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野菜軍団、暗躍する

 読みに来てくださって、ありがとうございます。


 マンドラゴラ達も頑張ってます。



 ジェンナが言うには、もう1人、ジェンナ兄妹と同じ様に契約に縛られた、人間に近い外見の者が、いるらしい。

 ジェンナをはじめ、ハジェス達はお互い喋る事は無い。男爵に命令された事を唯々諾々とこなしていくだけ。

 その子は、ジェンナと同じくらいの歳で、ジェンナとハジェスと共に体術や暗殺術を学ぶ時以外は、部屋に閉じ込められているらしい。


「私達兄妹は、昼となく夜となく外にお使いに出されるので、ずっと屋敷に居るわけではありませんので、よく判らないんです。ただ、名前だけは、判っています。フレンと呼ばれています」


 お使いの内容は、聞かない方が、いいよね。暗殺術なんて言葉を聞いた日には、深く聞かない方が良い気がする。うん。

 私とアメリアと言う良い土産が揃ったので、屋敷は明朝引き払われる予定で、今は引っ越し準備の真っ最中。

 屋敷の中には、魔獣と人を掛け合わせた研究結果の者達の他に、研究者達、戦闘用の使用人達が多数いるらしい。


 混乱に乗じて何かをしかけるなら、今しかない。

 フレン用の契約の上書き用のアメをジェンナに渡すと、パンが入っていた籠の中に偵察部隊の野菜達を忍ばせた。

 奴らは、ジェンナが戻る道すがら、1つずつ色んな部屋に潜り込む算段となった。


 ライ殿下から再度、連絡が来るまで時間を稼ごう。


 念のために、アメリアのハンカチとリボンでアメリア用のてるてる坊主も作った。てるてる坊主の顔は、アメリアが例の意外に便利な光魔法で、焦げ目を作って描いた。


「私の魔法って、絵も描けるのね」


 ちょっと、アメリアが遠い目になった。ショボいかもしれないが、重宝な魔法だと思う。誇っても、いいんじゃないかな?


「ショボいって、言わないで頂戴。何かちょっと複雑なのよ」


 てるてる坊主を作れば、アメリアを守る事が出来る。アメリアは、ライ殿下程の魔力は無いけれど、これが、彼女を守ってくれる筈だ。


 ソファーには、クッションが置いてあった。アメリアに私のリボンを4つに切ってもらい、四隅を各々括って手足にし、中央にてるてる坊主と同じく顔を描いてもらった。


「我が手足となり、命令と共に、爆ぜよ」


 クッション爆弾の出来上がりである。出来上がりと共に、クッション爆弾は、ソファーの上で寛いでいた。何だか、偉そうで腹立たしい。クッションだし、ソファーの上が定位置なのは正しいのだけれど、何故か、腹立たしい。


 もう、出来ることは、無いだろうか?


 今夜は、契約の上書きアメを3つも作ったし、野菜達を育てた。てるてる坊主とクッション爆弾も作った。いくら私の魔力が高くても、そろそろ魔力の温存をした方が良い。


 待て


 待て


 待て


 ……来た!


 それは、音も無く、天井より空中に現れた。


 ライ殿下の紙ひこうき


「開け!」


 開いた手紙には、あいあい傘にライ殿下の名前と私の名前。

 ただ、それだけなのに、心が熱くなる。


「こんな時に、惚気てるんじゃありませんですわよ!」


 アメリアが、地団駄踏んでキイキイ言った。

 いいんだもの。いいんだもの。これは、2人の愛の記し。心が熱くなって、パワーが湧いてくる。

 紙ひこうきから、殿下の匂いがする。殿下の魔力が私に伝わって来た。もうすぐ来る。すぐ側に、殿下が来ている気配がする。

 私は、紙ひこうきを二艘船に折り直した。爺やが色々な折り方を教えてくれたお蔭だわね。


 唐突に、ドアが開いた。

 ハジェスだ。


「男爵様がお呼びだ。プランターを持って移動するぞ」


 後ろ手にドアを閉め、私とアメリアの方に歩いてきたハジェスは、ポケットからゴロゴロとベビーキャロットマンドラゴラやラディッシュマンドラゴラを出した。

 偵察部隊が、帰ってきたのだ。


「フレンにもアメを食べさせてきた。俺は、妹さえ助かれば良かったんだけどな。仕方ない。面倒だったんで、奴には監禁場所からは自力で出てくるように指示した。言っとくけど、あいつは、男爵の支配から逃れれば、自分で逃げ出せるからな。放っておくぞ」


 苛立たしげにハジェスは言った。


 マンドラゴラ達に偵察してきた様子を報告させ、その中から選んだベビーキャロットマンドラゴラを1つ、船に乗せ、殿下の元へ行くように命令した。ベビーキャロットマンドラゴラには、ライ殿下への伝言を託した。この手紙なら、殿下の元へ届く。宛先は、書かずとも、2人の間を行き来する。

 ふふふ、愛の呪文だわね。


 空を飛べ、二艘船よ。誰にも見とがめられず、ひっそりと、それでいて光のごとく素早く。この子を乗せて、ライ殿下の元へ。

 私は、そっと、船を空中に押し出した。

 船は、天井を突き抜け、姿を消した。


 マンドラゴラ達をハジェスの身体のあちこちに隠してもらい、私達は、プランターを持つサジェスの後に、クッションを持って付いていった。

 マンドラゴラ達は、1つ2つ3つと、いくつかのグループに別れて、行く道々のドアに消えていった。

 消えていった?ドアをすり抜けれるってこと?かなりとんでもないマンドラゴラが育ってたのね。






「なあ、ドアじゃなくても、壁でもすり抜けれるんじゃないのか?あいつら」


「私も、そう思ったのだけれど。ドアと言う概念に関係するのかも知れないわね。

 ドアをすり抜ける技能。と言う事かしら?」


 何れにせよ、とんでもない野菜である。


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短編作品『才色兼備、清廉潔白、品行方正、天衣無縫、百花繚乱、天下無敵の御令嬢』を投稿しました。

 もし、よろしければ、そちらも読んでくださったら嬉しいです。

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