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王子は、囲い込むことにした

 読んで下さっている方、ありがとうございます。頑張って、書き続けます。

 こほんと咳払いが聞こえた。


「殿下、そろそろ会場に戻られませんと」


 近衛兵が、殿下に言った。ダークグレイの髪に少し垂れ気味の濃い青の目をした近衛兵。こういうのが、甘いマスクのイケメンと言うやつか。

 彼を観察していると、殿下に引っ張られて抱き込まれた。


「ベルリーナ、メナードを見るな。見ると、孕まされるぞ」


「早くも、嫉妬。嫉妬ですか、殿下?いや、いくら俺でも子供は孕ませれませんって」


「黙ってろ…メナード。殿下、また変なこと覚えてきて。誰だよ、殿下に要らないこと教えるやつ」


 近衛兵メナードが顔を押さえて天を仰ぎ、もう1人の近衛兵が、彼の肩を叩いて溜め息を吐いた。赤毛に黒い瞳の目元涼しくがっしり系。うーん、こういうのを美丈夫って言うのか?


「メイド達が、言っていたのを聞いた。ベルリーナは、メナードが好みか?それとも、こっちのデカいエディの方か?どちらも、女にもてるらしいが」


「私のご主人様は、殿下ですので。ラインハルト殿下が好みです」


 元魔王は、ヒエラルキーが上のものには、逆らわない。殿下、可愛いしね。可愛いは、正義。


「主人、主人って…主人ってことは。なあ、メナード、エディ。やっぱり嫁、嫁でいいんだよな?」


「はいはい、殿下。どうどう、落ち着いて、落ち着いて。ちょっと違う気がしますが…とりあえず、イースタン嬢を離して、お茶会の会場までエスコートですよ」


 私から殿下が離れた隙に、殿下に断って殿下の髪を手櫛で整えた。寝転んでたから、ちょっと乱れてたからね。服に付いてた土埃も、パタパタパタ。殿下も私のドレスに付いてた埃をパタパタ払う。


「キャッキャとじゃれてないで、会場にお戻り下さい。殿下」


「メナード、そこは、イチャイチャじゃないのか。キャッキャだと猿みたいだぞ」


「殿下、5歳なんですから、キャッキャで充分ですよ」


 5歳児は、お猿と同レベルらしい。やっぱり不敬な奴だぞ、メナード。



 ラインハルト殿下が、てるてるぼうずのベラを腰に吊し、2人の近衛兵を従えて私をエスコートして、お茶会会場に戻ると、騒がしかった会場がシンと静まった。彼が貴賓席の王妃様を真っ直ぐ見ると、人の波が避け、道を開ける。

 そのまま王妃の前までやって来た殿下は、王妃に礼をする。勿論、私もカーテシー。元魔王でも令嬢でも、儀礼は大事。


「母上、私の嫁のベルリーナ・イースタン公爵令嬢を紹介します」


「よ、嫁?…嫁?嫁なの?ラインハルト」


「はい、嫁です」


 目を大きく見開いて、王妃様が驚いていた。親子だな。驚き方が、そっくり。いや、顔もよく似られているが。綺麗な金色の髪もそっくり同じ色。

 いや、それにしても、嫁、嫁って。主人と家来じゃないのか?私の方が殿下よりヒエラルキーの下なんだから、家来だろう。嫁>主人>家来なのだから、間違いなのでは?


「イースタン嬢、あなた、ラインハルトのお嫁さんなの?」


「いえ、違うんじゃないかと。どちらかと言うと、家来?」


「何を言うんだベルリーナ。嫁、嫁だからな。母上、ベルリーナは私の嫁です」


 王妃様は、遠い目をして扇を開いて口許を隠す。そして、溜め息を吐きつつ、側の侍女に目配せした。


「騒がせて、申し訳ないわね。皆さんは、このままお茶を楽しんで下さいな。私達は、ちょっと失礼するわ」



 侍女達と近衛兵に囲まれて追いたてられ、私と殿下は会場を後にした。殿下は、嫁、嫁、言ってないで、ちょっと落ち着いて反省した方がいいと思う。



 すぐに、城内で仕事をしていた父上が呼び出され、その日の内に私と殿下の婚約が決まった。殿下は、ソファーで私を抱きしめながら、ドヤ顔でふんぞり返って近衛兵達を見て言った。


「こういうのを、囲い込むって言うんだろう?」


「殿下の場合は、囲い込むと言うより、しっかり抱き込んで離さないって言うんですよ」


 やっぱり、メナードは不敬だと思う。実際、確かに殿下は私を抱き込んで離さないが。はぁぁ。


「そろそろ、イースタン嬢をお離し下さいね、殿下。イースタン嬢は、お家に帰る時間ですので」


 小柄だが綺麗な侍女がお茶を注ぎながら、殿下に言った。お城の侍女は、きれい処揃いだな。近衛兵と侍女は、能力だけだなく顔でも選ぶんだろうか。魔王城では、綺麗な侍女は…まあ、いたな。性格や性癖に難ありだが。後、ベトベトした奴とか。


「いや、嫁なんだから、城で生活しても良いのでは?むしろ、同じ部屋で同じベッドで寝るんだろう?嫁なんだから」


「イースタン嬢は、殿下の婚約者で5歳なので、お家に帰られます。お持ち帰りは、禁止です。イースタン公爵様が、怒って乗り込んでいらっしゃいますよ」


「怒鳴り込むんじゃないのか、アンナ」


「殿下、公爵様は、非情に静かに怒られます。非常にでは、ありません。非情に、です。お分かりですか?」


「怖いな、それは」


 父上は、静かに怒るのだ。あの、整った美しい顔で、氷の様な視線で人を射る様に睨み付ける。時々、マジで射られている奴もいるが。


「はい、父上は、怖いです。殿下。本当に凍り漬けにされます。部屋も、凍り漬けにされます。でも、母上は、もっと怖いです」


「ベルリーナ、お前の母上はもっと怖いのか。それは…何処の家も同じだな…」


 やはり、どこでも、嫁>夫と言う図式は存在するらしい。そして、世の中は、ちょっと平和なのかもしれない。

 それはそうと、いい加減に私をお家に帰してください殿下。メソメソ。また、明日、来ますからねー。

 王子は、そろそろ更正させないと、おバカになりそうです。まあ、5歳児ですからね~。

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