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元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る  作者: Hatsuenya


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第一王子は、闇夜に何かに遭遇する

 読みに来てくださって、ありがとうございます。


 恋愛要素、何処に行ったんでしょう?メインストーリーは、ちゃんと進んでいます。


 今回は、ラインハルト視点です。



     第一王子ラインハルトside



 小さくなったイカロスと共に、私達はベルが捕らえられている屋敷の塀の側の林の木陰に潜んだ。

 先程、先駆けてベルに贈った紙ひこうきは、屋敷の地面めがけて潜って行った。

 ベルは、地下にいるという事だな。

 捕らえられているベルに贈れるものは、愛と手紙だけだ。

 苛立たしい。

 

 それにしても、どうして、ここは、こんなに嫌な臭いがするのだろう。この屋敷に近づくにつれ、益々腐った血の臭いが強くなってくる。


「ああ、殿下も感じますか?この気持ちの悪い血の腐った様な臭い。臭気だけじゃない、俺らに纏わりつく黒い靄の様なもの。月明かりが有るとはいえ、夜の闇でも見える黒い靄って、何なんだか」


 魔術師団長が、辺りの匂いを嗅ぎながら言った。


「これは、恐らく呪いじゃな。知能や魔力が高い者達が集団で虐殺されると、怨嗟が集まってこの様な靄になる事がある。ふむ。あの屋敷で何が行われているのかは知らぬが、ろくな事では無いな。さっさとベルリーナを引っ張り出しに行くぞ」


 イカロスにかかると、誘拐なんて言葉は、何処かに飛んでいきそうだ。イカロスとベルの間にある障害物は、全て『邪魔もの』でしかない。

 そう言う感覚は、私にもよく判る。今現在、私とベルの間にあるこの距離が、もどかしい。私はベルのすぐ傍に居るべきだし、ベルもまた私の傍に居るべきだ。

 ただ1つ判らない事がある。どうして、ベルは誘拐されたんだろう?団長が言うには、団長が問い合わせるまで、公爵家では、ベルが誘拐された事に誰も気付いていなかったらしい。

 あの公爵が?あの『冷徹魔王』とも呼ばれ、ベルを溺愛する公爵や、優秀さで有名な公爵家の御庭番や騎士達が、侵入者の騒動があったとはいえ、イカロス以外、誰1人気付いていなかった?

 ベルが、そう簡単に誘拐されるとは思えない。誰かに誘き出された?何をエサにして?目の前の屋敷に何があるんだろうか。


「ああ、これがいいな」


「レザリス、何だ?この香水瓶は」


 魔道具製作部長が、大きな肩掛け鞄の中から香水瓶を取り出した。しゅっと吹き掛けるタイプのやつだ。


「闇に紛れて塀まで行こう。これがあれば大丈夫だからね」


「ああ、その前に。鼻の利く警備兵が飛んできたみたいだな」


 団長が言う通りだった。あの嫌な臭いが、物凄い速さで、どんどん近づいてきた。

 1つ、2つ、3つ、4つ?どんどん集まってくる。


 あれは、人間?何かがおかしい。手が異様に長かったり、四つん這いになって地面を走る者もいる。何れも何処かが歪で、人間の気配が無い。人間なのに、まるで、人に似た形をした違う生き物の様だ。

 獣人達やエルフ、ドワーフ等とも違う。

 彼らの目をよく見ると、それがよく判った。知性が無いのだ。まるで、操り人形の様に。


「レザリス、ちゃんと闘えよ。イカロス、殿下を頼む」


 団長が剣を抜いて、奴らの真っ只中に跳んだ。彼は、魔術師団の中でも、魔法剣士と呼ばれる数少ない猛者だ。風魔法を剣に纏わせ闘うのを得意とすると聞く。


「今回は、新しく開発した超便利な鎖を使ってみようかな~。長さは、自由自在。伸縮性抜群で、こんな感じに」


 部長の腰に巻いてあった鎖が、飛びかかってきた敵に向かって四方八方に伸びて飛んで行き、ムチ打ち、巻き付いて首を絞める。彼の周りに水の小さな玉が無数に現れ、四方の敵に飛び散り、敵の身体に穴を開ける。


「知ってるかい?水滴は岩をも穿つんだよ?」


 私に出来ることは、自分の身を守ること。皆の邪魔をしない事。


「イカロス、行って。私にはルイが、いる」


 ルイ。私とベルが一緒に作った『てるてるぼうず』。ルイは、私の周りをブンブン飛び回り、バリアを張りつつ、敵を魔力で威嚇した。

 イカロスは、向かってくる敵を片っ端から凍らせた。


「もどかしい!こんな者ども、元の大きさに戻れば尻尾の一振り、息の一吹きで全て凍らせてくれるものを!」


「側の屋敷まで壊してしまうから、却下だよ、イカロス」


「わかっておるわ!!」


 後、何体いるんだろう。自分に闘える力が無いのが、もどかしい。


 上から光が切り裂き、凄い音と共に敵が何体か吹っ飛んだ。雷だ。


 続いて、大きな黒い影が、私の横を飛ぶように走り、敵に食い付いた。3つの頭を持つ黒い巨大な犬『ケルベロス』。


「お前らか!?アメリアお嬢様を、何処へやった?」


 そう言いながら、アメリアの侍従見習いセルマンが、また1つ雷を落とした。





「過剰戦力じゃないのか?」


「殿下、勝てばいいんですよ~。僕は、怪我するの嫌ですから。何処かの脳筋魔術師と違って」



 はい、脳筋魔術師は、嬉々として最初に敵に飛び込んで行きましたね~


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