表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る  作者: Hatsuenya


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/126

元魔王な令嬢は、王家に囲い込まれる

 読みに来てくださって、ありがとうございます。


 家族に、どうして龍にイカロスと名付けたのかと聞かれました。今回は、その答えです。






 龍が王庭に降り立ったと言うことで、次々と各部署から代表者が集まってきた。


「時にベル。イカロスって、どういう意味なんだ?」


「ライ殿下。まあ、本当は龍に使っちゃダメな気がする名前なんですが。

 他国の昔話に翼を作って空を飛んだ人の話があるんです。ただ、蝋と羽で作ったので翼が太陽の熱で溶けちゃって落っこちちゃったと言う話なんですの」


「確かに、龍に付けるには、難ありな名前だな。ああ、ベル、ひょっとして龍に怒っているのか?」


「だって、いきなり私達の目の前に降り立って『名前を付けろ』ですよ?普通、カチンと来ません?知り合いならともかく、見ず知らずの龍ですし。イカロスで充分ですとも。

 ね、イカロス?」


 イカロスは、がはがは笑った。


「イカロス、良い名前ではないか。その男の冒険心と探求心、挑戦の心を受け継ごう」




「ああ、龍の着地と、更に変身を見逃すなんて。何て失態を」


 魔道具製作部長が、ふらつきながら龍のイカロスに近づいた。

 ヤバい。あれは、何をするのかわからないわね。


「イカロス、危ないから一歩下がって。その人間は、ヤバい奴よ」


 私がそう言うと、イカロスはビクッとして、倒れかかってくる部長を避けた。

 部長は「ちっ」と舌打ちして、踏み留まった。


「あわよくば鱗の1つでも持って帰ろうとしたんでしょうけど、そうは行かないわよ、部長。大体、あなたが、すぐにここに戻って来なかったのが悪いんじゃなくて?何をしてたのかしら」


 私がそう言うと、部長はニヤリと笑って指を鳴らした。合図と共に、副部長が小さな男の子を連れて……ああ、あれを作ってたのね。


「ちゃんと完成したよ、案山子君。まあ、火に弱いのは、難点だけど。可愛いでしょ?」


「耐火魔法と、ついでに耐水魔法をかけときなさいよ。部長なら簡単でしょ?」


「いくら僕でも、今日の所は、作るだけで魔力がスカスカだよ。どんだけの魔力を使ったと思ってるの。全く、誰もが君みたいな底無しの魔力を持っている訳じゃないんだからね」


「いくら私でも、案山子作って、歌に魔力のせた上に、龍と契約したんだから、魔力もほぼ空っぽ……あ、私、召喚魔法使っちゃったわけ?」


 歌に魔力を乗せて空高く地の果てまで届けって、呼び寄せてますよね。はい。私が呼び寄せたのか、イカロスを。


「良い良い。心地好い魔法であったぞ。お前の心が我に響き、我の心が呼び覚まされ、美しくも哀しい気持ちが、我の心にあった寂しさに重なりあったのだ。一度成らず、二度までも」


 ああ、そう言えば、今朝、私ってばうちの庭でも、あの歌を歌いましたよね。あれは、勇者との約束の木ですから。つい、心が高ぶってしまったんでした。


「ほうほう、これがベルリーナが呼び寄せた龍かい?どれどれ」


 魔法薬剤師局長の私のお祖父様までもが、イカロスに触れようとした。お祖父様も、目を光らせて、物欲しそうにしている。

 はっ!お祖父様も、ヤバい人だったわ。


「イカロス、ここにいてはダメよ。あなたの身が危ないわ」


「ちっ、じいさん、我の鱗を盗ろうとするんじゃない。近寄るな。くそ、ここは狭い上に人が多すぎて、身動きが取れぬ。仕方がない」


 イカロスは、光を放ち、そして、小さくなった。

 可愛い。可愛い。赤ちゃん龍って、こんな感じかしら。ポテっとした体に、小さな翼。私の髪とお揃いの銀色のボディ、瞳は紫。大人の両手の上に乗れるサイズ感が愛らしい。


「ふふふん。これなら、ここいら辺りを飛んで逃げ回っても問題あるまい。ほれ、我は可愛いだろう?何なら、ベルリーナの肩にも止まれるぞ」


 そう言いながら、イカロスは私の肩に止まっ……。

 べしっ。


「ふふふん。そのサイズなら、排除しやすいな。私のベルの肩に乗ろうとするとは、笑止千万」


 イカロスは、私の肩に乗る前に、ライ殿下に、はたき落とされた。

 殿下は、私の肩にフーフーと息を吹きかけながら、手で私の肩の埃を払うようにした。


「独占欲の強い奴は、嫌われるぞ」


「ふふん。何とでも言え。ベルは、私の嫁だからな」


「嫉妬深い奴め。ベルリーナよ、こんな奴の嫁など止めて、我と一緒に何処へなりと行こうぞ。何処までも続く花が咲き誇る草原、月夜の海辺、星空の散歩、美しく輝く樹氷の」


「樹氷は、止めて。絶対、ムリ。父上のせいで、時々、うちの家の庭が樹氷だらけになって、後始末が大変なんだから」


 皆が、いっせいに遠い方を見つめる。

 ああ、皆も覚えがあるのね。父上、王城で何やってるんですか。


 連れて行かせまいとしたのか、ライ殿下が私を自分の後ろに隠した。


「龍よ、イカロス殿。初めてお目にかかる。私はこの国の国王、レオナルドと申す。ベルリーナ嬢は、我が王国の王太子である我が息子の婚約者なのだ。その上、彼女は我が国の宝であり、我々の宝でもある。申し訳ないが、ベルリーナ嬢を貴殿と一緒に遠方に行かせるわけにはいかぬ。ここにいる彼女の父母や祖父も心配するので、同行させるのは、どうかご勘弁願いたい」


 国王陛下や王妃様まで、いらっしゃいました。まあ、龍ですしね。見学しますよね。


「我は、ベルリーナの契約者ぞ」


「ベルリーナ嬢は、私の従兄弟の娘でもある。その上、ここにいる殆どの者が、彼女の恩恵を少なからず受けておる。貴殿が、無理にでも彼女を連れ去ろうとしたり、何処かに留め置いたりした場合、我ら全員が、一団となって、貴殿を阻止する事を、心に留めよ」


 国王陛下が、そう言った。周りの皆も、イカロスをねめ付けた。


「ベルは、誰もが私を信じてくれなかった時、ベルだけが私の話をちゃんと、聞いてくれた。そして、手助けをしてくれた。

 私は、ベルの手を決して離しはしない」


 ライ殿下が言った。私の心はライ殿下と共にある。2人でいれば、怖くない。2人でいれば、希望が生まれる。2人で同じ時を過ごし、一緒に生きていきたい。


「私達は、ベルリーナの父と母だ。その全てをかけてベルリーナを愛している」


「俺は、イースタン嬢の野菜に、命を救われました」


「私の子どもは、イースタン嬢の野菜のお陰で、魔力暴走を免れました」


「私の父は、イースタン嬢の野菜で病から回復しました」


 私は、俺は、僕は……皆が私の知らない所で、野菜達によって、命を繋ぎ止めていた。野菜達、頑張ったのね。


「イースタン嬢の開発した紙ひこうきのお陰で、各部署で滞っていた書類が手早く集まるようになり、残業地獄から逃れられる様になりました」


 それは、書類を各部署で溜めてた奴らが悪いのでは、ないかしら。まあ、お役に立てたんなら、良しとしましょう。


「私は、酒を飲み過ぎてぶっ倒れた所を、イースタン嬢の野菜のジュースによって、天国から戻された」


「お前は、酒を控えろ!!」


 いや、もう、本当に、酒は程々にね。誰だか知らないけど。


 イカロスは、がはがは笑って、ライ殿下の頭の上に止まった。


「わかった、わかった。ベルリーナは、連れて行かぬよ。だが、そうさな。時折、王太子、お前とベルリーナを乗せて、一緒に遊びに行こう。何、ちゃんと、すぐに戻ってくるから。皆、心配するな」


 仕方なさ気に頭にイカロスを乗せたままにして、ライ殿下は私を抱き締めた。


「ベル、こういうのを囲い込むって言うんだそうだぞ」


「ライ殿下、そうすると、私は、王城の人達皆に囲い込まれたっていう事なのかしらね。スゴいわね」


 勇者、勇者。今世の私は、スゴいわね。皆に囲い込まれてるんですって。前世の魔王だった時よりも、無敵かも知れないわ。






「イカロス、私の頭の上で寝るんじゃない」


「ラインハルト、お前が、ベルリーナの上に我を止まらせてくれないのではないか。一々うるさい奴だな」


「ライ殿下、心配しなくても、イカロスは私の家に連れて帰りますから」


「何だと!何て羨ましい。私だって、ベルリーナと一緒に暮らしたいんだぞ」




 ラインハルトは、ベルリーナと契約しているイカロスが羨ましいです。婚約なんて紙切れ一枚の話じゃないか。と、思ってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ