頭に拳骨って、何やってんですか!?殿下、ちょっとそこに姿勢を正してお座り下さい!アンナは、殿下をそんなお莫迦な男の子に育てたつもりはありませんよ!?大体、そんなことしてたら、ベルリーナ様に絶対嫌われますからね!」
就寝時間まで、アンナの説教が長々と続いた。こういうのを藪蛇って言うのか?大体、私を育てたのはアンナじゃなくて、アンナの母のアニスだろ?
でも、ベルリーナに嫌われたら私の方が泣いてしまいそうなので、もう、絶対しないと誓うぞ!
読んでくださってありがとうございます。
ああ…ラインハルトの話、書き終わりませんでした…。
ベルリーナ視点の方が、コメディ度が高くて書きやすいな~。ラインハルトじゃないけど、早くベルリーナに会いたいです。