聖女(仮)は、犬達に囲まれている
読みに来てくださって、ありがとうございます。
今日は昼間に書き上がりました。
今回は、聖女(仮)のアメリア公爵令嬢の視点です。
聖女(仮)アメリア side
後ろに正座しているセルマン、目の前には、ヒクヒクしている人だか魔獣だかわからない者と、さっきまでそれを咥えていたケルル・ベロロ・スーが、いた。
ケルル・ベロロ・スーは、時々、私に自分の獲物を半殺しにして持ってくる。
まあ、ケルベロスと言っても、犬ですし、仕方ないですわね。私に誉めて欲しいんだと思うんですのよ。
取り敢えず、私はお腹の前で腕を組んで、威厳を保つ。飼い主ですから、教えるべき時は、威厳を持って教えねば。
ケルル達は、鼻先でそれを私の方へと転がして、私に食べる様に促す。
「これは、食べちゃダメ!お腹を壊してしまいますわ。あっちに、ポイしていらっしゃい」
不本意そうに、ケルル達は私を見ると、スゴスゴと、左端のスーが獲物を咥えて首を振り、自分達の後ろで作業をしていた騎士の足元に、放り投げた。
ちょっと横着したけれど、まあ、いいでしょう。後は、あの騎士が始末してくれるわね。
「セルマン、貴方は私の侍従見習いなのだから、ベルリーナの命令を聞かなくても良いのよ。ほら、立って」
私の後ろから、ドカドカと地響きがして、セルマンを立たせようとしている私を、誰かがタックルして掬い上げた。
私に頬擦りするひげが、痛い!痛い!痛い!
「離しなさい!デンケル!貴方の涙と鼻水を、何とかしてちょうだい」
髭面のデンケルは、我が公爵家の近衛隊を率いている。
「このデンケル、心配しましたぞ!ご無事でなにより。
雷小僧と三つ頭の駄犬が、拐われたお嬢様を追いかけたと聞いて、直ぐにも他の犬を追いかけるようにと放ったのですが。三つ頭の臭いを嗅いだ途端、他の犬共は尻尾を丸め縮こまってしまいましてな。
不肖、私めが、お嬢様の気配を追って、我が騎士団を率いて参りました」
犬、要らないんじゃないのかしら。
「まあ、私が、お嬢様の一番の犬ですからな」
何を言ってるのかしら、まったく。貴方は、うちの騎士団長でしょう!?これ以上、犬は、いりませんですわよ。
お父様とうちの騎士団の半数が残り、私は公爵家の馬車に乗せられた。迎えに来てくれた侍女が私を抱いて馬車に乗ろうとするが、セルマンが許さず、彼が私を抱いて馬車に乗った。馬車に乗ろうとした時、何故か、ベルリーナが私に手渡したクッションを魔道具製作部長が持ってきてくれた。もう、要らないのに。
ケルル達は、馬車に伴走して帰るようですわね。
私は、セルマンに抱っこされたまま、眠りに落ち、
「大好きですよ、アメリアお嬢様。無事で良かった」
「私も、大好きよ。セルマン」
セルマンが、私の髪を撫でて、満足そうに唸った。
要らない事を、私が口走った気がしますけれど、まあ、良いですわね。
馬車が公爵家に着いた時には、辺りはすっかり明るくなり、お母様やお兄様方を始め公爵家の皆が、私を出迎えてくれました。
ケルル達は、私の命令で、しぶしぶ、小屋に帰りました。
私は、セルマンから、お母様に渡され、私が皆を見回すと……あら、居らっしゃいましたわね。どれだけ、お顔がでっかい……えっと?顔の皮?が、分厚い?
まあ、どうでも良いですわね。
「セルマン、持って帰ってきたクッションを取って頂戴」
セルマンに取って貰ったクッションを、私は叔父様に投げ
「爆ぜろ!」
クッションは、叔父様の顔面で爆発した。私、枕投げには自信がありますのよ?
「叔父様!よくも、私を叔父様の借金のカタに売り払ってくれたわね!」
お兄様達が、吹っ飛んだ叔父様に容赦なく襲いかかり、起き上がりかけた叔父様を再び床に引き倒した。従僕達が、叔父様を押さえつけるのを手伝う。お母様は私を抱いたまま、叔父様の元へと歩くと、叔父様の股の間を踏みにじった。
「ちょっと、ブルース様。どういう事か、このお義姉様に、ようく、聞かせて貰いましょうか?」
お母様は、私を侍女に預け、痛さの余りのたうち回る叔父様の襟首を掴んで、引きずって行った。お兄様達は、私の両頬に一人ずつキスしてから、お母様の後を追った。
やれやれ。これで、やっとゆっくり休めますわね。
私の部屋の中まで付いて来ようとするセルマンを、追い返すのに手間取ったけれど、後は、言うこともなしですわ。
「はっ!クッション爆弾の使い道がなかったわ。せっかく作ったのに」
「大丈夫だよ、ベルリーナちゃん。僕がアメリアちゃんに渡しといたからね。きっと、アメリアちゃんが無駄にせずに使ってくれるさ」
クッション爆弾を使う為だけに考えた、アメリア視点のお話でした。
_(^^;)ゞ クッション爆弾の事を思い出して、今朝は飛び起きました。どうしようかと思いましたが、何とかなるもんですね。ヾ(≧∀≦*)ノ〃




