令嬢達のタイマン勝負、3回戦目(王妃公認?)
読みに来てくださって、ありがとうございます。
昨日の失敗を心に止めて、今日は、小まめに更新です。
何もせずにタイマン2連勝してしまった私は、アメリア嬢に、キィーッと言われながらも3回戦目をサシで勝負する事になりました。
「せめて、令嬢らしい事で、勝負してちょうだいね」
と言って、王妃様は何かの会議に行ってしまわれました。
その代わりにと言っては何ですが、非常に、何ですが、魔道具製作部長が助手のジョッシュと共に残っています。また部署から追い出されたんだろうか、部長。助手は、そのお守りですね。主に、部長の髪の毛の。はい。
「令嬢らしい事、令嬢らしい勝負。うーん、そうですわね」
アメリア嬢、後、何勝負あるんですかね。わくわく。
「ベルは、絶対、楽しんでるよな。まあ、可愛いからいいけど」
可愛いかどうかはわかりませんが、わくわくが止まりません。
「よし、これだわ!ちょっと貴女、同じ大きさで同じ重さの本を2冊、用意していただける?」
アメリア嬢は、王妃様が残してくれた侍女に、そう頼んだ。
「第3勝負は、令嬢の基本、『頭に本を乗せて落とさずにどれだけ歩けるか』ですわ!」
王城の中に移動した私達は、廊下に突っ立っていた。アメリア嬢がまず、自分の頭の上に本を乗せて、私に見本を見せてくれた。
ほうほう、んー、こんな感じ?
「大丈夫か?ベル」
んー、まあ、初めてですが、何とかなりそうかな?
「ライ殿下、庭仕事で鍛えた私の足腰をご覧くださいね」
「うんうん、ベルリーナ。今度、一緒に手を繋いでかけっこしような」
「庭仕事で足腰を鍛えるって、やっぱり貴女、令嬢にあるまじき行いでしてよ!ラインハルト殿下も、何とか言ってやって下さいまし」
「世の中、その業績が物を言うのだ。ベルが庭仕事を止めれば、城中の者が嘆くぞ、アメリア」
部長と助手も、そうだそうだと、ウンウン頷いていた。
「魔法省の人間は、特にラディッシュマンドラゴラのお世話になってますよ~」
「近衛兵も、ベルリーナ嬢のベビーキャロットマンドラゴラには、お世話になりっぱなしです」
続いて、警備の為に付いている近衛兵達も言ってくれた。
マンドラゴラ達、城内に蔓延り過ぎじゃなくて?
「何だか、野菜の名前の後に変な言葉を聞いた気がするけど、まあ、良いわ。始めるわよ。
ラインハルト殿下、開始の合図をお願いしますわ」
殿下の合図と共に、私達は本を頭に乗せたまま、廊下を歩き出した。
おっとっと。あ、ちょっと早歩きした方がバランスが良いかも。
「私も、負けませんわよ」
サカサカと、私と同じ様にアメリア嬢が足を速めた。
私も、足の速さには、自信がありますとも。
ふふふん。これでどうです?付いて来れます?
「私も、足の速さでは、負けていなくてよ!」
いえいえ、この位は序の口で、もっと速く走れましてよ!
「負けませんわよ、私の一瞬の足?を、とくとお見せしましてよ!」
うぉーっ!身体強~~か……あっ。
行く手に、敵が現れた。
「廊下を、走っては、なりません」
廊下の先には、侍女長が仁王立ちしていた。これって、ラスボス?……逃げて、いいですか?あ、選択肢は、無いですね。
私とアメリア嬢は、侍女長の『どうして、廊下を走っては、いけないのか』と『淑女の心得』の二本立ての説教を受ける羽目になった。
この勝負、侍女長の勝ち。ですわよね?
「アメリア、『一瞬の足』ではなく、『俊足』だな」
「そうです、ライ殿下。『一瞬の足』の持ち主は、僕ですから」
「令嬢に張り合うな、ネトラス。後が怖いからな」
本当は、ネトラスだって競いたいらしい。ラインハルト争奪戦だしね。
それにしても、本を頭に乗せて全力疾走出来る5歳児。もう、これだけで特技と言えるのでは?